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スライム、ゴーストを背負って冒険者ギルドへ

「何よこの手」

 そういってかっこよく差し出した手はパチンと叩かれた。

「いくらいい感じでも胸を触った罪は消えないわよ」

「そ、そりゃそうですよねー」

 雰囲気で騙せるかと思っていたがそう簡単にはいかないらしい

 しかし、アンリは腕を組んでそっぽを向くと

「まぁ、でもほとぼりも冷めたしもういいわ」

 とツンを発動しながらそういった。

 それに対して俺は手を合わせて拝んだ。

「ありがたや〜」

「なに?もう一回腕を吹き飛ばされたいわけ?」

「辞めてくれ!腕を飛ばされるのは一回で十分だ!」

「なら、大人しくすることね、ラーミアもこれでいいかしら」

「私はアンリさんが許すのであれば大丈夫ですよ」

 アンリはさっきから考え事をしている仕草をしているラーミアに確認してそれをラーミアは受け入れてくれた。

 ら、ラーミア様〜


「それでユヅキは確かスライムって言ってたわよね?」

 ひと段落ついて落ち着いたことにアンリは俺にそう言ってきた

「ああ、そうだがそれだどうかしたのか?」

「だから、さっき腕が切れても治せたってことね」

「そういうことだ、俺が死なない限り体の一部を再生することはできるぞ」

 スライムだから骨とか筋肉とかそういう概念自体がない。ただスライムが人間の形をしているだけだ。切り離してもそれをくっつけるだけで簡単に直るしそれで痛みを感じることも死ぬこともない。

「その擬態能力もスライムの能力よね?」

「そうだ、こういう感じである程度の生き物は変身できるぞ」

「じゃあ、その人間の姿も変身した姿ってことよね?」

「もちろんだ」

「それならもっとマシな顔にした方が良かったんじゃない?」

 普通のお互いの情報交換と思い、俺は能力について聞かれたことを答えていたのだがいきなりそんなことをブッ込まれた。

「はぁ?この顔も十分イケメンだろ!」

 いきなり喧嘩を売ってくるアンリにびっくりしながらも言い返す俺。

 今から仲良くしていきましょうっていう空気だったのに雰囲気はさっきに逆戻りしてしまった。

「イラつく顔の間違いじゃなくて?」

「どこがイラつく顔だ!ここまでのイケメンは世の中にはほとんどいないぞ!」

「じゃあ、あなたの世界が狭すぎるか、感性がおかしいってことね」

「俺の顔をバカにするなよ!」

「だって実際に事実じゃない」

「なんだと!大体、顔がない人の前で顔の話なんて不謹慎にも程が…」

 俺がそんなことを言っている最中、さっきから考えてるような仕草をしていたラーミアがいきなり入ってきた。

「あ、あのすみません」

「「は、はい!」」

 俺が丁度顔がないラーミアの前で顔の話をしていたことを指摘する最中でいきなり話しかけられたので怒られるのかと普通以上に反応してしまった。

「そ、そんなに驚かなくても…」

 その反応にラーミアはオドオドとした様子で宥めているので怒られるわけではないと安心した。

「ごめんごめん、それでどうかしたのか?」

 気を取り直してラーミアにそう聞くとラーミアは恐る恐る質問をしてきた。

「聞いていいのかわかりませんけど、ユヅキさんはお父さんと同じパーフェクトスライムではないのですか?」

「それは私も気になってたわ」

 パーフェクトスライムとは前魔王であった父の種族で擬態能力しかない普通のスライムと違って、パーフェクトスライムは色々な生き物に擬態できる上にその擬態した生物のステータスと同じになりさらにその生物のスキルや魔法まで使えるようになるのだ。

 父はその能力を使ってただの魔物から力だけで魔王へと成り上がった。

 俺的には魔物の国1番のぶっ壊れ種族と言えよう。

「あー、それはだなうちは別にパーフェクトスライムの家系ってわけじゃないんだ。俺たちの家系はただのスライムの家系、でも父は突然変異でパーフェクトスライムになった。だから父と結婚した母は普通のスライムなんだが、それで父の血が濃かった妹はパーフェクトスライムとなって、母の血が濃かった俺は普通のスライムとして生まれたわけだ。」

