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第六話 不思議なもの

 日頃の運動不足が祟った、というのも理由の一端だとは思うが、ひたすらに逃走しまくった結果、尋常じゃなく足が痛くなった。当然息は上がったが、それも数分程度で治まったので問題無いけれど、足は、ちょっとやそっとじゃ痛みなんて引かない。もっと言うと筋肉痛になり兼ねない。どんだけ脆いんだよ俺。

 まあ実際校舎内を走り回った程度だから、さほど影響はないだろう、しばらく回復はしないけど。というか、ちょっと休憩したい。

 そんな風に「どこか座る場所ないかなー」と考えていると、ふと自分が時計塔の正面にいることに気が付いた。

 正直周りなんて全然見ていなかった(というか見えてなかった)から、少し驚いてしまった。

「……しかし何から何までスケールがでかいような気がするな」

 苦笑気味に呟いた。しかしそれも無理は無いだろう。

 何せ、「これ一体何メートルあるの? こんなに高くする意味あるの?」と思わず疑問を口にしてしまいそうなぐらい、それは巨大なのである。一応時間は確認出来るあたり、時計塔として機能はしているようだ。

 すると、何やら上空に何かが浮かんでいた……いや、落下してきた。

 塔から落ちたものだろうか、人形のようなものがゆっくり、だけど着実に――


 ゴッチーンッ!!!


 強烈な効果音を響かせ、俺の頭に向けて落っこちてきた。

「いっっってえええええええええええッ⁉」

「うっっっぎゃああああああああああッ⁉」

 突如、激しい鈍痛が俺の脳天を襲う。と同時にけたたましい金切り声が両耳を騒ぎ立てた。

 ふるふると頭を抱え痛みに震えた後、俺は若干涙目になりながら、見事な自由落下をキメてきやがったソレを一瞥する。

 ソレは、小さな身体で、その背中に小さな羽を生やした、一見すると可愛らしいモノだった。俺と同じように頭を抱えている。

 しかし、俺はそういった自動的に目に入るまったくもってふひつような情報全てを完全無視(シャットアウト)した。

 何故かって?


「何ピンポイントで俺の頭上落ちてきてんだテメェ!」


 怒ってるからに決まってるだろうが! これが怒らないでいられるか!

「……ッ、アナタが私の落下地点にいたからでしょうが!」

 すると、ソレもイラッときたのか、飛び立って俺の眼前に来て反論してくる。しかし、その言葉に、俺はさらに反論する。

「あ? 知るか! テメェが落ちて来なけりゃ良かったんじゃねえか!」

「はいはいそうですねですが元はと言えばアナタの責任ですよ!」

「はあ? 何がだよ!」

「私はずっとさっきから『見ない顔だなー侵入者?』などと感じていて、それで私がわざわざ降りていったら、急に羽が機能しなくなって……。だからアナタの責任です!」

「完全に自己責任じゃねえか! 理不尽だろその言い草!」

「じゃあアナタは一体何者なんですかここの生徒さんですかねえねえ!」

「うぐっ……。そういうテメェこそ何でその羽が機能しなくなったんだよその理由(わけ)を詳しくお聞かせ願いましょうか⁉」

「うぐぐ……」

 お互いに、言い負かす為の材料を探したが、事件性がかなり低レベルなので、全然思い付かなかった。

 結果。

「えと……このアホー!」

「何だとこのチビ野郎!」

「バカバカバカー!」

「テメェがバカだよバカチビ!」

 ……めちゃくちゃ小学生の喧嘩くさくなってしまった。いや、この場合『ケンカ』の方が良いかな?

 ひとしきり罵倒しきった後、息をついて冷静になる事にした。ていうか、よく考えたら事故だよな、コレ。

 ……何だか急に罪悪感というか、俺だけが悪いという思いが脳裏をよぎった。

「……、えと、悪かった」

 元はと言えば、俺がふっかけたケンカだ、だから俺から謝るのが道理というものだろう。

「……何ですか急に」

「いや、よくよく考えたら俺めちゃくちゃ悪人だなーと」

「……そうですか。まあ、良いですよ」

 ぷいっと恥ずかしそうに顔を背ける。うん、今更だけど何コノ生物。羽が付いててパタパタ絶え間なく動いてるけど。

「……いきなり悪い。お前って、何?」

「は? どういう事ですか?」

 こちらを振り向き、首を傾げて質問返しされた。

「いや、お前の……その、存在っての?」

「…………はぁ。つまり、私が何者かって事ですか?」

 そうそう、と頷くと、渋ったように、

「私は、妖精のキルル(・・・・・・)と言いますが、それが何か?」

 と言った。……って、え? ちょっと待って。何て? ヨウセイ?

「ええええええええええ⁉」

「……そんなに驚くことですか?」

 いよいよコイツは何者なんだ? という感じの眼差しを向けるキルルという妖精。

 ……やっぱり、魔法世界だから、こういうメルヘンチックな存在がいることも有り得る、という訳なのだろうか。

「ところで、アナタは一体何者なんですか?」

 俺が動揺していると、キルルが質問をしてきた。

「あ、ああ、えと、俺は幽上留依」

「ユウガミ? あんまり聞いた事がない名前ですね」

 そういえば、この世界で名前名乗ったのこれで二人目か、コイツを人と定義して良いかは甚だ疑問だが。多分人ではないけどね。

「で、アナタはここへ何しに?」

「……、いや、えっと」

 異世界から来た俺をアリサが監視の為にここへ連れてきました、なんて馬鹿正直に言える訳がない。言ったところで笑い者にされるか頭の心配されるのがオチだ。

「ひょっとして、来訪者、とかそんな感じですか?」

「は? あ、そうそれだよ! 来訪者!」

「何だ、そうなんですか」

 キルルが勘違いをしてくれたおかげで、なんとかこの場は逃れられそうだ。

「それじゃ、俺はこの辺でちょっと――」

「では、アナタが何かをおかしなことをしないように、私が見守っておきます。お覚悟の程を」

 …………。どんだけ信用無いんだよ、俺。

「だ、大丈夫だって、変なことする訳じゃないから」

「いえいえ、気にしないでほら、自由に動き回ったら良いじゃないですか」

「いや近くにいるだけで凄え気になるから!」


 結局、その時間だけでなく、学校にいる間、俺はキルルに監視された状態で過ごすこととなった。というか、そういう風に決められてしまったのであった。

どうも、鷹宮雷我です。

妖精登場です。英語で言うならフェアリーです。

魔法世界においては、多分欠かせない存在ですよね、妖精って。そして面白い存在ですよね、妖精って。

何といっても、小さくて羽が生えてるのがポピュラーだと思います。あれ、でもどうして羽があるんだろう。不思議だなぁ。

今回はこの辺で。

それでは。

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