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あにあつめ   作者: 式谷ケリー
参の章 血風からくさ編
104/127

その、まさか





《ケイラ様の腕を!》


《奪い返すのです!!》




酒呑童子のこの言葉に


3人は

驚天動地、というか、

何というか、

言葉が出ない。




《こうなってしまったのは(わたくし)の責任です。》


《バァカな私の愚息、鬼切丸率いる百鬼夜行…なる、烏合の衆、その1人から取り戻すのです!!》





珍しく酒呑童子は興奮して

眉を吊り上げて熱弁したが、


いばらが最初に上がった熱を急に冷やしてしまった。


《名案、とも思ったけど、滅茶苦茶すぎて話になんないね。》



腕組みをして、

目の前でガンを酒呑童子に発射しまくる。



《あんたの言葉で言ってやるよ…》


《バァカなのか!?》



いばらのその迫力と勢いに押されて、

畳に尻餅をつく酒呑童子。




更に

指をさして

いばらは言葉で畳み掛ける。


《まず、百鬼夜行にどうやって会うんだ!?》


《次!誰が右腕もってんの!?》


《更に!それを誰が取り返すんだよ!?》


《あんたが全部やるなら問題ないけど!?》


《できないよね!?できないねえ!?何故なら!?ほら!言ってみろよ!!》




これを聞いている猫叉まで

腰を抜かして

プルプルと震えてしまっている。




酒呑童子は顔を赤らめて、

烏帽子を脱いで頭を下げた。


《私は…その、未来堂から、その、》


《あぁん!?聞こえねーなー!》


もういばらは

酒呑童子を覆い、

影で暗くしているほど詰め寄っている。


《未来堂から一歩も外へは出られません!!!》




酒呑童子の叫びを聞き入れて、

いばらは踵を返し

またケイトのかたわらに座った。


《ケイト、傷は治ってるはずだよ。猫叉さんが良い薬を付けてくれたから。》


《痛みはないだろ?》


ケイトはゆっくりうなづき、

いばらに応えた。



《じゃ、ここを出ようか。》


《ケイトの家へ行こう。あたしも付いてく。》



寿命がどんどん減ってしまう事を

危惧したいばらの配慮か?



《あたしもここには当分帰りたくないしね。》



否、

とんだ浅知恵に振り回されて

気分を害した事が大きいようだ。




だが、


《ケイト様、いばら。》


酒呑童子はまた立ち上がって、


《方法は他にもあるが、奪い返すよりも危険なのです。》


《百鬼夜行の1人だけに絞った方がよっぽど安全、という方法が。》




そしてケイトに近づき、


ケイトの左手をそっと

酒呑童子の冷たい白手で包み込む。




《ケイト様、本当に申し訳ない。》


《私が全て、悪い。》




ケイトは何も言わずに

未来堂の鳥居をゆっくりくぐり、


現世にいばらと戻っていった。





それから、


当然猫叉が問う。




《酒呑童子殿、百鬼夜行よりも危険な方法とやら、まさか…?》


猫叉も伊達にオジイではない。


何やら目星は付いていたようだ。




その時は珍しく

酒呑童子がキセルに火を入れ、


煙を吹いていた。



《はい、その、まさかで御座いますよ。》













…どの、まさか?









《わしの言う、まさかとは、あれぞ、》


《あのー、ウニャウニャ》


猫叉は肉球で額を押さえて、

足をパタパタさせ

思案する。


《ええー、あみ、あみ、》




酒呑童子はため息混じりに

また煙を吐いて、


《…薬師さまです。》


肉球をひゅっ!と伸ばして


《それニャア!!》


とアハ体験。




《…しかし、わかりましたでしょう?》


《…その、"まさか"、が如何に無謀か。》




縁側にまた2人で座り、


何時も二月(ふたつつき)が輝く未来堂の夜空を眺める。




《浄瑠璃まで行けたとして、四天王さまが問題。》


《四天王さまが通してくれたとて、次は十二神将さま。》


《奇跡的に奇跡が重なり重なり、十二神将さまらが通してくれたとて、更には月光さまと日光さまがおられる。》




悲しげな顔で

淡々と謎の会話を繰り広げる酒呑童子。


その話に刺激を受け、

徐々に記憶が蘇ってくる猫叉。


だが、

蘇れば蘇るほど、


ただ絶望感が厚みを増すだけ。




《そうニャア…薬師さまに会うなど、万にも億にも叶わない願いじゃあ》


《無理を押し通したとて、四天王さまや十二神将さまに殺されるのがオチ…》


《浄瑠璃に行くにも困難があるじゃろう?》





庭の砂利に

火種を落として


キセルで縁側を叩く酒呑童子。




《浄瑠璃に行くには…まあ、方法はありますが…。》


《…百鬼夜行の方が楽ですよ。》




この、

妙に嫌がるリアクションを見て猫叉が、


《…おお、思い出した!》


竜宮童子(りゅうぐうどうじ)殿じゃ!》




その名前を聞いた途端、


酒呑童子は目を細めて口を一文字にする。




《竜宮童子、なんて名前、何百年振りに聞いたか。》


《聞きたくもない名前ですね。》






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