寝なきゃいいんだよ、寝なきゃ。
「実は…
一週間ちょっとまえの事なのですが、私が庭掃除していた隙に、ユナカイト様が台所を爆破しました。」
「………?
…………は?爆破?」
アルベイルが目を見開く。
美形はどんな顔でも美形だなぁとアイリは思った。
「いや~、お湯を沸かそうとしたら鍋が爆発してさ。
とっさにテーブル盾にしつつ部屋を飛び出さなきゃ大怪我だったよ。
はっはっはっ」
大変朗らかにユナカイトは言うが、朗らかに言うレベルの話ではない。
大変美形だが、神経がおかしい人である。
「炎上はしませんでしたが、綺麗にした台所は見るも無惨な状態に逆戻りしました。
その直後、ユナカイト様が…
明日ご両親が来るけどこれじゃあ料理は無理だから私も一緒に連れてどこか食べに行こうとおっしゃったのです。」
「ユナ、予定を前日や当日に言うなってあれほど言っても解らないんですかね?」
「いたっ、痛い痛い痛い痛い!!!!!」
アイリの話を聞きながら、アルベイルは大変いい笑顔でユナカイトの頬をつねり上げている。
きっと当日や前日にいきなり重要な話をされたことは数知れずなんだなと、
アイリはアルベイルに心底同情した。
「…私は、この家の維持やユナカイト様のお世話を任されています。
ですので、何があろうと綺麗に戻して見せると誓いました。」
「…え、アイリもしかして俺が寝たあとも掃除をしてた…?」
ユナカイトが思い返してみると、寝るときににはまだ台所を片付けていて起きたときにはもう大方台所は片付いていた。
さほど被害が無かったのかと思っていたが…
「…寝ずにやったかいはありました。なんとかなってよかったです。」
アイリは自分の仕事に胸を張った。
しかし、ユナカイトは目に見えて落ち込み、そんな彼をアルベイルが冷たい目で見ている。
暫しの沈黙の後、アルベイルが言った。
「アイリは我家で引き取りましょう。」
「それだけはっ!
他の事なら何でもするから!」
ユナカイトがとりすがる。
小動物が大好きなのに構いすぎて嫌われる彼にとって、小動物系少女のアイリは癒しであった。
しかも家を綺麗に保ち、美味しい食事まで提供し、快適な生活までしてくれるというスーパー小動物系少女はどんなに探してもいない。
アイリが自分に対し色恋の目で見てこない事も心地よかった。
ユナカイトがこの家に来た頃、雇った下働きたちは女性だとすききあらば自分と既成事実を作り妻になろうと夜中に潜んできてうっかり返り討ちにしそうになるし、男性だとうっかり部屋を爆破したことに耐えきれず辞めていってしまった。
「聞きましたか、アイリ?」
「確かに聞きました。」
青くなるユナカイトに対しアルベイルとアイリは微笑んで言った。
「パンツ一丁はやめなさいね。」
「絶対に片付けしたり作ろうとしないでください。」
「………はい。」
「自室でくつろぐ分には構いませんよ、ユナ。
アイリの前でするのが問題がですので。
男が半裸や全裸でうろつくことに慣れてしまってはアイリの将来が心配です。」
ものすごく落ち込むユナカイトに優しくアルベイルが告げる。
飴と鞭か、とアイリは思う。
まぁ、見て見ぬふりしていたとはいえ半裸や全裸、パン一でうろつかれるとギョッとはするのでひと安心だ。
「そしてアイリの休みの話ですが…」
「いえ、だからユナカイト様が一人残ってなにもしないとは言い切れません。
休みの度に部屋を爆破されては私も身が持ちません。」
「ユナがどこかに泊まればいいと思いますよ。
実家だろうが娼館だろうが、私の屋敷だろうが選択肢はたくさんあります。
毎週とはいかないでしょうがつきに一度か二度、とれるようにして、日中空いた時間は自由に使いなさい。」
アルベイルが仕切って言う。
確かにユナカイトがいないのなら安心して休める。
「いいですか、ユナ。
小動物はあまり構われ過ぎたり、ずっといっしょに居られるとストレスで死んだり病気になります。
長くいついてほしいなら努力なさい。」
「そうだな。
今夜辺り娼館に行ってくるかな。」
「仕事が今晩中に終わるといいですね。」
「ええ?!」
漫才のような会話をしながら登城していく二人を見送り、アイリは思った。
結局ペット扱いじゃん、と。




