第五話 各々の想いと誓い
戦いから一夜明けて、EGO要塞では緊急会議が開かれていた。将軍たちは怪我をしている姿を見せながらもそのほとんどが会議室に集まっていた。いないのは重症でいまだ意識不明のポン、スター、そしてオンガだけだ。
「とりあえず全員集まりましたね。では会議を始める前に紹介したい人がいます。入ってきてください。」
そして入ってきたのは雄々しい雰囲気をした軽装備の男だった。肩には無限の文字が記されている。
「セシル・キャンベルです。セシル傭兵団の団長をしています。」
「セシル傭兵団だと!?」
そう叫んだのはキリンだった。茶色の綺麗で長い髪が特徴的な彼はその目を驚きに見開かせた。それもそうだろう。セシル傭兵団といえば世界にもその名を轟かせる実力傭兵集団である。彼らの連携から見せるその実力は小国の軍丸々一個にも匹敵すると言われている。
「そんな有名な傭兵団がなぜウチを助けたんだ?」
「我々は依頼主からEGO国を助けるように依頼を受けただけです。」
「その依頼主の名前は言えませんか?」
「依頼主の名前をそう簡単にいえるわけがないでしょう。」
「それもそうですね。では作戦を・・・私達はソウル帝國が撤退するまで籠城をします。もちろんこのセシル傭兵団の方々にも協力をしてもらって。」
「私は反対です!!」
シルバの言葉に反対したのはレィだった。彼は真面目なのでセシルのシルバに対する言葉遣いが悪かったのが気に障ったらしく、反対した理由にはそれもあるだろう。
「こんなどこの馬の骨ともしれぬ輩を…そもそも依頼主の事がいえないなんて怪しすぎます!」
「ですが今は私達は少しでも戦力が多い方が良いのです。分かってくれますね?」
「・・・分かりました。」
「では今日は解散します。敵は恐らく昼に攻撃を仕掛けてくるでしょう。しかし皆さん、この戦い、勝ちますよ!!」
「「「「ハッ!!」」」」
シルバの言葉によって会議がお開きになると将軍たちは各々の場所へと向かった。
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「ごめん・・・」
ファイタは重症で意識不明になっているポンの病室にいた。彼はポンが眠る姿を見て悲痛の表情になる。
「オレがあの時国王様にもっと言っておけば・・・」
彼はシルバと話したあの時の事を後悔していた。自分があの時もっと強く言っておけばこんな事にはならなかったかもしれない。そしてオレがもっと強ければ・・・
「ポン、敵はきっと取るからな。」
朝日が入る窓を見つめながらファイタは拳を握りしめてそう呟いた。一方、食堂でお茶を飲んでいたのはレィとミーだった。
「お茶が美味しいですね~。」
「そうですね。」
「本当ならここにスターがいるはずなんですけどね~・・・」
レィとミー、そして今はここにはいないスターの三人はよくここでお茶会をしていた。のどかなハズのお茶会は一人がいないとこんなに寂しいものになるものなのか・・・
「もしかしたら今日でそれが最後になるかもしれないんですよね~・・・」
「させませんよ。この命をかけてもそれはさせません。」
「命はかけたらダメですよ~?また三人でお茶を飲むんですから。」
そう言ってミーは笑う。その笑顔は子供の様に輝かしく、なのにどこか母親の様な温かさを持った笑顔だった。その笑顔につられてレィも笑う。
「・・・そうですね。」
「ですよ。」
そして彼らはまたお茶をすすり出した。その優しい空間とは逆に隣の部屋ではベニバナとキョウが険悪な雰囲気になっていた。
「お前は自国の将軍が信じられないのか!?」
「何度も言う様に裏切り者がいる事は間違いないんですよ。じゃなければ作戦がバレていた事はどう説明をするんですか?」
「それは・・・」
ベニバナが黙る。確かに食糧庫を移動させるなど作戦がバレていなければできない芸当だ。しかしベニバナは自国に裏切り者がいるという事を信じたくは無かった。
「現にディンさんは裏切っているんです。他に裏切り者がいたとしても不思議ではありません。」
「ディンさんは何かわけがあるんだ!裏切らなければいけない何かが・・・」
「あなたと話していても時間の無駄です。私は戦いの準備がありますので。」
「…オレはディンさんを信じる。」
「勝手にしてください。」
そしてキョウは部屋を出て行った。ベニバナは唇を噛み締めて天井を見上げた。ディンさん・・・オレは信じていますからね。そうディンに伝えるかの様に・・・
各将軍が自分の想いと誓いを告げている中、チェリーとペケサは要塞の外へと出ていた・・・・