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マムセンガル戦後譚

作者: 臀部


干からびた単子葉類は枯れるだろうか

幾年の日を経て君の涙になる

そして…


ここでページが破れている。

古本屋は儲けが少ない。

だから昼間はずっと仕入れた本を読むか最近はじめたメカニカル盆栽の手入れをしている。


時代は2123年。

今は昔だ。

最先端ファッションにはいつの時代でも追いつけないし、なにせこういう職業なもんだから情報には疎い。


この時代にアナログの書籍を読むのなんて私みたいに老いた人間か情弱くらいだ。


でもそういう人らは固定客になりやすいから、私も暮らしていけているわけであって。

細々ながら生活はできているのだから感謝だ。


「店長、お客様がいらしましたよ。」


「ああ、いらっしゃい。」


スタッフは私の他にもうひとりいる。

店員と言えるかは微妙なところだが。

というのも雇っている訳ではなくこれは私が数年前に買った型落ちの店員ロボットなのだ。

型落ちとはいえそれなりの性能だから壊れるまではと思い使っている。


今日1人目のお客さんは通称アフロ。

常連客の内の一人の彼はいつも時代小説を漁りに来る。いつだって並んでる本は同じなのに週に一回くらいのペースできてくれる。今日は江戸川ポランを物色しているみたいだ。私もよく読んだな。若き頃を懐かしむ。この時間が私は好きだ。メカニカルなこの22世紀に叙情的に耽っているのは時代錯誤かもしれないなと思いつつもこの時間は結構好きだ。


シャッターが閉まる音で意識がこんにちは。

ああ、寝てしまったらしい。

「さっきの客はなんか買ってったか」

ロボットにたずねる。

「江戸川ポランを3冊お買い上げです」

「そうかそうか、ありがとう。」


売れた本を確認するとなかなかいい売上だということに気づいた。なかなかいい目をしているなあのアフロさんは。


店の戸締りをしてロボットの電源を落とした。

静かな店内に古本の鈍い匂い。暗いから余計に嗅覚が鋭くなっている。うんうんいい匂い。


店を後にし帰路につく。


家までの道程は長い。


さっきまで鼻腔にのこっていた本の香りが外気の空気で上書き保存される。

工業の進化はときに生活の小さな幸せを破壊する。

その連鎖はときに人々を争いへ誘う。


荒廃した街に人の気配はない。


古の人は車に乗っていたらしい。

燃料はガソリン。


老人は少し歩いて疲れた。

喉が渇いたな。


ガソリンスタンドに向かい、彼は喉仏の給油口を開き、水分補給を始めた。


by木村ポリフィア


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