KKS、動く 4
エレベーターが上昇してくる…!
誰かが、
こちらに…やって来る!!
この場にいるKKS、
そしてガードたちの注目が
一気にそのエレベーターの扉に集まった。
《…ンニャ?これはこれは近田様、このような場所でお会いするとは、偶然ですね…》
黒の燕尾服を纏い、
額の狭いその頭を下げる猫男、
ルカ夫人の執事、ジュリアンだった。
《…いや、偶然ではなく、必然でしたか?》
近田は何となく予見していたが、
それがまさか
現実になるとは。
「ジュリアン…根回しご苦労さん。」
ルカ夫人は保険をかけていたのか?
ここに清浄会の人間が来れば、
リカ殺しの犯人が明らかになることを恐れて。
ジュリアンの瞳が大きくなり、
更に縦に割れる。
《根回し?何のことです、私はただ…》
《ミアリ様、メアリ様、に定期報告と、ご挨拶に来たまで…》
《その物言いは…言いがかり、でしょうか?》
ジュリアンはエレベーターを出て、
足早に皆を通り過ぎる。
その際に一言、
《近田様、今のは聞かなかったことにしますよ。それでは、失礼。》
ジュリアンへの言葉、
それは即ち、
ルカ夫人への言葉となる。
近田は挙げていた手を下ろし、
「おい、もういいだろ?エレベーターに乗せろ。」
ガードに詰め寄る。
向けられていたライフルの照準が更に絞られたが、
イヤホンマイクで連絡を取り合っていたガードが手のひらを見せて、
近田へ道を開ける。
「失礼シマシタ、ドウゾコチラへ。」
ここでようやく
近田たちはエレベーターへ。
着くフロアは決まっていて
中には一つしか階層表示が無かった。
「…あの猫の顔の人は…?」
神だけはジュリアンと会っていない。
すると近田が、
「まあ、そう急いで知らずとも、またすぐに会えて理解るさ。」
ジュリアンは間違いなく
ルカ夫人に
俺たちのことを報告するだろう。
まあ、結果がどうあれ
戦争になるのは間違いないのだが。
近田は天井、
四つ隅にある防犯カメラを睨み、
ジュリアンのことを考えていた。
それからほどなくして、
エレベーターが止まり、
扉が横に開いた。
「…な、何じゃこりゃああ!」
神が叫ぶ。
それもそのはず、
「ここはミアメアガーデン、ありとあらゆる秘密が集まる花園だ。」
そう語る近田と神、比村の目の前には
広大な木々や花、草々たちが
ビルの地下と言うことを忘れさせるように
生い茂り、
葉を揺らしていた。
「…風が、吹いているのか。」
比村が違和感に気づいた。
《結局のところ、》
《空調の風なのよ。》
背後、
エレベーターの中に、
2人の少女が…居た。
比村と神がすぐさま構えるが、
「身構えるな、俺たちはこの方々に会いに来たんだぞ。」
と、
近田は2人に戦闘体勢をやめるように指示した。
《ふふふ》
《ににに》
近田は二人組の少女に頭を下げて、
「ご機嫌麗しゅうございます、
メアリ様、ミアリ様…。」
青葉市内、
睨み合ういばらと俥、
ケイトは遠くへ逃げただろうか?
いばらは
頭の片隅へ、
コルクボードにピン留めするように
その心配を貼り付けて
構える。
「お前、誰にも見られたくない方法で、俺を倒すと言ったな?」
「それは何だ?戯言か?」
いばらの目が輝き、
その足元に
荊の茎が巻きついていく。
そして、
鬼羅の魔法陣が地面に現れて、
《…この姿は誰にも見られたくないんだよね、》
《…人間の姿を完全にやめるから。》
いばらに絡みついた緑の荊は、
どんどん成長して、
とうとう全身を覆い尽くし、
姿を隠してしまう。
そして!
《鬼羅の向こう側を見せてやろう…》
俥は、
その荊に釘付けとなる。
興味はある、
だが、
それ以上に、
唆られる…
「おお…これはまさに…危機ってやつか。」
久しぶりの感覚、
危機、
死への近道、
荊の群れを勢いよく貫く、
二本の長いツノ、
それは真っ直ぐそれぞれ45度の角度で
伸びて、
長い爪をした
細長い指が
バリバリと音を立てて
纏わり付いた荊を振り、
ちぎって散らしていく。
そして露わになったいばらの変身、
《鬼羅の向こう側…鬼羅鬼羅。》
青葉台の道場で見せたような鬼化でも、
ケイトのような鬼羅でもない。
肌は真っ赤で、
額に
両眼とは別の、
もう一つ眼を付けて、
身体中に
眼の下の隈取り模様が施され、
右肩には荊と薔薇が咲き誇り、
くびれた腰回りには大きな刃振りの
大太刀が据わっていた。
そして湯気を口から吐き、
《キサマ、亡骸の引き取り手は何処か…?》
妖力が高まりすぎて
自我が変わってしまっている。
普段のいばらのような喋り方ではない。
「…そんなものは無い。」
俥が答えると、
《そうか、なら気兼ね無い。》
いばらは素早く近づき、
思い切りその刀を振るって
眼前の俥の姿を
自分の影で覆い隠した。




