いつもと違う朝
かなり久しぶりの更新ですね~。
第5話です。
「ふわぁぁ~、くそっ、眠い・・・」
朝、俺は起きていつも通り朝の鍛錬などをして、家に帰って来て、着替えて朝食を作っていると思わずあくびが出てしまった。
どうして俺があくびなんかしたのか。
まあ考えるまでも無い。
昨日の出来事のせいだ。
昨日、新都へ行ったり、屍に襲われたり、秋ノ宮に会ったり、秋ノ宮が実は魔術師で、とっくに自分が魔術師ということが知られていたり、秋ノ宮と協力関係になったりと、昨日は帰った後、頭の中を整理しつつこれからのこととか考えていると、眠ることができなかった。
―――まあ、詰まる所、ただの寝不足だ。
さすがに俺でも一睡もしないとキツい。
そうは思いつつも、時間は無限ではなく、有限なものだから俺は手早く朝食を作り終えると、ささっと済ませて、行く準備や服装を整えるとドアに手を掛けて出ようとすると、心なしか今日はいつもよりほんの、ほんの少しだけれども何処か軽かった。
そうして、いつもの通り家のすぐ側にある自転車置き場に向おうとすると、
「おはよう、遅かったわね、永坡くん」
「はぁ!?、えっ!?」
そこにさも当然だと言いたげな態度でそいつは、いつもの凛とした態度でマンションのエントランスにいた。
「あら、ずいぶんな挨拶ね」
「な、なんで秋ノ宮がここに・・??」
「いちゃいけないのかしら??」
「いや、別にいいけど・・・、いや、そうじゃなくて――」
「ふふ、御免なさい、ちょっとからかってみただけよ」
「からかってって・・・・、まあいい。それで、俺の家まで来てなんの用だ??」
「なんの用だとは随分ね。私はただ、あなたと一緒に登校したいと思っただけよ」
「また冗談か?、まあ昨日のことだろ??」
「ふん、面白くないの。まあそうよ。でも永坡くんと登校したいと思ったのは本当よ」
「っつ、秋ノ宮、お前俺を馬鹿にしているだろ??」
「ふふっ、そんな事はないわよ」
「それで、改めて聞くけど何の用だ??」
「そうね、ここじゃなんだから昼休みでいいかしら??」
「まあいいけど、わざわざ俺の家に来なくてもいいんじゃなかったのか?、というか何故俺の家を知っている?」
「だってしょうがないじゃない、私はあなたの携帯のメールアドレスも電話番号も知らないのよ」
「はぁ・・、なら学校で伝えるとか思いつかなかったのか・・・」
「あら?、ごめんなさい。私としたことがうっかりしていたわ」
こいつ絶対確信犯だろ・・・・・。
「さてと、伝えることは伝えたし一緒に学校に行きましょうか」
「は?」
えっ、今なんて言った!?
