言伝
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「どうしてこう、お前は勝手に入ってくるんだ」
「ハンターのご飯、おいしいから…」
「そりゃあどうも」青年は山菜をしまいながらため息をつく。
「…だが泥棒する言い訳にはならないぞ」
「でも村長、ハンターを見張るように言った。食べ物見張るのも、仕事のうち」
「見張ってないだろ?お前は口でものを見るのか?あっ、コラ、言ってる側から食べない!」
少女は朝食の残りの卵焼きを口に頬張ったまま、器用に青年から逃げる。
「今日は上手く焼けたからあとで肴にしようと思ったのに…」
「…フフ」
リスかハムスターのようにひとしきり頬を膨らませた少女は満足したように卵焼きを飲み下すと、「そういえば」と言った。
「さっきタリアの遣いが来た。レイノモノが完成した…って」
「おっ、ついにか」
空となった皿を泣く泣く水に浸けこんでいた青年はその朗報に胸を躍らせる。
「すぐに行こうかな。どうせお前もついてくるんだろう」
こくりと少女が頷く。
「じゃあ口元でも拭っておけ。ホラ」
軒先に吊るしてあった手拭いを受け取ると、少女は「あと…」とこぼす。
「なんだ」青年は背嚢を背負いなおして支度を終えていた。
「今日の晩御飯…なに」
さも当然のように聞いてくるのが憎らしい。
「…天麩羅だ。山菜が手に入ったからな」
「テン…プラー…」
彼女は聞き覚えのない言葉を反芻した。
「お前の分はないぞ」
「ひどい」
少女はまた別の意味で頬を膨らませるが、どうせ何を作っても勝手に食べるつもりなのは知っている。
見え透いてわかる食い意地の悪さだった。
「金を払え金を。盗りさえしなきゃ食わせてやる」
「…ケチ」
「やかましい」




