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6話 夕陽に溶けていく 2

 卓也との話を人にするときは、いつも呆れられることを前提に話している。まともな恋愛経験のある人から見れば、自分たちの関係はあまりにも奇妙で、理解しがたいものなのだろう。


 別れてから三年。きちんと付き合うわけでもなく、かと言ってきっぱりと離れるわけでもなく、白黒をつけないまま、ただ惰性で一緒に過ごしている関係。そんな関係を、人が不思議に思うのは当たり前。


「笑ってる場合じゃないわよ、綾乃。あなた、その人のこと好きなの?」


「きっともうそんな感情じゃないんですよね……」


「それでいいの? 素敵な出会いがいっぱいあるのに、腐れ縁が残ったままじゃ出会いに気付かなくなるわ」


「まあ、忍。綾乃だって色々あるんだよ。でも僕も新しい出会いには賛成だな。ところで龍介はどうなの?」


「そうよ! リュウがいるじゃない。こんな素敵な出会い、そうはないわ」


「でも龍介さんとは出会ったばかりで」


 そう、出会ったばかりなのだ。それなのに、龍介さんのこの優しさは、ある意味で異常だと思う。初めて会った人間の世話を焼いて、心配だからと自分のところに呼んで、ご飯を食べさせる。


「龍介さんってお人好しですよね」


「お人好し。確かにね」


「優しいにも程があります」


「ふふ、そうね。でも、それがリュウだから」


 お人好しで優しいのが龍介さん。そう言って忍さんが笑う。


 龍介さんは、あまりにも無防備だ。わたしのような人間が、その優しさを利用するかもしれないとは考えないのだろうか。何も求めず、ただ与えてくれる。その眩しさに、少し目が眩む。勝手に龍介さんを心配していたら、「ところで、綾乃はどこに泊まるの?」と忍さんが顔を覗き込んできた。


「えっと、ここと同じようなところです。貸し別荘、レンタルハウスで……」


 龍介さんに見せたものと同じ紙を二人にも見せて、オーナーが男性だったことを話すと、二人は顔を見合わせて、首を横に振る仕草を見せた。


「綾乃、あなた女性なのよ? 一人きりでここに泊まるのは、やめなさい。日本でも一人でこういうところには泊まらないでしょう?」


「……そう、なんですけど」


「うちに泊まってもいいし、それに龍介のところだって空いてるんじゃない?」


 いつの間にか戻ってきていた龍介さんが話を聞いていたようで、潤さんの言葉に「そうだよ」と続けた。


「一部屋余ってるから、綾乃ちゃんさえ良ければ」


 リサにするのと同じように、わたしの頭に手を置いて笑う。違うのは、その後にわたしの頬を撫でないこと。その手がそのまま離れていくのを、目で追いかける。


「あら。リュウ、部屋余ってるの?」


「そう、余ってる」


「ほら綾乃、一人で泊まるなんてやめて、ここに泊まりなさいよ」


「でも……」


「リュウ、明後日にはスタッフも来るんでしょ?」


「ああ」


「ならいいじゃない。一人で何かあってからじゃ遅いのよ」


 曖昧な言葉を返すわたしに業を煮やしたのか、忍さんが肩を組んで顔を寄せてきた。


「綾乃、ちゃんとしたボーイフレンドいないんでしょ?」


「……いませんけど」


「じゃあ、ちょうどいいじゃない。リュウみたいなイイ男は中々いないわよ。二人で過ごして何かあったらそれが一番よ。お互い大人なんだから、イイ関係になればいいのよ」


 あっけらかんと言い放つ忍さんの口を必死で塞ぐ。

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