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36話 ヒーロー 5

 その様子を、モニターで見守っていた兄が静かに頷き、小さく呟いた。


「綾乃、いい人と出会ったな」


「うん」


「……『いつか、俺よりもカッコいい王子様が綾乃のことを迎えに来るよ』」


「え?」


「兄ちゃんが言った通りだっただろ?」


 兄の言葉が蘇る。


 ——「強くて優しい王子様だよ。それまでは兄ちゃんが守るから」


 テレビの中の彼は、黒いスーツにサングラス。まるで悪役みたいだけど、誰よりも優しくて、誰よりも強い。本当に、ライダーみたいだ。ヒーローみたいな王子様。


「……うん。お兄ちゃんの言う通りだった」


 肩に置かれた兄の手を握りながら、わたしは画面の中の彼を見つめた。


「ありがとう、龍介さん……」


 わたしを守ってくれる、格好よくて強い王子様。全てを諦めかけていたわたしに、光がある場所を教えてくれた人。「幸せがあるよ」と、「幸せになろうよ」と手をとってくれた人に。


 龍介さんはゆっくりとサングラスを取って、テーブルに置くと、立ち上がった。わたしがいつも見てきた龍介さんの姿がそこにあった。優しくて力強い瞳が真っ直ぐ前を見据える。


『僕は……僕たちは、夢や愛、幸せをテーマに、それらを皆さんに伝えたくて活動しています。だから、自分自身も夢と希望を胸に、たった一人の愛する女性と幸せになろうと思います。これからも、Legacyとして、LegacyのRYUとして精進してまいりますので、どうかよろしくお願いいたします』


 そう締めくくって、龍介さんは深く、深く頭を下げた。


「綾乃」


 昔と同じ、優しく穏やかな声が耳に届く。


検見川(けみがわ)の浜に戻りな。前に付き合っていた人には、ちゃんとお別れを言っておいで。兄ちゃん、もう大丈夫だから。自分のためにも、綾乃のためにも頑張るから。幸せになるんだぞ」


「うん」


 王子様。本当にあなたは、わたしの王子様。苦しい時も、悲しい時も必ずわたしを助けてくれる。そして幸せのその先に連れて行ってくれる。


 わたしは、シンデレラみたいに夢を持ち続けていたわけじゃない。信じ続けていたわけじゃない。でも、あなたが綺麗だと言ってくれるなら、綺麗になってみせる。あなたが笑うから、わたしは差し出された手を取って、前を見る。


 少しずつでもいい。小さな一歩でもいい。わたしは、あなたと幸せになるための道を進む。もう迷わない。

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