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32話 クリスマスの色 2

 小百合さんは、何度も「信じる」と口にする。わたしの頭の中では理解できないまま。でも、小百合さんの言葉は続いている。


「相手が自分を受け止めてくれる、そう信じることも大切なのよ。一人で背負うことが正しくないときもあるのよね。一人で背負うことが自分にとっては正しい道でも、本当は二人で乗り越えていかなきゃいけない時がある。友達同士だってそういう時があるわ。恋人同士、夫婦、家族、みんなで手を取り合って、乗り越える時があるのよ」


「で、も……」


 小百合さんの言葉が、胸に突き刺さる。わたしは彼を守るために、彼を傷つけた。それは本当に「愛」だったのだろうか、揺らぐ心に、小百合さんの温かい手が触れた。


「ハワイで出会った人と一緒にいるなら、あなたは今、そんなお顔していないわ。大切な人に伝えたの? その人は今のあなたを見たらなんて言うかしら? どんなお顔をするかしら?」


「わたしを……」


「現に、あなたを大切に思う栞ちゃんが、あなたの隣で泣いているわ」


「——っ」


 小百合さんの言葉が落ちてくると同時に、顔をそちらに向ける。そこにいたのは、わたしの背中を擦りながら、その大きな瞳から涙をこぼす栞ちゃんの姿。


「あなたの大切な妹でしょう。どうするの、お姉ちゃん」


 唇が勝手に震える。目の前が滲む。名前を呼ぼうとしたのに、声が喉の奥で詰まって、音にならない。


「っ……うっ」


 背中に添えられていた手を取り、涙を流す彼女を胸の中に抱き締める。大切な人を、大切にするのはとても難しい。なにが正解かなんて、二十八年間生きてもまだわからない。それでも、今、目の前にいる……ううん、ここにいてくれる彼女を抱きしめたかった。


「ごめんね……ごめんなさい」


 腕の中で、小さく首を横に振る彼女。


 連絡がとれない、わたしのことをどれだけ心配しただろう。そして、取り繕った顔しかできないわたしを見て、どれだけ心を痛めただろう。もしも、栞ちゃんが今のわたしと同じ状態になったら、わたしの心は壊れてしまいそうなほどに苦しむだろう。


 わたしは、いつだって自分の気持ちばかりを見て、本当に相手のことを考えるということが、できていない。


「……ごめん」


「あや、のさっ……顔、ぐちゃぐちゃ、ですっうう」


「しおり、ちゃんこそっ」


 涙と鼻水でぐしゃぐしゃになったお互いの顔を見て、笑い出すわたしたち。そして、同じく涙を浮かべた小百合さんが、わたしの頬を撫でた。


「ほら、素直に笑ったり泣いたりするあなたの方が、ずっと魅力的」

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