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報せ
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「村長としてハンターであるお前さんに依頼だ。殿猪の討伐を頼みたい」
クロノの言葉は淡々と、しかし質量を持って発せられた。
「既に被害も出ている。行商人の一派が壊滅…斥候を出したところ、殿猪の群れが渓流に発生したのを確認した」
腰掛けた老人は杖のように突いた刀の柄を握りしめる。
「…行ってくれるか」
燭台の灯りが揺らいだ。
しばしの沈黙。
耳元をかける風の音が止むのを待って、青年は口を開いた。
「…承った」
「助かる…」視線は手元に落としたまま、クロノは低く答えた。
被害というのはいかほどのものか。
その刀とともに握られているのは如何な感情なのか。
青年はそれを計りかねていた。そのせいか、つい、
「支度をしよう。明朝の馬車で出る」などという言葉が口をついて出た。
「いいや、すぐに手配しよう。準備が出来たら教えてくれ」
去り際、落ち窪んだ目元が作る闇は、誰の目でも見通すことはできなかった。




