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騎士様の下働き  作者: みなみ
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新しい生活

ようやく話が進みます。


「アイリ、お腹すいた。」


掃除にせいをだし、ほこりだらけになっていたアイリにユナカイトはのんびり言った。


イラッとしつつも、なんとか笑顔を取り繕うと、食べに行ってくださいと返す。

アイリは?と聞かれたが、いいからお早く!!と家から追い出した。


壊滅的に散らかり、汚れきった部屋の掃除をしながら、なんでこうなったんだろうかとアイリは頭をかかえた。



*****


「モルゲン様は…!どうかモルゲン様は助けてくださいっ」


ギミルコーンが捕らえられたと聞き、アイリは我にかえるとユナカイトと駆けつけた少年に跪いた。


勢い余って、おでこをぶつけた。

だが、そんなことを気にする余裕もない。


目の前にいるユナカイトと名乗った男は…おそらくは騎士。

きっと国に連絡がいき、やって来たのだろう。





『もし私のことが明るみに出ても、真っ先に処刑されるのはお前らの愛するお優しい領主様だ』






使用人に、領民に、騎士に、捕らえられた優秀な部下や善良な人に、幾度となく嘲笑と共にぶつけられたギミルコーンの言葉が蘇る。


その言葉は、人々を縛り耐える日々を強要した。



モルゲン様が殺されるかも知れないと思うと、涙がこぼれそうになる。

地面に雫が落ちる。


ふわりと、体が浮かんだ。

目をぱちくりせると、涙がこぼれ落ち、頬にあとを残した。

突然の事に戸惑い固まっていると青い瞳と目が合う。

ふわりと笑ってユナカイトは言った。


「大丈夫だよ。君たちを救うために我々は来た。」





*****


詳しくは知らされなかったが、告発がなされたらしい。

ユナカイトは、瞬く間に人々を救い、モルゲン様を救ってくれた。

2ヶ月滞在したユナカイトと騎士団は(ユナカイトはまさかの団長だった)息子バンデを領主にし去ることとなった。


なぜかアイリを連れて。


穏やかで優しい…まあ押しに弱いバンデが、最後まで難色を示したのは意外だったが、心配されアイリは嬉しかった。


何度か話し合いがなされ、結局ついていくことになったが。


別れのとき、モルゲンとバンデから

アイリにとって故郷は此処だから、いつでも帰って来なさいと言われて涙ながらの巣立ちとなった。



アイリは知らない。

奥方お気に入りだった優秀なハウスメイドの可愛らしい子どもが、

幼児愛好趣味を疑われたユナカイトの毒牙にかかるのではないかとモルゲンとバンデが心配した事を。



*****


ユナカイトは言った。


下働きとして家に来てほしいと。


アイリは子どもながら優秀だった。

母を幼い頃に亡くし、孤児となったアイリは屋敷で育てられた。

一人でも生きられるようにと遊びたい年頃も脇目もふらず、覚え、学んだ。

奥方様にも気に入られ、馬の乗り方や狩した獲物のさばき方を教わり、野営の仕方を身につけた。


ユナカイトは愛らしい外見とは裏腹に、かなりのたくましさを持つ少女となったアイリを気に入ったのだそうだ。


騎士団の人いわく、

ユナカイトは可愛らしい生き物が大好きらしい。

だが世話する能力がなく、いつも逃げられるのでアイリは丁度よいのではとの事を。

ペットかよ!と思ったが、それ以上に深刻な家をどうにかしてほしいんだろうね…と死んだ魚のような目をして言われた。

相当酷いらしい。



実際、酷いなんてもんじゃなかった。

魔窟と言われた意味がよくわかった。

ユナカイトの家にきてはや一週間、アイリの寝床は未だに居間にある寝袋だ。


普通の人は逃げ出すだろう。

だがアイリは耐えた。

掃除、掃除、掃除、ひたすら掃除の日々。

救いは、ユナカイトが買ってきてくれる弁当が美味しいのと、近くの浴場に毎日行き、温かな湯につかれる事だった。



昼ごはんを食べ、掃除し日が沈む頃になりアイリは驚愕の真実を知った。


3日かけて掃除した部屋は、台所だったのだ。

ようやく人間らしい生活が手にはいると、拳を固め、よっしゃあ!とアイリは叫んだのだった。


しばらくは

下働きアリアのお掃除物語になりそうです。

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