「なるほど」

「そういうことだったのね」

 別に隠していることでもないので、正直に種族のことを話したのだが、

「ユヅキあんたは妹を恨んでないの?」

「なんで?」

 アンリは腕を組み、そんなことを聞いてくる。

「だって妹に魔王の座も奪われて、こんな人間の国にいきなり飛ばされてるんでしょ」

 確かに妹の方が優秀で落ちこぼれの俺は色々言われてきた。でも、そんな俺を妹は見放したりせず、態度はアレだが積極的に話しかけてくれていた。今回の任務も無理難題だが妹のことだ。何か考えがあって俺とこいつらをこの任務に配置したのだろう。それくらい俺はあいつのことを信用しているし、守りたいと大事に思っている。そんな妹を恨むことなど大きな何かがない限りないだろう。

「恨んでないな。魔王みたいな責任が重くのしかかる仕事は向いてないし、この任務はこの任務で楽しそうだしな」

 そう、俺には魔王なんて向いてないし、そんな大役をできる妹をすごいと思う。

 それに魔物の国の外にも出てみたかったのだ。今まで本で読んでいた人間の国に来れただけでもこの任務を受けた価値があったというものだ。

「はい!私も楽しみです!」

「私は楽しめなさそうだけどね…」

 その言葉に頭を抑えながら思いっきり頷くラーミアとため息をつくアンリ。

「そりゃあ、お前が人間恐怖症だからだろ」

 そう言って談笑をして、少しみんなの仲が縮まった気がした。



「じゃあ、一通り自己紹介が済んだことだしそろそろ行くとするか!」

 そうして、ある程度区切りがついたところで俺はそう提案をして大通りの方に体を向けようとしたのだが、誰かから腕を引っ張られた。

「い、いやちょっと待ちなさい!まだもう少し話し合いましょ!まだほら次何もするのかとか決まってないでしょ!」

 その正体はアンリだった。アンリは両腕でしっかり俺の腕を固定し引っ張ってくる。

「何をするかってまずは情報収集しかないだろ。それに先に伸ばせば伸ばすだけ帰るのが遅くなるだけだぞ」

「いやよいやよ!もう今日は疲れたから嫌よ!せっかくここまで時間を稼いだの、に…」

 アンリはそういっている途中で自分が失言したことに気がついて慌てて両手で口を押させる。

 しかし、もう遅い、

「まさかお前、人間がいる場所に行きたくないから話を引き延ばしてたとかないよな?」

 俺とラーミアは疑いの視線をアンリに飛ばし、アンリは目を合わせたいように必死で逸らす。

 よく考えてみたら、攻撃魔法で逃げる方向を裏路地の奥の方に操作されて気がするし、さっき理不尽に喧嘩を売ってきたのも人間がいない場所にできるだけ留めるためと考えたら納得がいく。

「よし!じゃあ、ラーミアこんなところで時間を使いすぎるわけにもいかないしさっさといくぞ!」

「は、はい…」

「いやよぉぉぉ、もう少し話してから行きましょぉぉぉぉぉ!!」

 そうして、俺はアンリの腕を思いっきり引っ張りながら、大通りへと向かうのだった。


「それでユヅキさん、今はどこに向かっているのですか?」

 大通りを歩いていると俺の隣を歩いているラーミアがそんなことを尋ねてくた。

「冒険者ギルドだ」

「冒険者ギルドですか?」

「まずこういう情報収集とかをするのは冒険者ギルドって相場が決まってるんだ。冒険者ギルドに行けば人間の国のこととか勇者のことを教えてくれるはずだ」

 冒険者ギルドは魔物の討伐や市民の手助けなど様々な仕事を斡旋してくれる組織だ。

 そういう場所だから自然と情報も集まる。情報はあるだけ損はないし、先に自分勝手に潜入した仲間の魔物も探さないといけない。そういう意味でも魔物の討伐情報が集まる冒険者ギルドは最適と言えるだろう。

