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第0話 プロロロロロロローグ

プロロロロロロローグです


 何も無い、ただただ真っ白な空間。


 ここは神々の住まう〝神界〟と呼ばれる場所だ。

 そして、神々は世界を見守っている。



 そこで、2人の女性がなにやら話をしている。


 1人は金髪で薄紅(うすべに)色の瞳を持つ女性。

 もう1人は銀髪で浅葱(あさぎ)色の瞳を持つ女性。


 どちらの女性も純白の衣装を身に纏っており、まるで(あま)羽衣(はごろも)のようだ。


 2人の胸元は大きく開き、真っ白な肌を覗かせており、色気と神々しさを醸し出している。



 金髪の女性が手をかざし、空中に大きなモニターを創り出した。

 青い星を映し出した。

 そして銀髪の女性に見せながら話した。


「私が管理している地球は、緑豊かな美しい星であり、多くの生命が共存しています。多くの美しい生命たちは、長い時間をかけて進化し、素晴らしい文明を築きあげてきました」


 そして悲しげな表情で更に続けた。


「しかし、その美しい地球に()()()()()()が誕生してしまいました」


「エリシス、()()()()()()とはどういう意味なのですか?」


 話を聞いていた銀髪の女性が不思議そうに地球を見つめながら尋ねた。


「私には人類が互いに手を取り合い、支え合いながら生活しているように思えます」


 エリシスと呼ばれた金髪の女性はモニターを拡大し、1人の男を映し出した。


「この間抜け面をした男を見てください。この男の名前は光石仁(みついしじん)、年齢は18歳です」


「彼の間抜け面はさておき、彼のどこに穢れがある・・・ん?え!?」


 しかし、男を見てすぐにその違和感に気付いた。


「何なのですか!?この精力量は・・・」


 まるで汚物を見るかのような目だった。


「アリシアも気付いたようですね。幸いなことにまだ犠牲者は出ておりませんが、この男の膨大過ぎる精力は極めて危険です。本人に自覚はありませんが既に限界でしょう」


 エリシスは溜め息をつきながら話を続ける。


「このままでは、この男は性欲に支配され、多くの女性を傷付けます。美しい地球が、美しい女性が、穢らわしいこの男の精力によって犯されて滅びるでしょう。この世界に存在してはいけません」


 エリシスはモニターの中の男を睨みつけた。


「私達は神です。たとえ世界の為であったとしても生命を殺めることはできません。〝あのようなこと〟もありましたから・・・。そこでアリシアにお願いがあります」


 エリシスが発した〝あのようなこと〟という言葉に重々しい雰囲気が漂ったが、2人は話を続けた。


「・・・お願い?何でしょうか?」

「彼をアリシアの世界、〝セルリアン〟へ送っても宜しいですか?」

「・・・ん?もしかして、私の世界を滅ぼすおつもりですか?」

「いいえ。セルリアンには魔法がありますよね。その力で精力を抑えるのです」


 アリシアは少し考えるような素振りを見せた。


「魔法・・・。スキルであれば精力を抑えられそうですがそれは不可能です。地球の人間には魔力器官がありませんから魔法やスキルは扱えませんよ」

「それでは、彼の魂をそちらへ送るのはどうでしょう。そちらの世界で生まれる身体に彼の魂を移植するのです」


 エリシスは食い下がる。


「・・・、転生に近い方法ですよね?」

「地球では死亡したことになりますが、実際は世界を越えて魂を移植するだけなので殺めたことにはなりません」


「そんなことをすれば、()()()の機嫌を損ねますよ」

「心配いりませんよ。誰も殺めていませんから。それに、魂を肉体から引き離す際に同時に精力も引き離されるかもしれません」


 エリシスの提案にアリシアは少し躊躇していたが、このままこの男を見過ごす事こそ罪なのではないかと考え、承諾したのだった。


「しかし、どのようにして魂を引き離すおつもりですか?」

「私に考えがあります。この男のことですからもうすぐ・・・あら、ちょうど始まりましたよ」


 彼女達が見ていたモニターに映し出されたのは光石仁の自慰だった。

 彼女達はゴミを見るような目で彼の自慰を見守った。


 そして数分が経ち、彼は早くも最高潮(エクスタシー)へと達しようとしていた。


 その時、エリシスが動き始めた。

 虹色のオーラに包まれ、光り輝くエリシスは絶頂した彼の魂を手繰り寄せた。

 彼は文字通り、昇天してしまったのだ。


 そしてすぐに魂の移植に取りかかる。


 彼の魂を女の肉体に移植して女として転生させることも考えたが、女の皮を被った性獣が誕生してしまうので同じ性別の肉体に移植することにした。


 エリシスから彼の魂を受け取ったアリシアは、魂が宿る前の肉体に彼の魂を移植した。


 彼女達はこれまでに不運な死を遂げてしまった人間をお互いの世界へ転生させたことがある。

 だからこそ魂を肉体に移植する作業には慣れていた。


 アリシアは慣れた手つきで作業を終えると、エリシスと同じような虹色のオーラを身に纏いながら呟く。


「【神術(しんじゅつ)】 『スキル付与』 対象へ【精力抑制】を付与」


 エリシスが見守る中、アリシアは転生体に精力を抑制するためのスキルを付与した。


 パリンッ!


 付与したスキルが割れてしまい弾かれてしまった。


「どうなっているの!?」


 彼女達は驚き、何度もスキルの付与を試みるが何度も弾かれてしまう。


「彼の精力が私の神力(しんりき)を越えています!精力が魂にへばり付いていて私の力では精力を抑え込めません!」


 慌てるアリシアだったが、エリシスはすぐに何かを思いつき冷静さを取り戻した。


「精力を別の力に変換するようなスキルを創るのはいかがでしょう?」


 冷静なエリシスを見て落ち着いたアリシアは新しくスキルを創ることにした。

 アリシアは自身が持つ神力の大半を使って新しいスキルを創り、再び付与を試みた。


「【神術】 『スキル付与』 対象へ【精力変換】を付与」


 今度は割れない。

 ようやく成功したがもう時間は残されていない。

 神ではない人間の身体では神界に漂うプレッシャーに長時間耐えられない。



 新スキルを創った場合、人体にどんな影響を及ぼすのか、世界のバランスを崩すような力ではないか、といった検証が必要となる。


 タイムリミットが迫り、スキルのそういった検証をする時間もないまま、光石仁は別の人間として転生してしまった。


 光石仁の記憶を持ったまま・・・。


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