40/52
狭間
次回 翌日0:00に更新(予定)
「ハンター、こんなところにいて、いいの」
「まぁ見てろって」
月明かり隠れる渓流の中央部。
岸壁から流れ落ちる滝が嘘のように穏やかな水流に変わる地点で青年は背にかけた双剣…バグバイトに手をかけていた。
並ぶは弓砲を構えた少女。
具足に微弱な水の抵抗を覚えながら青年は静かに目を閉じる。
感じるのは木々を駆け抜ける風。
濡れた空気は岩にむした苔の吐息。
夜行の生物は寝静まり、起き抜く者は覚醒する朝日の気配。
声なき自然は雄大に、高らかに、生を唄っている。
その歌声に楔打つように突き立てられた両足はなおのこと流れに逆らう部外者としてそこに在った。
息を吸って胸に溜める。
青年は瞼を開くと、両手で握った剣を引き抜いた。
一層強いざわめきが葉を揺らした。
鼻腔に刺激。
獣の臭いだった。
「…来るぞ」
雲の切れ目から月が覗く。
照らし出されたのは、異形の獣だった。




