再決意
曲がり角に入り、
人気の少なそうな路地へ飛び込む。
身を丸くし、
雑然と置かれたポリバケツやゴミ袋の側へ隠れた。
神くんに、神社のこと、
託された刀、現祓
小人の事や、
空中散歩、
おまけに高いところから落下しても無傷な自分の身体、
考えても答えの出ない問いで頭の中がパンクしそう。
…お兄ちゃん。
…あなたのせいであたしは、どんどんどす黒く、太くて長いものに巻かれていってる気がする。
…助けてよ。
頭上からだった。
その時声がしたのは。
《やっぱりグダグダになってたか》
塀の上に、
神社であった少女が腕組みをしこちらを見下している。
そこから路面に着地し、
《携帯民くらい、さっさとやっちゃいなよ。》
いばら?
だっけ、この生意気な子。
「携帯民…?あの小人?なら、あなたがやってよ!あたしは無理だって!」
すると、
ただでさえ寄っていた細い眉毛が更に眉間に集中して、
《別にいいけど、あんたのノルマは減らないよ?》
ノルマ、
魂5つとかってやつか…。
《1週間って、現世では案外あっという間、あんな雑魚で魂1つ稼げるのに、やっていいの?》
いばらは黒に近い赤い髪を指でくるくると巻いて、足踏みをしながらため息をついた。
あの小人はやっぱりチュートリアル、
それは酒呑童子も言っていた。
やっぱりあいつで稼がなきゃ他の現の魂5つ集められなかった時に後悔するのかも。
「じゃ、どうやって戦えばいいの!?沢山いたし、数が…」
いばらはさらにため息をついた。
激しめの、ため息を。
《言い訳ばっかりしやがって、さっき戦っただろ?小人2、3匹斬っただろ?それを何回もやればいいんだよ。》
いばらは近づき、
顔の前で、
《その刀を出してる時は、あんたの身体能力は妖怪並になる。空を飛べたろ?ちょっとやそっとじゃ死にやしないよ》
おでこを指で弾かれ、
尻もちをついてしまった。
《こんなところに隠れてても、あんたの妖力で携帯民に場所、すぐバレるよ?下手なこと考えるより素直に戦った方が賢明。》
そしていばらは凛と和服を揺らし、
背を向けた。
「あ、ちょっと待っ」
物凄い衝撃、
土ボコリが舞いいばらが浮上する。
路地の突き当たり、向かいの雑居ビルの屋上へ飛んで行った。
悩んでても始まらないって、
だから酒呑童子の口車に乗ったのに、
今もまだウジウジしている。
それじゃダメだよね、
あの子が大丈夫って言ってるなら、大丈夫なのかもしれない。
立ち上がって、
刀を握る。
「場所がバレるって言ってたよね…なら、待つ」
迎え撃つ。




