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あにあつめ   作者: 式谷ケリー
参の章 血風からくさ編
102/127

始まりの夜空




青葉市のとある高層ビル、


そこに入っている高級レストランに


からくさ風俗街の姫、

ひのえ

と、

その姫に従う盛鬼(本物)の姿があった。




他の客はおらず、

全てを貸し切り、

互いの従者たちを周りに置き、

2人は大きなテーブルについて料理を突く。





《…殺人事件もどこ吹く風、アガリは絶好調です。》





ステーキ肉を口に放り込み、

今月の売り上げが書かれた紙を部下に渡し、

その部下がひのえに紙を通す。


ひのえは真っ赤な口紅が落ちぬように

そっとナプキンで口元を拭いて

その紙を預かった。




《…性的興奮と、猟奇的興奮は紙一重、怖いから抱く、不安だから風俗で女を抱く、人間の心理であり、真理…。》




そして

高いワインが注がれたグラスを一飲みして、




《我らよりも人の方がよほど化け物ね。》




その一言に、

ちげえねえと笑い、

盛鬼はまたステーキを頬張り、


話を切り替える。




《…ところで、清浄の従者(サーヴァント)どもはどうしましょうか?》





ひのえはまたワインを飲んで、


《放っておけ、との事よ。奴らから仕掛けてくるまでは好きにさせておきなさい。》


《あ、そうそう、わかってるわね?これは、私の命令ではない事を。》




そう、

これはルカ夫人の言葉。


盛鬼は夫人に会ったことなど一度もないが、

存在は嫌という程感じ取れる。


何度もうなづき、

同感を現した。




《だが…》


と前置きして、


《1週間過ぎたら好きにしていい、との事、その時は宜しくね。》





それを聞いた盛鬼はニヤリと笑って


《そいつはありがてえ。いやね、清浄の従者の中にね、ちょっと世話になった顔がありますもんで…》


《挨拶してえな、と思ってたところだったんですよ。》


《…そうか、そいつはありがてぇな。》




ケイトのことを言っているのか?

盛鬼はステーキのお代わりを

部下に押し付けて

葉巻をかじり、火をつけた。




《…ありがてぇ、ありがてぇ。》










同じ頃、


何巡かのレイドトレーニングを終えた1年ろ組の面々は、


簡単な夕食を済ませて、


川上が事前に伝えていた

1対1の生徒同士による総当たり戦を行っていた。




だがそこには、


近田、比村、神の姿はない。







「よう近田、KKSを忘れてないな?」


別の場所に3人を呼び出す川上。



川上は指を立てて

確認するが、

そんなつまらない用語、

早く忘れてしまいたいのが本心である。


確実な 確証 探す隊。




「勿論です。ルカ夫人、及びひのえ、及びからくさ街が、岩代リカを含む五件の殺人事件に関わった何らかの確証を探すのが目的、ですね?」


近田が確認すると、

川上はつまらなさそうにゆっくりうなづく。



そして、

腕組みをして、



「まあ、本来ならKKSにはワシを除く、もう2人

メンバーがいるんだが、まあ、今はとりあえず3人で行動してくれ。」



そう言われてすぐに、

神くんは、

ケイトの事を考えた。



(晴名さん、大丈夫かな?)

(ローゼスさんは付き添っているのかな?)


そしてまたすぐ、


「あの、その、KKSのメンバーでは無い僕が呼ばれた理由はなんでしょうか…?」




神くんには当然の疑問だろう。


川上はすかさず、




「晴名の鬼チョロ美、おめーさんはアレの代理だよ。」



ケイトはしばらく

復帰できないと読んだのか。



そう聞いて、

神くんもそう思っていたし、


色々と事情を知れるので

その代理を受ける事にした。



「晴名さんの代役が務まるか分かりませんが…」



神くんのその弱気な発言に、


「神はレイドトレーニングで大活躍したじゃないか。たった1人でレベル10を生き残るくらいに。」


近田が讃える。




そんな中、

話を割るのを謝罪して

比村が、


あの、

前置きして話す。


「その、KKSの目星とか、ありますか?ただ闇雲に動いても、仕方ないですから…あるなら、教えてほしいな、と。」





川上は少し躊躇ったが、


まあ、仕方ないなんて、

これまたつまらなさそうに語る。


「ルカ夫人とか、ひのえってのは要はからくさ街の元締めなわけよ。」


「風俗、酒、商売、からくさのありとあらゆるコミュニティを自分たちの強引なルールで治めてる。」


「と言うことは、そこに必ずほころびがある、ワシはそう思うねえ。」





3人は

川上のその言葉を受け止め、


夜空に包まれる青葉高校を後に。




青葉へ続く、

心臓破りと言われる大きな長い坂を

歩いて下っている最中、



「ほころび、か。」


近田が夜空を見上げて

独り言のように呟く。


そして、


「ということは、末端の部下達、もしくは従する人間あたりを洗うか?」



この近田の提案に

首を下ろしかねる神と比村。



「…うーん、むしろ、上の連中を洗った方が良いと思います。」


「僕も神さんに同感ですね…」



その言葉で近田は

2人が何を言いたいか気づく。



「…確かに、よく考えてみれば絶対的な力で支配している人間こそ、報復を恐れてひのえ達を裏切るようなことはしない、か。」



比村はうんうんと細かくうなづき、



「むしろ、上昇志向の強い中堅、そのちょっと上くらいの幹部達が脆そうかと。」


比村のそれに神も続き、


「僕も比村くんと同じです。幹部に聞くならあまりに上過ぎてもダメ、丁度いい、その、何というか…」




ここまで聞けば近田も理解し、

話の腰を折って

2人に手のひらを見せる。


「皆まで言わなくてもいい、そのプランで行こう。」



しかし、

比村に懸念がある。


歩きを止めて、


「けど、そいつらが素直に教えてくれるかどうか…それが問題ですね。」



すると笑って近田が、


「それは大した問題じゃないな。」



何故か?

神と比村が尋ねる前に

近田はもう答えた。



「…吐くまで聞くさ。」




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