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騎士様の下働き  作者: みなみ
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元気のもとは美味しいご飯。

「ユナ、最近ご機嫌ですね。」


鼻歌混じりで書類を片付けるユナカイトに、騎士団の副団長アルベイルは声をかける。

朝から雨が酷く、訓練は午前中で切り上げられたので、たまった書類を二人でさばいていた。


出来ないわけではないが、美しい顔に似合わす、めんどくさがりでおおざっぱなユナカイトは書類仕事が好きではない。


いつもアルベイルが首根っこをつかみ(比喩ではない。文字通り。)、厳重な監視のもと片付けさせているのだ。

副団長は別名お守役などと言われたりする。


一度スイッチが入れば、瞬く間に片付けるのに追い詰められなきゃやらない。



そんなユナカイトが、だ。

ご機嫌に書類を片付ける日が来ようとは…!

ちょっと感動したアルベイルであった。


「今日はシチューだからね。」


女性がみたら惚れそうな勢いの麗しい笑顔でユナカイトが答える。


「雨だから仕事はやく終わるって教えたら、パン屋によってほしいって言われたんだよ。

美味しいパンに美味しいご飯が待っていると思えば嬉しくもなるよ。」


アルベイルは、なるほど、と納得した。



陰惨な状況となった森の領地シュトーレンを救ったユナカイト率いる騎士団は帰還の際、一人の少女を連れて行った。


少女というより幼子といえる外見ながら、大変優秀というかワイルドであった。

顔色変えず、的確にシカをさばき、料理してみせた時は度肝を抜かれたものだ。


皆、団長は実はロリな趣味をお持ちかと戦々恐々した事など杞憂に終わり、ホッとしたのは本人達には秘密だ。本当に良かった。



小さな少女は、ユナカイトに下働きとして家に置かれることになる。

皆、反対した。


皆、ユナカイトの家が魔窟だと知っていたからだ。

人が住むところじゃねぇ!と啖呵をきれるほど。


だがしかし、少女は勇者だった。

家の惨状をみてもなお、下働きとして働く決意を固めてくれた。



森の領地から帰って約一ヶ月。

ユナカイトの家は見違えるほどとなった。

彼の家掃除は騎士達の中で、もっとも重い懲罰とされていた事など、もはや過去。



庭は手入れされ、灯りがともる居心地の良い家となった。



「実は休憩用に菓子を用意したんですが、もうひと頑張りして、ユナの家でお茶にしませんか?」


「それはいい!

あとどれを片付ければいい?」


美形スマイルを振りまきながらユナカイトが答える。


アルベイルも微笑した。


「これを片付けてからです。」




ドサドサドサと書類の山を机に置く。


「ユナの気分ものってますし、大丈夫。

パン屋のには私が行っておきますから。

あの子と先にお茶してますから、早く来てくださいね。」




アルベイルはユナカイトがなにか言う前に執務室を後にした。









アルベイル副団長には、本人をまえにしては言えないあだ名がある。



それは、『麗しの腹黒』とか『美しき鬼畜』とかだ。





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