4話 招待状 2
龍介さんは、わたしの抗議を聞きながら、大きなカートを押してゆっくりと歩き始めた。スーパーの明るい照明の下で、カートの車輪が静かな音を立てる。カートの中に、材料が少しずつ増えていくのと比例して、龍介さんが自分のことを話してくれる。
毎年ハワイに来ること、必ず友達夫婦の家族と食事会をすること、その友達夫婦の子供を可愛がっていること。少しずつ知っていく龍介さんの姿。
話している間にも、次々に新しい彼が見えてくる。ただ買い物をしているだけなのに、彼はとても楽しそうに笑う。色々な商品を見つけては、物珍しそうに手に取って興味深げに観察しているその姿はまるで子供みたい。
「うわ、見てこれ。青いケーキ。すげえ色」
彼が目を輝かせて指さしたのは、日本ではまず見かけない、目の覚めるようなロイヤルブルーのデコレーションケーキ。
「こんなの日本で食ってたら、絶対に怒られるな」
そう言いながらも、彼は楽しそうにカートへ放り込む。
「……食べるんですか?」
「うん。せっかくのハワイだし、少しくらい羽目外してもいいでしょ?」
悪戯っぽく笑う姿は、本当にただの少年のようだ。
「龍介さんってすごく楽しそうにお買い物しますね。目がキラキラ」
わたしの言葉を聞いて、彼は照れ臭そうに笑った。
「なんか楽しくてはしゃいじゃうんだよね。日本ではこんな風にできないから。あ、あれ見ていい?」
そして、また嬉しそうに進んでいく。
「へえ、こんなのあるんだ! へえ!」
珍しそうに、飽きることなく熱心に見つめる。驚きと発見の声を上げながら、あちらこちらへ歩く彼は、初めて見た時の印象とは大違い。
明らかに普通ではないと危険を感じたはずなのに、今は子供みたいに目を輝かせる彼が目の前にいる。あの時は、身に纏う空気が一般人とはかけ離れていて、一目で「普通ではない」と察し、本能的に危険を感じたはずなのに。今はどうだろう。目の前にいるのは、ただただ目の前の光景に夢中になり、子供みたいに目を輝かせる、一人の男性。
彼の無防備な笑顔は、周囲の警戒心さえも溶かしてしまうような、不思議な魅力に満ちている。彼を見ていると、自然と彼の笑顔がうつって、こちらまで口元が緩んでしまう。




