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第8話 VSオーガ


 この世界には『冒険者』という職業があり、冒険者達は実力によってS~Gでランク付けされている。

 一方で、魔物はその脅威度によってS~Gでランク付けされていて、冒険者は自ランクより上の魔物には勝てないとされている。


 そのため冒険者ギルドで討伐依頼を受ける際には、自ランク以下の魔物討伐依頼しか受けられないようになっている。

 依頼失敗によるギルドの信用低下を防ぐためである。


 ちなみに、このランク制度は、約600年前に突如現れた初代勇者が作ったとされ、ほかにも【鑑定】を応用してステータスカードを作った人物でもある。


 当初、ランクはAが上限だった。

 しかし200年後にAランク冒険者でも勝てない魔物が現れ、その魔物とそれに勝った冒険者をそれぞれSランクとした。


 その時にSランクになったのが二代目勇者であり、Aの上をSと決めたのもこの人だ。


────────────────────

   S A B C D E F G

   強             弱

────────────────────


 例えば、

 ゴブリンは単体だとF、群れだとE以上。

 ホブゴブリンは単体でE。

 オーガは単体でC。



 ◇



 (じん)とオーガの戦いの火蓋が切られた。


 彼らの戦いはさっきよりも激しさを増している。


 通常のオーガはスキルで武器を創って戦うのだが、このオーガに限っては素手での戦闘に拘っている。


 進化する前、ホブゴブリンの時もそうだったが・・・。


 オーガは、本来とは違う戦い方をしているのに戦いの中で成長し、どんどん強くなっていった。


 そして両者はいつの間にかお互いを好敵手として認め合っていた。


 オーガの打撃は強烈で、進化前より一撃が鋭く重い。

 ガードしても意味はなく、仁の左腕の骨は折れてしまった。


 激しい痛みに襲われたが、かなりの興奮状態でアドレナリンがドパドパ出ているので戦闘を続行する。

 スキル:【自己治癒】を使えば怪我が治ることを、仁はなんとなく分かっていた。


 分かってはいるが、オーガはスキルを使わずに己の力だけで戦っている。

 自分だけスキルを使うのはズルだと思っていた。


 だからこそ悔しかった。


 スキル:【精力変換】は自動発動し続けて解除すらできないからだ。


 自分が1番分かっていた。

 格闘経験のない奴が、こんなに強い相手と互角に戦えるのはありえない。


 そもそも、5歳児のキックで魔物が瀕死になるだろうか?


 どれだけ戦っても疲れないし、子供とは思えないほどに脚力が強い。

 前世では全く集中力がなかったが、今の仁は集中しすぎてオーガ以外が見えていない。

 心無しか視力も上がっている気がする。


 そう・・・。


 要因はスキル:【精力変換】だ。


 どうやら仁の中に眠る無尽蔵の精力が、動きに合わせて別の力に変換されているようだ。


 さらに、近くには5人の美女がいる。

 そのおかげでドバドバと(みなぎ)る精力は、仁のバフとなっていた。



 スキルのことをズルだと思ってるくせに、無意識のうちにずっとスキル(ズル)を続けている。


 仁はそれが悔しくてたまらなかった。



 ◇

 


「ウソ・・・オーガと互角だなんて・・・」

「何者なんだ!?」

「しかも魔法も武器も使わずに・・・」

「信じられません・・・」


 異常に高い戦闘力を持つ仁に、マリルネ達は唖然としていた。


「仁くん・・・あなたは一体・・・」


 テレスは、Cランクのオーガと互角に渡り合っている仁を見て驚きが隠せない。


 彼女達は副業で冒険者をやっており、5人でパーティーを組んでいる。

 パーティーのランクはBで、ソロでは全員がCランク以上だ。


 そんな彼女達でも、ソロでオーガと戦うのは苦戦する。


 オーガは知能の低い魔物だが、拳で木をへし折る程のパワーで武器を振り回す。

 スキルを持つ個体も確認されており、過去には剣術スキルを持つ剣使いのオーガが1つの街を壊滅させたことがある。


 そんな魔物を相手に、たった5歳の少年が互角に渡り合うこの光景は異常でしかなかった。


 だからといって、5人が手を出せるような戦いでもない。

 彼女達は指をくわえて見ていることしかできなかった。



 両者の戦いは終盤に差し掛かっていた。

 互いに決定打を与えられないまま、ただただ時間だけが過ぎていく。

 

「ちょっとヤバくないか?」

「さすがに疲れてきてますね」

「体格差がありすぎてジンくんの足が全然届いていません!」

「確かに。あの足の短さだとオーガの顎や腹部には届かないわね」

「仁くん・・・」


 彼女達の言っていることは正しかった。


 オーガの打撃は重い。

 単調な攻撃ではあるが、一撃でも受ければ骨が砕ける。


 近くに美女が5人いるとはいえ、仁の精力にも限りがあった。

 体力は限界に近づき、左腕が痛んで全身に力が入らなくなる。


 それほどまでにオーガは強かった。


 しかし、彼はオーガの攻撃を上手くいなしながら隙をついて攻撃していた。


 蹴ると思わせて殴り、殴ると思わせて蹴る。


 単純なフェイントだが、脳筋オーガには効果的だった。


 さらに、左腕が使えなくともプロレス技を応用した攻撃や、変則的かつ独特なリズムで動くことで、オーガはペースを乱されていた。


 そして、仁はオーガの膝に狙いを絞る。


 体格差がありすぎるせいで、彼の蹴りはオーガの腹にも届かない。

 しかし、膝であれば届く。


 膝への攻撃を徹底している仁は、少しずつだが確実にオーガを追い込んだ。

 

 オーガはタフで打たれ強い。

 自分でも分かっているだろう。

 だからこそわざわざ防御しない。


 いくらタフであっても、攻撃が効かないわけではないのだ。


 膝へのダメージが蓄積したことで、遂にオーガは膝から崩れ落ちた。


 膝に力が入らないので、立つことすらできない。


 オーガが前屈みになり、ようやく仁とオーガの体格差が縮まった。

 仁は『ラウンドハウスキック』でオーガの後頭部を蹴る。


 『ラウンドハウスキック』とは、『延髄斬り』とも呼ばれ、前屈みになった相手の後頭部を蹴る技だ。

 その場でジャンプして蹴ったり、片足を相手の腹部に乗せて蹴ったりする。

 ちなみに、仁はその場でジャンプして蹴っていた。


 仁の『ラウンドハウスキック』を受け、さすがのオーガも意識が飛んでしまい、そのまま前に倒れ込んだ。


 しかし、仁は倒れることを許さない。


 仁はツノを掴んで無理矢理起こし、オーガに話しかける。

 表情を見るとオーガは満足そうで、少し笑っているようにも見えた。

 オーガの生涯に一片の悔いも無いだろう。


「またいつでもかかってこい。リスペクトを込めて、今さっき考えたオリジナル技を見せてやる。・・・『オール・アイ・ニー』」


 仁の右膝が白く光り始めた。

 仁は両手で2本のツノを掴み、光っている右膝でオーガの顔面を全力で蹴り抜いた。


 オーガは白目をむきながら後ろに倒れ込み、ようやく地面に背中が付いた。



 仁はオーガに真っ向勝負を挑み、圧倒的な強さで勝利した。


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