「ユヅキさんはこの国に実際に来たことあるのですか?」

「いやないな。こっちの国に来たのは初めてだが本とかで読んでたからな。こういうのは任せてくれ」

 俺が人間の国に対して結構詳しいような感じで話していたから気になったのだろう。

 だが、実際は本で読んでただけできたことはない。つまり引きこもりというわけだ…

「そうなんですね…」

 妙に歯切れが悪くそう返事するラーミア。

「どうかしたのか?」

「いえ、やっぱり視線が集まるなと思いまして…」

「そうだな…まぁ、こういう状況だからしょうがないな」

 俺たちは大通りを歩いていたのだが、見事に通行人のほとんどの視線を集めていた。

 魔物とバレないために目立たないこと第一でやっていきたいのだが、これだけ視線を集めているのには理由がある。

 もちろんただでさえ全身鎧と全身ローブと目立つのだがそれ以上に視線を集めている理由は…

 俺は今アンリをおんぶしながら歩いているからだろう。

 アンリは大通りに出た瞬間、人間の多さに気絶してしまったのだ。

 ほんとになんでこんな奴を人間の国に侵入させたんだろうな…

 そういうわけで今俺はアンリをおんぶしているせいで目立っているわけだが、これにはそれを帳消しにするほどのメリットがある。それはアンリの二つのタワワが俺の背中に当たってるということだ!

 アンリのそれはそこまで大きいというわけではないがしっかりとそれは存在しており背中に柔らかい感触がしっかりと伝わっている。さらにアンリは膝から下だけがないらしく手には太もものもちもちとした感触が感じることができる。小さいころの妹をおんぶしている感じとは違う。成長した太ももとはこんなに素晴らしいものであったとしることできた、それだけでも人間の国に来た甲斐があったというものだろう。

 そんな感じでアンリから伝わってくる素晴らしいものを感じながら、ラーミアと話し歩いていると冒険者ギルドと書かれた建物の前についた。

「ここが冒険者ギルドですね」

「そうだな」

 冒険者ギルドは思ったより大きく、昼間である今でも何人かが出入りしている。

「早速はいってみるか」

「はい」


 そういって入ると中には大きな空間が広がっていて、奥にあるカウンターでは受付嬢らしき人が立ち色々作業しており、右側は大きな掲示板みたいな場所があり冒険者が集まっている。

 時間帯からかわからないが中は思ったより人は多くなかった。

 しかし、はいった瞬間集まった視線はなかなか俺たちを離してくれない。

「なんかすごく見られてるですけどー」

「そ、そうだな、まぁ覚悟していたことだが…」

 注目が集まるのは分かっていたことだが、思ったよりジロジロと見られてたじろいでしまう。その視線は俺たちの格好が目立つからということもあるだろうが、このギルドへ来た新参者ということでどれくらいの実力なのかと見定められているのかもしれない。

「と、とりあえず受付に行こう。そしたら色々と教えてくれるはずだ」

 そういっておれたちはカウンターへと向かう。

 受付はいくつかあるがもちろん行くのは一番可愛い人がいる一番右の受付。

 理由はもちろん仲良くなって色々なことができたら嬉しいからだ。

「当たり前のように一番な可愛い人のところに行くんですね」

「うるさい」

 俺の脇腹をつついて、そういってくるラーミア。顔はないはずなのに視線が痛い。

「こういうのは本では一番可愛い人は実はすごい人だったりとか、人が集まりやすいから色々は情報を持っていたりとかすることがあるんだ」

「ほんとですかー?」

「ほ、本当だ」

「ふーん、まぁそういうことにしときますよー」

 それの必死な言い訳も通用するせずため息を吐いている。

 俺からしたら今まで可愛い女の人と関わることがなかったのだ。それくらい許して欲しい…

 そうして受付の前に立つと受付の人が

「はい、今日はどうされましたか?」

 と聞いてくる。

 受付の人は銀色の長髪の美人で笑顔がとても素敵だ。しかも、俺たちがはいってきても表情ひとつ動かしていなかった。受付嬢としてもかなりのプロだろう。

「あの、田舎から出てきたばっかりで何もわからないのですけど…」

「そうなんですね、じゃあまずこの冒険者ギルドについてお教えしますね」

「お願いします」

 田舎から来たとか外国から来たとか言えば色々教えてくれるだろうと思っていたが、すんなりと気になっていたことを教えてくれようとする受付嬢。

 こいつ…できる!

