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12話 歌声が届いて 3


 家に戻ると、忍さんとリサが出迎えてくれる。


「お帰りなさい」


「リュウたちが遅いから先に始めちゃったわよ」


「ああ、いいよ」


 忍さんの始めるという言葉に首を傾げる。すでにお酒は始めていたから、それ以外に始めるというものが思いつかなかった。


 リビングに戻ると、さらに人数が増えている。ソファの隣には、誰も座っていない電子ピアノがセットされていた。そして、その傍でギターを持つのは、上原さん。


「音楽関係の方が本当に多いですね」


 上原さんにそう話しかけると、目が少し見開かれたどこか驚いたような顔を向けられる。


「そうだね。そういえば、綾乃ちゃんは日本に住んでるの?」


「はい」


「りゅう、すけのこと知ってたの?」


「いえ、飛行機で偶然隣に」


「……知らなかったの?」


「はい」


 少し開いた間を不思議に思い、わたしは上原さんに視線を投げ返す。そのとき、後ろからわたしの肩に誰かの手が触れて、そちらを振り返れば意味ありげに笑う忍さんがいた。


「綾乃はリュウのことを怖い人だって思ったらしいわよ」


 わざとらしく大きな声でそう口にする忍さんの狙い通りだろう、少し遠くにいる龍介さんにまで聞こえたようで、彼がこちらを見た。


「それは俺もわかった。完全に怪しんでる目だったもん」


 龍介さんが唇を尖らせてそう言うと、周りにいるみんなが一斉に笑う。「仕方ない」とか、「わかる」というわたしに対する同意の言葉がかけられる中、龍介さんが上原さんの傍に歩み寄り、「大丈夫だから」と、小さく告げた声が聞こえた。



「——ねぇ、アヤノ。わたしもアヤノみたいな髪にしたい」



 その声の方向に顔を向ければ、ワンピースの裾を掴んだリサがわたしを見上げている。もう一度、龍介さんと上原さんを見たけれど、もう既に普通に話して笑っているようだった。


「同じにする?」


「うん!」


 リサに手を引かれて歩き、一緒にソファに座る。リサの長いサラサラした髪に指を通せば、子供の髪の細さと柔らかさを感じて不思議な気持ちになった。


 リサは今、十歳。もしわたしが十代で子供を産んでいたら、リサの歳になっている可能性ももちろんある。子どもが産まれたら、きっとこうして髪を結んであげることになるのだろう。母がわたしにそうしてくれたように。


 そんなことに思いを馳せながらリサの髪を編みこんでいると、すぐ近くで上原さんが弾くギターの音と、龍介さんが触れている電子ピアノの音が聞こえてきた。


「龍介さん、ピアノ弾くって言ってたけど、本当に上手なのね」


「リュウはギターもピアノも上手よ。アーティストなんだから」


「アーティスト?」


「歌がとっても上手いの」


「そうなの? アスリートかと思った」


「ええ? あんなアスリートいないわ」


「あ、リサ何気にひどーい」

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