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33話 恋歌 3


 目の前のサブステージの先端に、ピアノと共に龍介さんが登場する。ハワイで見た龍介さんの姿がよみがえる。彼は一曲披露すると、近くに置いていたペットボトルの水を口にして小さく息を吐く。


「今年もオフを使ってハワイに行ってきました。そこでいつもどおり仲間と……優斗や徹たちと一緒に過ごしまして」


 彼が語るハワイでの思い出話に、笑い声や歓声が起こる。仲間と一緒にゆったりとした時間を過ごしたこと、バーベキューをしたこと、ピアノやギターを弾いていたこと、買い物に出かけたこと、みんなでお酒を飲んで酔っ払ったこと。


 彼の優しい声で語られる思い出は、ただただ美しく温かい。


「中々思うように歌えなかったり、曲を作れなかったりして行き詰っていたのですが、今回のハワイでの出会いは僕に光を与えてくれました。幸せだなと思うことが本当にたくさんあって、本当に素敵な尊い時間で……そして、ハワイで一つ、曲を作ったので、それを皆さんに聞いて頂きたいと思います」


 先ほどよりも更に大きな歓声が起こり、彼が微笑む姿が大きなスクリーンに映し出される。


「それでは、聴いてください」


 ピアノを弾くために前かがみになった彼の胸元で、キラリと光るものが見えた。スクリーンに大写しになったその二連の輝きに、息を呑む。小さな指輪のついた、あのネックレス。


 わたしが守りきれなかった証を、彼はまだ身につけてくれている。溢れ出した涙でスクリーンが滲んでいく。


「My Cinderella Girl」


 あの時と同じ言葉で、彼がゆっくりとピアノを奏で始める。ハワイで何度も聴いた曲は、あの日々が現実のものだと言ってくれているような気がする。


◇◇◇◇◇


『いつもどおりの毎日になるはずだった 君と出会って全てが変わる

 青い海 吹き抜ける風 輝く太陽 すべての時間が瞬いていく

 濡れて光る睫毛が伏せられる度 高鳴りを増していく僕の胸


 波の音が気持ちを加速させる

 きっとこんなにも 君の笑顔が眩しいのは太陽のせい

 言い訳しながら 惹かれていく


 出会いは突然に 必然に 二人を引き寄せる

 幸せがここにあると教えてくれた君にただ伝えたい ありがとう


 君が戸惑わないように 困らないように 僕は少しずつ手を伸ばす

 それでもこの腕の中に引き寄せたい衝動に駆られるから

 その瞳で僕を見つめないで


 夕日が落ちる海を見て君が呟く 「綺麗」 潤んだ瞳が光る

 砂浜と 瞬く星に 二人照らす月


 静かに並ぶ僕たちの肩 穏やかな光の下で君に触れる度

 幸せと切なさを感じてる


 偶然じゃない運命と呼びたい

 きっとそう思うのは 僕の隣で無邪気に笑う君のせい

 君がいるから 僕は歌う


 出会いは突然に 必然に 二人を引き寄せる

 幸せがここにあると教えてくれた君に ただ伝えたい ありがとう

 隣で眠る温もりを この白い肌を ただ抱き締めていたいから

 瞬くように輝く恋をいつか散っていくものだと人は言うから

 どうか守れる強さを僕に


 君が消えた日から 心が苦しいと叫ぶから

 僕はまだ目印を探し続けている ただ会いたい 抱き締めたい


 出会いは突然に 必然に 二人を引き寄せる

 幸せがここにあると教えてくれた君にただ伝えたい ありがとう


 出会いは突然に 必然に 二人を引き寄せる

 幸せがここにあると教えてくれた君に ただ伝えたい

 愛してる 愛してる』


◇◇◇◇◇


 書き換えられた歌詞。掠れる歌声。すべてが真っ直ぐ届くのは、それが龍介さんだから。何度も囁かれた言葉が頭の中で響く。


「……綾乃さん?」


「……ごめっ……」


 ——龍介さん、わたし、あなたを忘れることなんて一生できない。

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