「あら、日本語じゃあ伝わらなかったのかしら?、じゃあ、Let's go to school(学校にいきましょう)」
「いや、そうじゃなくて・・・・」
「あら、英語もだめなの?、じゃあ、Gehen wir zur Schule(学校にいきましょう)」
「あのだな・・」
「ドイツ語もだめなの?、じゃあフランス語なら・・・・」
「いや、通じてるからさ。というか俺は理解できなかったんじゃなくて、理解したくなかっただけだよ・・・・」
「どうして?」
「秋ノ宮・・、お前分かって言ってるだろ??」
「あら、何のことかしら?、私には分からないわ」
「はぁ・・・、もういい」
「そう?、じゃあ行きましょうか」
結局行くのか・・・・。
「あ、ああ。でも俺自転車通学だから、今自転車取って来る」
そう言って自転車の駐輪所に向うとどうしてか秋ノ宮まで着いて来て、不思議に思ったが気にせず鍵を外していると、ガタと少し自転車が揺れてタイヤが僅かに沈み込んだ。
音がした方に目を向けてみると、秋ノ宮が相変わらずの凛とした態度で自転車の荷台に鎮座していた。
俺はわかってはいたが、それでも敢えて聞くことにした。
「秋ノ宮・・・、お前、何をしているんだ・・・?」
「見ての通り乗せてもらおうと思ったのよ、永坡くん。それよりあなた体力には自信あるわよね??」
「ないことはないけど・・・、っていうか、ふざけてないで今すぐ降りろ」
「あら、ふざけてなんかないわよ。折角こんな便利なものがあるんですもの。使わなきゃ損よ」
「お前正気か??、誰かに見られたらどうするんだ??」
「心配ないわよ。朝だし見られたとしても二、三人程度でしょう」
「いや、目撃者がいる時点でマズいんだよ!!」
「あら、どうして??」
「はぁ・・・・、お前絶対自分のことわかってないだろ・・・・」
「それより、早くいきましょう。時間も経てば人も多くなるわよ」
「そうだな、はぁ、もうわかったよ。でも、学校の近くでは降りろよ」
「ええ、わかったわ。じゃあ、行きましょう」
そうして、俺は溜息をつきつつ、鞄を自転車のかごに載せていざ行こうとすると、秋ノ宮が腰に手を回して来た。
そりゃ俺も健全な男子高校生なわけで当然ビクッとなってしまった。
「どうしたの?、ビクッとして」
「い、いや、なんでもない」
「そう?、じゃあ行きましょうか」
「あ、ああ」
そうして俺は走らせようとすると、秋ノ宮が体を俺の方に預けてきて、
「!!」
「?、どうしたの??」
「いや、なんでも・・・・」
どうして俺が驚いたのか。
まあ正直に言えば、いい匂いとか、温かみとか、さらに言えばなかなかある二つの膨らみとか、普段人と極力接さない俺にとってはかなり精神的なダメージが大きいのに、あの秋ノ宮だからなおさらである。
「さあ、行きましょう」
「お、おう」
そうして、余計な雑念を払いながら走らせていると特に会話はなかったものの、吹いてくる風が熱くなった頭を冷やしてくれて、心地よかった。
同時に、不思議なことにまったく思い出せないものの、何処か懐かしい気がした。
その後俺は坂まで走らせ、流石に坂で二人乗りは無理だし、秋ノ宮は『あなたなら行けるでしょう?』と言っていたが、どうにか説得すると了解してくれ、俺と秋ノ宮は自転車を押しつつ学校に着くと、校門で別れるのかと思ったらちゃんと自転車置き場まで付いて来てくれ、下駄箱で靴を替えると、並んで歩いて教室まで一緒に行くこととなった。
「なあ」
「ん?、なにかしら?」
「その、昼休みに話し合いするって言ってたけど、何処でするんだ??」
「そういえば、言ってなかったわね。えーと、あなた部室棟は分かるわよね?」
「ああ、知ってるけど」
「なら、その近くにある、大きめの木と芝生がある場所は知ってる??」
「あれだろ、昔環境委員が荒れてたところをきれいにして中庭にしようとした奴だろ??」
「ええ、そうよ。あそこなら昼休み近づく人はいないからいいと思うのだけれどもどうかしら??」
「ああ、それでいいよ」
「じゃあ、昼休みにまた会いましょう。ああ、そうそう、もし高感度を上げたいのならアイスティーをかってくるといいでしょう♪」
「は?」
「ふふ、それじゃあ昼休みにね」
そうして秋ノ宮は俺がポカンとしている間に長く綺麗な髪を翻しながら颯爽と自分の教室に入っていった。
「あいつ、あんな奴だったのか・・・・・」
俺は秋ノ宮の意外な一面に困惑しつつも、確かな足取りで教室へと入っていくのだった―――。
どうも~、守月です。
いや~、一ヶ月半ぶりの更新ですね。
心待ちにしていた皆様には、いままで更新できなくてすみません。
今回はというとこれまでが、なかなか暗めだったので、すこしコメディを入れて明るくしてみました。
これからの更新は小出しにしていきたいと思いますので、更新が少し早くなると思います。