お茶会は腹黒と。
どんどんダメな人になるユナカイト。
朝からひどい雨だった。
今日はきっと書類仕事だからいきたくないとぼやくユナカイトに、アイリはパンを頼みなんとか追い出した。
室内の細々した掃除や、飾り付け、足りないものの書き出しなどをしているうち昼となり、
昼食を取り、シチューを作り終えるとお茶の時間となった。
ユナカイトがいてもいなくても、お茶の時間がきたら休む約束となっている。
この約束をするまで、ひと悶着あった。
シュトーレンにいた頃も休憩時間や休みの日は存在したが、ユナカイトの家にはアイリ一人。
休むぐらいなら家を綺麗にしたいと、睡眠時間以外は家の掃除、庭の手入れ、ユナカイトの世話にと駆けずりまわっていた。
アイリがのんびりしていたら、ユナカイトの家は1ヶ月で復活しなかったであろう。
『やるからには徹底的に』という奥様の教えを胸に働くアイリにとって、きれいになっていく家や庭は自分が働いた証のようで誇らしかった。
ほとんど一人でやりとげたのだ。嬉しくてたまらなかった。
しかしだ、アイリの見た目は年齢より悲しいかな幼い。
そんな子どもが無我夢中で仕事をし続けるのは痛ましく見える人もいたようだった。
一週間前、ユナカイトの両親が家を訪れた。
家の変わりっぷりに驚き、アイリの仕事っぷりを誉め、そして心配した。
働きすぎだと。
ユナカイトは父親に連れていかれ説教された。
アイリは母親に連れていかれ、仕立て屋で服を買い、雑貨屋や菓子屋も回り色々贈られた。
もらった服を着せられ、次の日は王都を案内してもらった。
そして二人は嵐のように去っていき、ユナカイトはアイリに休憩や休みをとるよう言ってきた。
休憩は了承したが休みの日は断った。
アイリは知っている。ユナカイトは台所仕事が壊滅的にできない。
お湯を沸かすだけで、なぜあんな事態になるのか。
アイリが庭掃除をしていた間に起きた惨劇は忘れようにも、忘れられない。
結局、アイリが後始末をしなければならなくなるので休憩時間だけでユナカイトにも納得してもらった。
お茶でものもうかと思っていると来客のベルが鳴る。
ドアを開けると、そこにはユナカイトの部下にあたるアルベイルがいた。
「いらっしゃいませ、
あの…ユナカイト様になにかありました?」
外套を拭くタオルを渡しながら、アイリは尋ねた。
書類が嫌で逃げ出したのだろうか?と内心思う。
アルベイルは笑顔だが、なんだか不機嫌な感じがする。
「こんにちは、アイリ。
ユナはお利口に執務をこなしてるよ。
それより…誰だか確認せず開けるのは不用心だね。」
原因はアイリだったようだ。
アイリはあわてて、理由を説明した。
「ユナ様のお父様がベルが鳴ると鏡に玄関が映る仕掛けを作って下さったんです!」
アルベイルを怒らせると怖いんだとユナカイトは以前言っていた。
なんだか知らないが、安全面を疎かにしてると勘違いされたくない。
「なら安心ですね、
そうそうお茶を一緒にと思いまして、菓子を持参したんですが…
私とお茶会しませか?」
ニコニコと温かな笑みになったアルベイルから菓子を渡され、思わずアイリの顔はほころんだ。
「はいっ!
あれ?ユナ様は仕事まだかかるんですか?」
仕事を早く終わらせると言っていたから、城に近いパン屋に寄ってもらうことになっていたはずだ。
アルベイルが来ているのに、ユナカイトが居ないとなると、残業だろうか。
「パンでしたらこちらに。
ユナカイトは必死で仕事してるはずですから、一時間もあれば来るでしょう。」
さっと、パンの入った袋も渡される。
ユナカイトは、かなり書類をさぼったらしい。
アルベイルの笑顔のなかに殺意をふくんだ笑みを見て、アイリは思った。
ユナ様は、外見いいのに本当に残念な人だ…と。
指導力やカリスマは天下一品。
しかし、生活能力はない。
優秀というよりは天才。
だからこそバランスの悪いユナカイト。
だからこその、秀才タイプのアルベイル。
故に、腹黒。
アイリは可愛らしい見た目に反して現実主義。
夢じゃお腹はふくれません。




