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猛攻

ヤマは、吹き飛んだ自分のバイクを探す。

周囲をきょろきょろと見回すと、

後方の建物にぶつかってカラカラと車輪を回していた。


壊れたのかと急いでバイクを持ち、起き上がらせると

側面は地面を滑るように 吹き飛んだため、

激しく表面が傷ついていたもののそれ以外は幸運にも目立った故障などはなかった。


「オイル漏れもないな、よしいける」

ヤマがバイクの安全を確認してシートに跨がると、後ろに増田が乗り込んできた。


「増田軍曹?」


「俺のバイクはダメになっちまったからな。後で回収させて修理するさ」


「でも、俺タンデム走行なんて初めてですよ」


「たいして変わらん。俺が援護するからお前は走行と鉄屑の操縦士に止めを刺すことだけに集中しろ」


「了解!」


了解の返事に相応の決意を込めたヤマは、

思い切りバイクのスロットルを回し、ギアを蹴り飛ばした。


アスファルトに黒い轍が残り、ガソリンがあちこちに染みを作る。

タイヤと地面が擦れあう音を響かせながら、バイクは勢いよく発進した。


二人を乗せたバイクは公園周辺で一番の激戦地である中央へと向かう。

それに伴うかのように、ヘパストス軍の攻撃も激しく熾烈になっていく。


「前方に機甲兵1体、歩兵5体!抜かるなよ!」


敵の放つ小銃や機関銃の銃弾が矢継ぎ早に放たれてくるも、

ヤマは高速走行しながら、上手くバイクコントロールを行い

間一髪それらの直撃を避けていく。


すかさず増田が機関短銃で 弾幕を張って援護を行う。

バイクから弾幕を張られた敵軍は一先ず障害物に身を隠すため

射撃が止め、負傷者の医療や弾倉交換を行う。


その瞬間。


ヤマは、全速で援護をなくした機甲兵の元へ向かう。

それと同時に増田は柄付きの手榴弾を持つと、

ピンを抜いて機甲兵の足元へと投げた。

機甲兵もバイクを落とさんと機関銃と散弾銃で反撃するも、

ヤマの素早い旋回によってかすりはするのものの直撃を与えることは出来ない。


焦った機甲兵の操縦士は、一先ず距離を置こうと移動を開始する。

すると、足元の手榴弾が爆発し衝撃によって機甲兵のバランスが若干崩れた。


増田はそれを見逃さない。


機関短銃を素早く構え、バランスを崩した右足の動力チューブを重点に狙い撃つ。

火花を散らしながら倒れる機甲兵はなおも一矢報いんと

両腕から銃弾を吐きだす。

滅茶苦茶に撃たれた銃弾は建物や鉄製の看板に命中し、

頭上に瓦礫として降り注がれる。


当たれば一貫の終わりであろうそれらを右へ左へ回避しながら

ヤマは、小銃を構える。

瓦礫の雨を抜けると、増田が叫んだ。


「今だっ!」


その言葉でヤマは、引き金を引く。

無我夢中で引く。


銃身に弾が無くなるほど撃ち尽くしたヤマは、操縦士をしっかりと確認する。

操縦士は、あちこちから血を流し下顎が無くなっていた。


これが、戦場。

ヤマは新しい銃弾クリップを銃身に装填すると、

横目で操縦士の死体を見ながら血のようにガソリンを流している機甲兵の残骸を

走り抜けた。


「右に機甲兵2体!!」


索敵行為を続けていたヤマの耳元に増田の声が響く。

激しい機甲兵の攻撃によって、バイクにも銃弾の傷が目立つようになっ

ている。


だが、ヤマは怯む事なく強引に進路を変えると前輪が浮きそうなほどの

急加速で突撃した。

足元はアスファルトが割れ、

機甲兵の垂らした跡と思われるガソリンと細かい瓦礫が混在しており、

走行には最悪のコンディションであったが、嵐のような銃弾をあえて浴びるかのように進んでいく。


銃弾がバイクのライトに命中し、硝子片が飛び散る。

目の横を硝子が掠めながらもヤマは微動だにせず、自動小銃を構えた。

ヤマの猛進に敵操縦士も焦りを感じ始め攻撃を強めようと試みる。

が、増田の機関短銃による援護が功を奏しなかなか攻撃の手を強めることができない。


ヤマが操縦士の胸に照準を定め、銃弾を放つ。

見事銃弾は敵兵の胸に数箇所の風穴を開けた。


操縦士を失った機甲兵は直立したまま動きを止め、敵兵の血によって涙を流しているかのように鉄の体を光らせた。


「もう一体!」


狙いを付けられたもう一体の操縦士は完全にパニックになってしまっていた。


理解できない。

どうなってやがる。

なんでたかがバイクに乗った生身の兵士に為すすべもなく---


照準もへったくれもない。

ただ銃弾を撒き散らしている機甲兵に、

ヤマはよく照準を合わせ3回引き金を引く。

ヤマが狙ったのは操縦士の両腕であった。


両腕を打ち抜かれ、操縦を封じられた操縦士は撃ち殺される恐怖に駆られ叫ぶ。

もう冷静な判断は出来ていなかった。


なので操縦士は気づいていない。

両腕を封じられた意味。

操縦席に投げ込まれたピンの抜かれた手榴弾の存在に。


ヤマは遥か後方で聞こえる爆発音を聞きながら、合流場所である噴水広場へと向かった。

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