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あにあつめ   作者: 式谷ケリー
参の章 血風からくさ編
103/127

狂気の舞





KKSの3人は

からくさ街に着くなり、


高価そうなテーラーにその姿を置いていた。




「もう21時を回ってますけど、まだ営業しているんですね。」


神くんは物珍しそうに

整然と陳列されたオーダースーツやドレスを見渡し、


感心する度に顔を細かく揺らしていた。




「そりゃそうさ、ここの客の大半は夜の蝶や鴉達だからな。遅くまでやらないと仕事にならないのさ。そうだろ?」


近田が店員を見つけて捕まえる。


店員はうなづき、

用件を聞く…


…どう見ても成人には見えない者達に。




「無粋な質問だ、俺たちは客だよ?」


近田がとりあえず適当にスーツを3着用意するよう話した。



しかし、

ここはテーラー、


オーダメイド専門の専門店だ。




「細かいことはいいからさ、そうだ、比村、神、ここに掛けてあるスーツで自分に合いそうなのを着てみろ。」


仕立て終わって、

持主を待っているスーツを指さす近田。



店員は勿論それを制止して説明しようとするが、



「俺たちに合うようなスーツがあれば、そのスーツの値段、3倍…いや、10倍払うから準備してくれ。」


と、

店員に近田は変なカードを見せる。


クレジットカードでも、

会員証でも無さそうな、



店員はそのカードを苦笑いしながら

手に取り、

店の奥へ。



「近田くん、随分強引だね…。」


「スーツなら家に寄って貰えば有りましたよ!」


比村と神が近田の行動に驚くが、


近田は言葉を返す。


「安物のスーツじゃ行けない場所に行くんだ、これくらいしなきゃダメなんだよ。」



そう言われて

その事情は理解した、

だが、


「さっき店員さんに見せたのは…?」


謎のカード。


近田は笑って、


「ああ、あれはまあ、水戸黄門で言う印籠ってとこだな。」




そう言っている内に、

店の奥で

呑気にしていた中年の店長が慌てて飛び出してきて、




「せせせ!清浄の皆様でしたか!!先程はうちのスタッフがご無礼を…!!」


オシャレにセットしていた髪を振り乱し、

3人に何度も頭を下げる。


そして

店内のテーブルに着いて貰い、


お茶と菓子を出すことで許しを請う。




すると

近田は着席して足を組んだ。


「話の早い人が来てくれて助かるよ。」




………。





「ありがとうございました!!」


スタッフ全員で

煌びやかな3人を店外へ見送る。


「髪型までセットしてもらえるなんて、ラッキーだったな。」


なんて

大きな声で笑う黒スーツの近田。



比村と神も同じような格好をして

恥ずかしそうにそのテーラーを離れる。



「オールバック…なんて初めてしました。」


いつも前髪で目を隠している比村には

新鮮な出来事だったようだ。


「比村、似合ってるじゃないか。今度からそうしたらいいぞ。」


また笑う近田。


三人が向かう先は果たして?











一方で、


「…。」


未来堂で目を覚ますケイト。




《ケイト様、お帰りなさいませ。》


ケイトの傍には

酒呑童子、猫叉そして、


《…!!》



いばらが居た。


いばらはすぐにケイトを抱きしめて


《私が居ながら…こんな事に。》


涙を浮かべ、

肩に顎を乗せてケイトへ謝罪する。




ケイトは苦しい、

いばらを離して、


半身を起こして

早々に

皆から事情を聞いた。



「…あたしは丸一日寝てたんだ。」


(ここでの1日は現世の約3時間半)




膝まで掛けていた布団をめくり、


立ち上がろうとする。




《ケイト様、あまりご無理をせずに》


酒呑童子の言葉を横顔で遮り、

布団から出る。




そして

例の右腕が本当に動かないことを痛感した。


「やっぱり、ダメか。」


目覚めた時から分かっていても、

確かめたくなる。


そっと

左手を右腕に伸ばして

抱きしめる。




「ダメかぁ…。」




目を閉じて

涙を目に一杯溜めて、

堪えるケイト。


だが、

気持ちがありとあらゆる感情にシェイクされ、




「うっ、うっえ」


「うえぇ、どうしよお」




子供のように

なりふり構わずに泣きじゃくってしまった。






「どおしよおおお!!!!」


「うえええぇええ!!!!」


目を絞り、

大きな口を開けて叫ぶ


「わぇえええええ!!!!!!」





それを見て、

猫叉が堪らず隣の酒呑童子を

頼りない肘で突き、

耳打ちを激しくする。


(おお、おい!酒呑童子殿!どうするおつもりじゃ!?)


(わしは(いたわ)しくてたまらんぞ!!)


確かに、

猫叉に言われるまでもなく

能面のような

流石のポーカーフェイスも

これには参った。




苦しい目を

いばらにやると、


しゃがみこんでしまったケイトを

優しく包んで

抱きしめ、


頭を優しく撫でていた。




《大丈夫、大丈夫だ。あたしが、なんとかするから…絶対に、"ケイトの腕の代わりに"なるから…》





…この、いばらの慰み言葉、


…酒呑童子がニヤリと笑い、


…救われた。





《ほっ!ほほほほ!!!ほほほっ!!!》





立ち上がり、

足袋の裏を見せるほどはしゃいで回る酒呑童子





ケイトは相変わらず泣いているが、


いばらは立ち上がり、


《こんな時に何だよ!?ぶん殴るぞ!?》



気でも振れたのか?


その

不謹慎な振る舞いに憤りを見せるが、



《ケイト様!》


ケイトの体育座りを

無理やり崩壊させて、

腕を取り、立たせて、


《ほうら!踊りなさい!ほほほ!》


《嬉しい時は人も、妖も、鬼も皆踊るのですよ!》




腕をぶるんぶるんと振り回され、


無理やり踊らされるケイトが、




「…あたしが、こんな状態に、ひっぐ、」


「なって、嬉ひいの、っ!?」




すると

踊りを急にやめて、


酒呑童子は

ケイトを布団に倒した。



そして、

皆さんもうお分かりの言葉を叫んだ。


《お兄様、ケイラ様の腕がありますよ!》


《右腕を!集めるのですよ!!》





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