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第3話 もう1人の転生者

更新頻度が遅くて申し訳ないです!


 森の中は薄暗かった。

 草木が鬱蒼と生い茂っていて、なんだか不気味な雰囲気だ。


 オレンジ色の小鳥。

 薄紅色のキノコ。

 深海魚のようにブサイクな謎の生き物。


「さすが外国だな〜。初めて見るものばっかりだ」


 見るもの全てが気持ち悪い。

 でも(じん)は少し興奮していた。

 なんだか冒険しているみたいだから。


 そんな時、前方に人影が見えた。

 仁が近付いていくと緑色の子供が3人いるのが分かった。

 仁をじっと見ている。


 上半身は裸、下半身には腰布を巻いており、靴も履いていない。

 小柄で痩せこけていて、見えている肌は全て緑色をしている。

 目付きは悪いし歯はギザギザだ。

 手には棍棒のようなものを持っている。

 ファンタジーの定番、ゴブリンだ。

 だが、仁はそんなことは知らない。


「おぉ〜!!原住民の方かな?」


 仁は、森の中に馴染むために全身を緑色に染めているのだろうと考えていた。


(間違いない!自衛隊の皆さんもそんな感じの理由で迷彩服を着ているらしいし・・・)


(でもあいつら子供だし、この森に住む本物の原住民なのか?)


 今度こそ英語が通じると信じて、まずは挨拶から始める。


「ハロ〜、エ〜〜ブリワ〜ン!マイネ〜厶イズ、ジン・ミツイ〜シ〜」


 仁の変な英語を聞き終える前に、3人の子供達ゴブリンが襲いかかってきた。


「グギャギャギャギャ!!!」


 何を言っているのかは分からない。

 仁は子供の表情を見て、敵だと思われていることを悟った。


「まぁ、今の俺は子供だし・・・」


 仁は、異世界での初戦闘に臨んだ。



 ◇


 

 まず、先頭を走るゴブリンが手に持った棍棒で殴りかかってくる。


「オイオイ、まじで喧嘩売ってんのか・・・」


 仁は、先に殴りかかってきたゴブリンの顎を狙って『トラース・キック』を放つ。

 これは昔、仁がよく見ていたプロレス技だ。


 


 仁はプロレスが大好きだった。

 テレビで同じ試合を何度も観たり、プロレス技の練習もしていた。

 プロレス少年ならば、誰もが『ムーンサルトプレス』の練習をするだろう。

 怪我を恐れて断念してしまったが・・・。

 

 プロレス少年であることは、生まれ変わっても変わらない。

 実は、今でもプロレス技の練習や身体作りをしていた。

 まだ筋トレはしていないが、柔軟運動や体幹トレーニングには取り組んでいたのだ。


 本当は仁のような一般人がプロレス技を真似してはいけない。

 そのため今までは自制していたが、〝命の軽さ〟を知ってしまった仁にはもう関係のないことだ。

 

 だからこそ、棍棒を持って殴りかかってくる子供ゴブリンを蹴り飛ばすことに躊躇はしない。

 

 ちなみに『トラース・キック』とは、後ろ向き、もしくは横向き状態で片足を真っ直ぐ高く伸ばし、相手の顎辺りを突き刺すように蹴り上げるという蹴り技である。




 蹴られたゴブリンは白目を向きながら倒れた。

 仁自身、そんなに強く蹴ったつもりはないがイイ感じに決まったのだろう。


 そして、それを見ていた2体目のゴブリンが一瞬だけ動揺する。

 仁はその隙を逃さない。


 仁はゴブリンの体をしっかりと抑えて、土手っ腹を『ニー・バット』で蹴り飛ばす。



 『ニー・バット』とは、片膝を突き出して、その膝で相手の顔面や腹を蹴り飛ばす技である。



 蹴られたゴブリンは苦しそうにうずくまって嘔吐した。

 

「汚いな〜〜」


 3体目は馬鹿だ。

 最初の2体が一撃で倒れてしまったのにまだ向かってくる。


 実力差が分からないのか、仲間が負けて悔しいのか・・・。


 そんな馬鹿にも分かるように、今度は思いっきり『トラース・キック』で蹴り飛ばした。


 そして仁の踵は、ゴブリンの喉元にめり込んだ。

 変な音がしたので、たぶん首の骨が折れてしまっただろう。


 仁は3体のゴブリンをあっさりと倒した。


 そして、死体となってしまった子供達(ゴブリン達)を茂みの中に綺麗に並べる。


「お前らブサイクだし、次の人生ではイケメンになれるといいなぁ。そして次こそは長生きしろよ!」


 仁は目を閉じて、手を合わせた。

 そして、来世では幸せになれるように願った。



 ◇



 森に入ってから3時間が経った。

 仁はさっきの子供達(ゴブリン達)を倒してからずっと走っていた。


(何年も屋敷の中に引きこもってたから体力落ちてると思ったんだが・・・)


 仁はあることに気付いた。


(全っ然、疲れない!なんでだ?)