「この組織は基本的に冒険者登録することで魔物の討伐クエストや依頼を受けることができ、それを達成することで報酬を受け取ることができます。ほかにも討伐クエスト以外で討伐した魔物の解体、変金などもしております」

 ふむふむ、俺の知っている冒険者ギルドとそこまで差はなさそうだな。

 しかし、見た感じランクという制度は存在しなさそうだ。

「さらに登録するとステータスなどを検査いたしまして自分でどれくらいの能力を持っているかも確認することができますし、その情報はギルドの方で保管され、有名になったりすると貴族の方々などから指名依頼を受けることもできます」

 つまり自分のステータスを見て、強くなっているか実感しやすいし、また有名になると指名依頼で貴族とのコネクションもできると…

「へー、それはまた面白そうな…」

 ちょっと待て!

 ステータスを検査ってどこまで検査されるんだ?

 能力値だけとかならいいが種族などまでバレたりする可能性もないとは言えない

 ここで登録して、検査されて、バレて、殺されるみたいなことがあれば一番しょうもない!

 貴族とのコネクションができるのも普通であればあまりお目にかかれないはずの勇者と会いやすくなるかもしれないが貴族には強い傭兵や冒険者がいるはずだ。擬態能力が高いとは言え、擬態を見破ったりする能力に特化している奴がいれば一瞬でバレてしまうだろう。

 そう考えると冒険者ギルドに登録しない方がいいのか?

 そう思って、ラーミアの方を見るとラーミアはキョトンとした様子で俺の方を見てくる。

 そして、アンリは背中で気絶している。

「冒険者ギルドに登録しなかったらどうなるんですか?」

「冒険者登録を強制しているわけではないのでどうにもなりませんが、討伐依頼などを受けられなくなり、討伐した魔物の変金しかできなくなります。しかし、指名依頼などを受ける必要がなくなりますのでのんびりしたい方にはおすすめとなっております」

「なるほどなるほど」

「それで冒険者登録はされますか?」

 そう聞かれて俺は少し考えた。こういうシステムのことだ。冒険者ギルドに登録してた方が討伐依頼などでお金が稼ぎやすかったりするのだろうが、それに対するリスクが高すぎる気がする。

「ラーミアはどう思う?」

「私はよくわからないのでユヅキさんに決めてもらってもいいですか?」

「そうか…」

 そして考えた結果

「じゃあ、今は登録はしなくていいです」

「承知いたしました」

 俺は冒険者登録をしないことにした。

 やっぱりこういう任務では目先の利益をとりに行こうとすると足元掬われる可能性が高い。せっかくなら慎重に行こう。

「他に気になる点はございますでしょうか?」

「あ!じゃあもうひとつ質問していいですか?」

「よろしいですよ」

 俺はこの冒険者ギルドに来た理由、そしてこの人間の国に侵入した理由である本題に入ることにした。

「今この街に滞在している勇者っていますか?」

「今この街には2名の勇者滞在しておられます」

 マジか、2人もいるのか…これは一気に殺せるチャンス!なわけないな…

 勇者が2人もいるならどうにかして別々に殺さないとこっちが殺されるだろう。

「誰か教えてもらえることってできますか?」

「はい、序列第8位である優勇の勇者レイン様と数ヶ月前に新しく勇者になられた序列第12位の不死の勇者ベル様ですね」

「勇者に序列とかあるんだな」

「私も知りませんでした」

 8位と12位なら最初に狙う順位として丁度いいのかもしれない。でも、勇者というだけはあっていくら序列最下位とは言え俺たちと比べものにならないくらい強いはずだ。

「その序列とか勇者ってどう決まるんですか?」

 と聞くと後ろから

「お前そんなことも知らねえのか?」

 という声が聞こえた。

 振り向くと後ろには筋骨隆々で背中には大きな斧を携えた男が立っていた。

「そんなことも知らねえでこんなところにきたのかよ」

 そう上から見下ろしながら威圧した声で言ってくる男。


 これはいわゆるお決まりの新人いびりなのかもしれない…

不死の勇者(UNDEAD )優勇の勇者(絶対聖域)

次回、勇者登場!!予定…


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