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5話 懐かしい食卓 2

 窓から降り注ぐハワイの日差しのせいか、彼といるこの空間が微かに光を纏っている気がして、彼の黒目がちな瞳が柔らかく細められる度に全てが脳裏に焼き付く気がして、慌てて視線を下に向けた。


「きょ、今日は何人くらいの方がいらっしゃるんですか?」


 無理矢理話し出したわたし。けれど、龍介さんはわたしの不自然さを気に留めることもなく、「んー」と言いながら天井に視線を向けた。


「今日は友達夫婦と、その子供だけだよ。本当に軽い食事会。明後日は仲間十人くらいでバーベキューするから、もう少し賑やかになるよ。あー、いや……もっと来るかなぁ」


「仲間?」


「仕事のね。トレーナーとか……」


 トレーナーと知り合う職種は一体なんだろう。アスリートにはどうしても見えない風貌に、自然と首をひねってしまう。金髪、タトゥー、髭にピアス。小麦色、筋肉……日本人のアスリートでこんな出で立ちが許されるスポーツなんてあっただろうか。


 わたしの貧困な想像力では、「海外を拠点にするプロサッカー選手」か「やんちゃな格闘家」くらいしか思いつかない。最近は格好いい選手が多いと聞くこともある。確かに龍介さんみたいな人だったら、人気が出るのもわかる気がする。



 ◇



 食事の準備をしている間に、微かに車のエンジン音が聞こえてきたと思ったら、それは家の前で止まった。龍介さんが迎えに行くと同時に、玄関先からは賑やかな声が聞こえてくる。龍介さんのことをみんなが親しげに「リュウ」と呼ぶ。


 玄関から戻ってきた龍介さんの脇には、綺麗に日焼けをした髪の長い小さな女の子の姿。「こんにちは」と、頭を下げるけれど、彼女は目を見開いたまま、微動だにしない。


「……リュウの恋人?」


 龍介さんの洋服の裾を掴んで、きょとんとした顔で尋ねる女の子に慌てて首を横に振る。


「あ、いや」


 違うと口にしようとしたところで、彼らの後ろから「どこよ」という女性の大きな声が被さってきて、わたしの声はかき消された。続いて「彼女を連れてきたの?」と男性の穏やかな声が聞こえてくる。


「彼女? 彼女なの!?」


「日本人? あれ、韓国の方かな?」


 大きな足音とともに、夫婦と思われる男女が現れて、矢継ぎ早にわたしに質問を投げかける。


「モデル? 女優?」


「いつからなの?」


「あ、あのっ」


「あ、日本人だわ。仕事つながり?」


 そのどれにも答えられずに困惑しているわたしを見て、龍介さんが体を揺らして笑う。


「違うよ」


 そう言ってわたしに歩み寄り、飛行機で一緒だったこと、スーパーマーケットで偶然再会したことを説明した。


「綾乃ちゃんです」


 目の前の男女がその説明を聞き、顔を見合わせている。


「龍介さんに助けて頂いたんです」


 そうわたしが付け加えれば、わたしと龍介さんを交互に見て、再び二人は顔を見合わせた。そして、女性が何度か深く頷きわたしの前に一歩踏み出す。

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