 3時間近く走っているにも関わらず、仁は全く疲れていなかった。


 前世では、勉強がかなり苦手だったが、運動はそれなりに得意だった。

 特に持久走では好タイムを残しており、陸上部の長距離走者と良い勝負ができていた。

 仁が勝ったことはないが、帰宅部でありながら陸上部と張り合っていたので、陸上部にスカウトされたこともある。


 しかし、それはあくまで前世の話だ。

 今の仁はまだ4歳。

 4歳の子供が、森の中を3時間近く走り続けることは不可能のはず。


(生まれ変わっても、記憶や体力は引き継がれるってことかな〜?顔は引き継がれなくて良かったぜ)


 都合良く解釈していた仁だったが、そうこうしているうちに森の出口が見えてきた。



 森を抜けた先には、草原が広がっていた。

 草原に吹く爽やかな風が心地良い。

 

 草原の奥に街の門が見えた。


 そこで仁は走るのをやめて、呼吸を落ち着かせながら門まで歩くことにした。



 ◇



 人通りが少ないので、あまり待たずに街へ入れるようだ。


 門番は街へ入ろうとする人達をチェックしているが、なんだかテキトーだ。


 仁が生まれ育った街の門番のチェックは厳しかったが、この街のチェックは緩い。

 今考えると、仁が街を脱出できたのは奇跡かもしれない。


 門の通行人はお金を払ってから通っている。

 街の通行料だ。

 しかし、子供は素通りしていたので無料で通れるのだろう。


 仁は堂々と街へ入った。



 この街は、さっきの街とは違って人混みがなく長閑な場所だ。


 色とりどりの花がたくさん咲いていて、甘い香りがする。

 メルヘンチックな街並みで、建物はヨーロッパ風だ。


「ん〜〜、良い匂い!」

 

 街に入った仁は、美容品を製造・販売しているという〝ユーナ研究所〟を探す。


 街の人に聞き込みをしようと思っていたが、すぐ近くの和風建築に目を奪われた。

 この建物だけが和風だ。

 なんか目立つけど、浮いてはいない。

 

 その建物には看板があり、〝ユーナ〟と書いてある。

 どうやらここがユーナ研究所のようだ。

 

(和風建築だし、これは日本人が建てた可能性が高いなぁ)


 仁はドキドキしながら研究所に入った。


 木造なので、木の匂いがプンプン香る。

 なんとなく落ち着く匂いだ。


 戸を開けると、受付のお姉さんが目に入る。

 そのお姉さんは、美容品を取り扱っているだけあって美肌だ。

 ニコッと微笑むような営業スマイルが、とってもキュート!


 人生はお姉さんに、〝日本人〟について何か知っていることはないかと尋ねた。


 美肌お姉さんはかなり驚いていたが、すぐに営業フェイスに戻る。

 さすがだ。


「すぐに所長を呼んでまいります。こちらへどうぞ」


 そう言って、仁は奥の部屋へ通された。


 奥の部屋はレトロな和室だった。

 部屋には掛け軸が飾ってあり、富士山が描かれている。

 襖や畳も懐かしさを感じる。


 仁は椅子に腰掛けてくつろいだ。

 

「ふぅ〜〜!なんか落ち着くなぁ〜!」


 しばらくの間、仁がくつろいでいると部屋の外が騒がしくなった。


 そして1人の女性が入ってくる。


 黒髪で低めのお団子ヘア。

 上はネイビーの襟付きのシャツを着ていて、第一ボタンを開け、さらに袖をまくっている。

 下は黒のスキニーパンツだ。


 和室には似合わないファッションだが、色っぽくて素敵だ。

 

 女性は慌てていたのだろう。

 少し息切れしていて、髪型が少しだけ乱れている。

 だがそれもまた色っぽい。


 受付の美肌お姉さんも同じだが、美容品を販売しているだけあって肌が綺麗だ。

 顔も整っている。

 生まれ持った美形に慢心せず、スキンケアという名の努力を怠らなかった証だ。

 仁と同じだな。



 ◇


 

「あなた、もしかして日本人なの!?」


 部屋に入ってくるなり、すぐに尋ねてきた。


「はい、日本人です!名前は光石仁といいます。高校生でした。死んじゃったみたいで見た目は外国人ですけど・・・」


 大きく頷きながらそう答えると、女性は嬉しそうに話す。

 少し涙ぐんでいるようにも見えた。


「私は高下優奈(たかしたゆうな)よ。仁くんと同じ日本人で、化粧品メーカーで働いていたわ。トラックに撥ねられて死んじゃって、気付いたらこの世界に転生していたの」


「そうなんですね⋯⋯。俺はどうやって死んだのか分かりません」


 仁達はお互いの前世について教え合った。



 高下さんは亡くなったのは28歳の時だ。

 その時、仁は3歳。

 そして仁は18歳で死亡したが、その後に転生し、5年が経った。


「ということは・・・」


 仁は高下さんのトータル年齢を割り出そうとしたが・・・、


「足すな!!」


 仁の計算よりも先に、高下さんは強めにツッコんだ。

 ちょっとだけ睨まれちゃった。


(睨み顔、可愛いなぁ)

 

 2人はしばらく日本の話で盛り上がった。

 久しぶりに日本語で会話して、2人はなんだかホッとした気分だった。


1人目のヒロイン登場!

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