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第一話 魔法の存在

 声が、聞こえた。俺を呼びかけるような、甲高い声だった。

 目を開くと、

 そこには、女の子がいた。

「うわあぁ⁉」

 思わず、びっくりして飛び上がり、叫んでしまった。俺の叫び声に反応して、彼女も驚いたように声をあげた。

 その後、落ち着いた様子のその少女が何かを言った。

「―――――!」

 しかし、全く何を言っているのか理解出来ない。日本語でないことだけは確かだ。

 ひとまず辺りを確認するため、見渡した。すると、信じられない光景が目の前に広がっていた。


 空中では、人が何も持たず、あるいは、箒に跨がって空を飛んでいた。

 また地上では、掌から、あるいは杖から炎やら何やらを出していた。


「……は? ……え?」

 まるで、魔法でも見ているようだった。

 人は、本当に驚愕するモノを見た時、言葉を無くしてしまう、というのは本当に本当らしい。

 と、今度は、隣でさっきからずっと意味不明の言語を喋り続けていた少女が、地面に置いていた小さな杖を掴み、何かを唱えると、

 俺達を、何か薄い膜が包んだ……ように見えた。


「――これで、私の言葉、伝わるようになったかな?」


 突然、彼女は日本語を話し始めた。

「―――――は? え? なん……⁉ えええええ⁉」

 ただただ驚愕するのみ。だって、続けざまにこんな不思議で意味不明で説明不能な事態が起こるんだぞ! これで驚くなという方が無理だ!

「あ、あれ? 通じてない……のかな?」

 怪訝そうに不安そうに、少女は言った。

 これはマズい、と俺の中の何かが囁いた。

「い、いや! 通じてはいるっつーか、ただ状況を飲み込み切れてないだけって言うか!」

「そう。良かった」

 ホッとして笑顔を向けてきた。うわ、ヤバい、可愛い!

 しかしすぐに我に返り、冷静に少女に話しかける。

「え、えと、訊きたいんだけど、ここは一体、どういう場所なんだ?」

「? ここは、ペスティエルって街だけど」

 へ、へえ。ペスティエル、か。

 ……いやどこだよ! そんな説明じゃ分かんねえよ!

「それで、君はどこから来たの? 見かけない服だけど……」

 次は彼女から質問してくれた。のは良いんだが、どう説明して良いのか……。

「えーっと……。いきなり現れた「扉」に吸い込まれて、気付いたらここにいた……みたいな」

 とりあえず、思いつくままに言葉を紡いだ。……意味不明過ぎるだろ、俺。

 しかし少女は顎に手を当て、考え始めた。何か心当たりがあるのだろうか。

「……それって、ひょっとしたら『ホーリル』かなぁ」

「ほーりる?」

 何とも、予想を遥かに越えてきた返答が飛び出してきた。

「うん。多分だけど、それは『ホーリル』って「魔人(まじん)」のことかも。……って、そういえば結局、君がどこから来たのか訊いてないよ!」

 ぷくーっ、と頬を膨らまして怒った。え、何この生物。めっさ可愛いんですけど。

「えと、日本、かな」

「に、ほん?」

「そう、日本」

 しかし、ナニソレといった具合にきょとんとしている。きっと彼女の頭の中には疑問符が幾つか飛び交っているんだろう。

「そういえば、俺からももう一つ質問なんだけど、何で急に言葉が通じるようになったんだ?」

 そう、俺の今の最大の疑問はそこにある。その答え次第では、俺の考えの正解不正解が決まるのだ。

「え? それなら、私が魔法を使って(・・・・・・)言語感覚の調整(・・・・・・・)をしただけなんだけど……」

 ……はい、だいせいかーい。

 ……っつか、マジですか。本当にここ、異世界なんですか。

「それで、一体日本ってどこ?」

 少女が問うた。なので、俺はまとまった考えを、正直に言ってやることにした。

「ここが、魔法世界と仮定するなら、日本は俺に言わせれば現実世界に当たる場所だ」

「? どういう……?」

「つまりだな、異世界だ。こことは違う別の世界。そこじゃ魔法なんて存在しない。あるのは科学って言うモンなんだ」

 どうでも良いが、「高度に発展した科学は魔法と見分けがつかない」、らしい。そんな訳ねーだろ、と今では言える。実際に見てしまったから。

 ちなみに、それを言った人を俺は知らない。

「え? えと、だから、君は別の世界の人で、ホーリルに吸い込まれてここに来て………………ええええええええ⁉」

 驚愕。まあそうなるよね。処理すべき要素が多すぎるから。

「……つまり、君はこの世界とは別の、えっと、科学? のある世界の人で、魔法なんてモノを知らないような……」

「いや、魔法って概念は知ってた。つっても、言葉だけの、現実性皆無なモンだけど」

 はあ、と微妙な反応をする。まあ、そうだろうな。

「……そういや、聞きそびれてたけど、君は、名前何て言うんだ?」

 質問をしたら質問を返される、という循環(サイクル)が続いていたため、忘れそうになっていた。

「あ、うん。私はアリサ・リビュラー。それで、君は?」

「俺は、幽上留依だ。よろしく」

 それぞれの自己紹介が済んだところで、そのアリサという少女は「場所を変えよう」と言い出したので、俺達は移動することになった。

どうも。鷹宮雷我です。

第一話は、幽上留依が異世界に到着した話です。異世界、言ってみれば魔法世界です。

のちのち、この世界のことについてはゆっくり説明させてもらいます。

それでは、また次回に。



……超能力とか魔法とか、ホント好きだなー、俺。

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