第一話 プロローグ
時代は変わる。数々の国が出来てから滅び、そしてまた国が作られる。世界においてそれは当然のなのかもしれないが一つだけ変わらないものがある。それは戦争。
人の欲。それは誰しも持っているものだが力を持つ者は特にその欲望が強い事が多い。だからこそその強い欲望を果たす為に争いが起こるのだ。そして今、ここEGO国境警備地点でもその争い起きていた。
「ウグアァアッ!?」
「怯むな!ここでやつらを追い返すんだ!」
「もう弓矢が無い!?」
火の海に包まれながらも肩にEGOの紋章をつけた兵士が迫り狂う黒い影に向かって矢や魔法を放ち続けていた。だが黒い影の軍団の数は一向に減らず、逆に味方の数はどんどん減っていっていた。ここで男が必死にその影の軍団と戦っていた。
黒いハットとサングラス、そして手には金色の魔剣。EGO国の隊長、ハテナ・ディンは傷だらけになりながらも剣を振るい続ける。
「ディンさん、もう持ちません!ここは一度撤退しましょう!?」
忍び服の男。ディンと数々の戦場を潜り抜けた戦友であるペケサ・バツはそう叫んだ。だがディンはその言葉に首を振るう。
「ダメだ。ここで止めないと軍団は本国まで来る。」
「止められるわけないじゃないですか!?」
「任せろ。オレには時の神の祝福がある。ペケサはこの事を本国に報告しろ。そして援軍を要請するんだ。」
「できません!!」
「これは命令だ。いけ。」
「うっ・・・援軍をつれて必ず戻ってきますから!!」
ペケサはそう言って街の出口へと走る。何人かがペケサの邪魔をしようとしたがディンによって全て切り捨てられた。
「ペケサ、無事につけよ。さて・・・・」
ディンはペケサが街を出たのを確認してから前を向く。すでにそこには黒い影の軍団が大勢ディンを囲んでいた。
「死にたいやつは来い!ここは絶対に通さん!!」
EGO本国にペケサが着いたのと情報部からEGO国境警備隊が壊滅したという報告がもたらされたのはそれから三日後の事だった・・・・
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EGO本国の城。いつもは国民みんなが明るく元気なその城の中が今は重苦しい空気に満ちていた。
「・・・・」
「・・・・」
「・・・そろそろ本題に入りましょう。」
EGO会議室では誰もが喋らない。その空気に耐えかねた一人の女性が声を上げた。彼女の名はシルバ・ハルミ。このEGO国の国王である。その人物が話を切り出すと、皆浮かない表情をしながらも顔を前に上げた。
「三日前、国境付近の街がソウル帝國によって攻撃を受けました。国境警備隊は壊滅だそうです。」
その情報によってさらにみんなの空気が重くなる。ソウル帝國といえばこの世界の覇者とでもいえるべき存在の強大な軍事力をもった国である。その国から攻撃を受けたのだから空気が重くなるのも当然といえよう。そしてみんなの空気が重くなる理由がもう一つあった。
「オンガ、後の詳しい報告を。」
オンガと呼ばれた男が前に出る。この男は諜報隊を率いる副隊長でその情報収集能力はシルバも人目を置いている。その男が話を始めた。
「はい。まず三日前の午後五時、ソウル帝国が国境近くの街に襲撃をかけました。ちょうどその時いたディン隊長とペケサ副隊長が国境警備隊を率いて応戦しましたが・・・」
オンガはそこで言葉を濁す。恐らく結果がみんな分かっているからだと思ったからだろう。そこでシルバは話を続けさせる。
「その後は?」
「は、はい。結果は先ほどシルバ様が申した通り敗北。国境警備隊は壊滅し、ペケサ副隊長は重症。ディン隊長は・・・戦場となった街で行方不明です。」
「ディンさんが・・・そんな・・・」
「相手はあのソウル帝國だ。しかたないさ。」
机のサイド側にいた巫女姿と紫のコートの二人の男女が拳を握りしめる。巫女姿の女性はシスター・ミー、EGO国の教会にいるシスターである。そして紫のコートの男はスター・ベルン、EGO国重歩兵部隊を率いる将軍である。
「過ぎた事をいってもダメです。今はこっちに向かっているソウル帝國をなんとかしましょう。」
クールにそう話すのはこの国の内政を任されているレィ・シンだった。女性の様な顔をしているがれっきとした男性である。そのレィの言葉で全員が一様に考え始めた。だが時間が経っても答えを出せるものはいなかった。
「籠城しかないと思います。」
やっと話したのは緑の鎧を着た、まだ年若い顔の整った青年だった。
「キョウさんそれはどうしてですか?」
「まず我が国の兵力ではソウル帝國の軍には敵いません。数が違いすぎます。」
「なっ・・・貴様それでもEGOの将軍か!!それをなんとかするのが自分達の役目だろう!」
「ベニバナ、少し静かにしなさい。」
「ですが・・・」
「私は静かにしなさいと言いました。」
キョウと呼ばれた男の言葉にベニバナと呼ばれた赤い服を着た男が激昂して叫ぶ。だがシルバがそれを止める。ベニバナはまだ何かを言おうとしていたがシルバの空気が変わったのを見て嫌々と押し黙った。
「キョウ、続きを。」
「はい、ですから籠城して相手が撤退するのを待ちます。いくらソウル帝國とはいえ食料・水には限りがあります。そこで夜に奇襲をかけて食糧庫と水瓶庫を襲い、相手を撤退に追い込みます。」
「なるほど。確かに良い作戦です。他に意見は?」
「「「・・・・・・・」」」
「決定ですね。でわ皆さん籠城の準備をお願いします。」
全員が黙った事を意見無しと確認したシルバは全員に命令を下した。後に魂風戦争と呼ばれる戦争の始まりである。