第13話 新たなる試練
ジンがレギア宅で居候を始めてから2ヶ月が経った。
この2ヶ月間、ジンは魔法を使った戦闘訓練に励んでいたが、そろそろ次のステップに移りたいと考えていた。
当初の目標だった「魔法習得」や「オリジナル技の完成」を達成し、一段落ついた。
さらに、グラナーダとの模擬戦だけじゃ物足りなくなってきたのだ。
更なる刺激を求めるジンを見て、レギアはある提案をした。
「ジンよ、迷宮に行ってみるか?」
「迷宮?」
ジンは、「迷宮」という言葉の響きに胸を躍らせる。
「迷宮とはな、何らかの理由で創られた〝魔物の巣窟〟じゃ。迷宮内は複雑な迷路となっており、罠まで仕掛けられている。死と隣り合わせの危険な場所じゃよ」
「へぇ〜。魔物かぁ。確かに危なそうな場所だけど面白そうだなぁ」
ジンがこれまでに会ったことのある魔物は全部で3種類。
ゴブリン、ホブゴブリン、オーガだ。
この世界には、まだまだたくさんの魔物が存在し、迷宮内にのみ生息している魔物もいる。
「あぁ、面白いぞ〜。迷宮内は資源が豊富じゃからなぁ!」
「・・・攻略!?ますます面白そうだ」
「ホッホッホッ!そう簡単に攻略はできんがな」
レギアは高らかに笑いながら続ける。
「迷宮は階層があって、その階層ごとにボスが存在しとる。通称、階層ボスを倒しながら先へ進み、最下層のボス・迷宮王を倒せば完全攻略となる」
レギアの話をまとめると次のとおりだ。
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・迷宮内は複雑な迷路となっており、そこでは魔物が生息し、罠が仕掛けてある。
・迷宮には階層があり、下層へ進むほど魔物や罠の危険度が高まる。
・階層ごとに階層ボスが存在し、階層ボスを倒さなければ下層へは進めない。
・最下層では、迷宮の主である迷宮王が待ち構えており、迷宮王を倒せば完全攻略となる。
・迷宮王や階層ボスを倒すと宝箱が開き、貴重なアイテムが手に入る。
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レギアの話を、ジンは目を輝かせながら聞いている。
「よし!明日は迷宮攻略だ!」
レギアの話によると、このライタスの森には大陸最難関といわれる地下迷宮があるらしい。
その名は〝オルイン迷宮〟だ。
オルイン迷宮は中規模でありながら高ランク魔物が跋扈しており、未踏破迷宮でもある。
そして、迷宮の近くにはエルフの里があり、迷宮に近付けば、エルフによる妨害を受けることになってしまう。
エルフとは、森人族とも呼ばれる亜人のことであり、妖精族と共に暮らしている。
耳が長く、容姿端麗。
寿命は数百年以上で、若々しい姿を保ち続ける種族だ。
さらに、魔力量が多く、魔法の扱いにも長けているので、強力な種族でもある。
しかし、それ故に他種族から狙われることも多く、非人道的な扱いを受けたという忌まわしき歴史がある。
そのため、他種族との交流を絶っており、エルフの里に近付く者を排除しようとする動きが見られるのだ。
つまり、オルイン迷宮に行くためにはエルフによる妨害を突破しなければならない。
迷宮の入口に辿り着くことすら容易ではないのだ。
さらに、迷宮内は26階層までしか踏破されておらず、それより下層は未知の領域だ。
最下層が何階層なのかも不明。
ちなみに、26階層までの踏破者は賢者レギアだ。
(ジンならば死ぬことはないじゃろうが、果たして何階層まで行けるかのぉ・・・)
(それに儂はまだ、ジンに何も教えていない)
レギアは、未だ師匠らしい指導ができていない。
ジンは全て自分で考えて行動していたからだ。
自分の弱点や課題を分析し、自分なりに修行してそれらを克服していった。
レギアは魔法の撃ち方など教えていない。
それなのに、魔法を撃つだけでなく、魔法を進化させた。
苦手なことから目を逸らさず、命懸けで努力を続けた。
ジンがどれほど強くなるのか、レギアは見てみたくなった。
だからこそ、危険な迷宮攻略を勧めた。
「ジンよ、この機会に修行の成果を試してみるとよい」
「はい!グラナーダも頑張ろうぜ!」
「オウ!」
ジン達は明日に向けて、迷宮攻略の準備を進めるのだった。
◇
少し肌寒く、まだ日も昇らぬ早朝にジン達はオルイン迷宮へ向けて出発した。
レギアのスキル:【収納】で荷物を詰め込み、ジンは手ぶらで歩く。
「便利だなぁそれ。俺にも使えたらいいのに」
「ホッホッホッ!それでは教えてやろう」
「えっ!?いいんですか!?」
「師匠でありながら、まだ何も教えとらんからのぉ」
そう言って、レギアはスキル:【収納】の取得方法を教えてくれた。
これから向かうオルイン迷宮の15階層の階層ボスを倒すと現れる宝箱に、スキル:【収納】を取得できる『スキルの秘伝書』が入っているらしい。
『スキルの秘伝書』とは、読むだけでスキルを取得できる超貴重なアイテムなのだ。
「今回は10階層踏破が目標だったんだが、15階層まで頑張るか!」
「ガーウ!!」
ジンがスキルを取得できれば、グラナーダもスキルを使用できる。
ちなみに、グラナーダに関して言えば、新たに適性属性が付いた。
適性属性は火属性。
これには、レギアも流石に驚いた。
後天的に適性属性が増える事例はこれまでにも確認されているが、魔物の適性属性が増えた事例は初めての事だった。
グラナーダが使える攻撃魔法は、手から火の球を発射する『火球』、口から火を噴射する『火炎放射』の2つ。
魔力量的に連発は不可能だが、どちらもかなり強力な攻撃魔法だ。
レギアを先頭に、ジン、グラナーダの順で続いていたが、レギアが急に足を止める。
「ここから先は妖精族の領域じゃ。エルフ達もおるから、用心しなさい」
ジンとグラナーダは頷き、妖精族の領域に足を踏み入れるのだった。
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《名前》 ジン
《種族》 人間族
《性別》 男
《年齢》 5
《職業》 ─
《称号》 『性欲の塊』『超越者』『賢者の弟子』
《加護》 ─
《属性》 光
《体力》 10290/10290
《魔力》 10087/10087
《獣力》 2/2
《能力》 【清掃:A】【精力変換:S】【自己治癒:A】【不殺生戒:S】【威圧:C】【体術:A】【絆創術:D】【光属性魔法:D】【調理:G】【物理耐性:C】【根性:C】
《状態》 「健康」「絆創術:グラナーダ」
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《名前》 グラナーダ
《種族》 大鬼族
《性別》 オス
《年齢》 15
《職業》 ─
《称号》 『復讐者』『孤高の鬼』『戦闘狂』
《加護》 鬼神
《属性》 火
《体力》 3035/3035
《魔力》 1850/1850
《獣力》 2016/2016
《能力》 【投擲:B】【威圧:C】【武器生成:C】【棒術:C】【剣術:D】【体術:D】【物理耐性:C】【根性:C】【火属性魔法:F】
《状態》 「健康」「絆創術:ジン」
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