絶
「…。」
その頃、未来堂、
ようやく峠を越えたケイトが
穏やかな寝息を立てて
休息に入る。
《ああ、お帰り、酒呑童子殿。》
神くんとの楽しいひと時から帰った酒呑童子に
ケイトのそばで看病していた猫叉が
キセルを吹かして声を掛けた。
酒呑童子も猫叉同様、
畳にあぐらをかいてケイトの状況を聞く。
《あれから、どうでしょうか?》
《施術後しばらく苦しんでおったが、先程落ち着いたようじゃ。》
フランシスカに与えられた大きな裂傷は
酒呑童子が縫い合わせたが、
《…もう、戦えないかもしれませんねえ。》
ため息を一つ置いて、
いつものニヤケ顔が鳴りを潜め、
くらく、締まった顔で呟く。
猫叉はキセルの灰を
火鉢に叩いて落とし、
《かまいたちの傷薬でもダメか?》
《いえ、傷は癒えますよ。ですが、神経や骨がズタボロでしたので…》
酒呑童子はケイトの寝顔を見つめて、
《右手で刀は握れないでしょうね。》
勿論、
未来堂の社の外でその会話を聞いていたいばら。
取り乱すこともなく、
ただ冷静に
聞き耳を立てているだけ。
《にゃあ…本人には何と?》
《そうですねえ、ありのままを言うしかないでしょうね。》
そうして、
からくさ街との戦いが始まった。




