アーティストを名乗る人種によくいる?
「屋台の方は、もう人任せにするかな」
「そうですね。レシピが出来てますし、設備に必要な物も分かっていますし、ここからは我々にお任せ下さい」
「うん。じゃあ、アンドレイに連絡役を任せるね。クセニアに責任者を引き受けてもらえる様に母上に話すよ。味や販売形態は、ナナカの意見も聞いておけば、間違いないと思う。定期連絡や、何かあった場合は、遠慮せず言ってね」
「かしこまりました」
仕事を振ったのだが、アンドレイは結構、嬉しそうである。サンタウロフ爺さんに教われるのが楽しいのかもしれない。
「タチアナの方、カゲキダンはどうするんスか」
セルゲイが切り出した。……本当は武官なのに、未だに秘書だよね。止められたら困るから、言わないけど。
「そうだね。……ちょっと人手が足りてないな」
タチアナは未成人だし、屋台と比べると、他の人員が配置されてない。5歳にもなってないのに、あまり部下を抱えたくないが、これは困ったかもしれない。
「……少し問題があるんスけど、興味があるんで手伝いたいと言ってる人が居るっス」
「……問題があるのに、紹介するってどういう経緯なの?」
セルゲイをして問題があると言わしめる人物、とは?
「自薦の後で、両陛下からは許可が出てるんスけど……」
「???」
「……実際に会った方が早いっスね。連れて来ます」
「ほっほ。セルゲイ殿も諦めましたかな」
声をかけたサンタウロフさんをセルゲイは軽く睨んで出て行った。
「……連れて来ました」
ややあって、戻って来たセルゲイが少しやつれている気がする。小柄なセルゲイの二回りほど体格の良い人物を、後ろに連れている。
「マアッ! なんて可愛いのかしら! 王妃陛下そっくりね」
「……ハッ!」
悪寒を覚えたので、地道に鍛えていた身体強化を使って飛び退る。
「おっ、と。殿下、今の動きは良かったスけど、向かう先の安全は確認して下さいっス」
危うくリビングアーマーにぶつかりそうになったが、セルゲイが二次元の忍者の如き理不尽な動きを見せて助けてくれた。
「マァアッ! あたくし好みのセルゲイちゃんと、プリティチャーミングな王女殿下が一緒なんて! 夢の様だわぁ!」
「……お引き取り頂いてもいいかな」
セルゲイが連れて来たのはマッチョ系オネエ。コーディネートが前世基準でかなりイケてるのが、何か切ない。
「早い。殿下、早いっス」
「アレクサンドラ殿下、もう少し為人を見てからお考え下さった方が良いですのお」
「ターニツ様は、少々言動に変わったところがありますけれど、舞踊の名手として知られている方です」
「斬新で人目を惹く踊りを考案される事でも有名ですのう。芸術に秀でている方で、男性でありながら女性的、女性でありながら男性的な面を持っている事は良くある事ですじゃ」
後半、確かに前世でもそういう傾向があるのは知ってたけど。
セルゲイに窘められ、サンタウロフさんとアンドレイに交互に諭されるも、頷けない。
「セルゲイの見た目がストライクゾーンど真ん中なら、子供の面倒は任せられないよ」
「……それ、俺に一番ダメージくるんスけど」
実年齢を言い当ててましたよねと言うセルゲイに睨まれるが、ここは引かない。
セルゲイは日本人目線なら童顔の20代後半でも居るが、この国だと10代後半にしか見えないらしい。
一方のマッチョオネエは30歳前後に見える。王女に直接会えるという事から、身分も低くないだろう。
父母が許可を出したからには、問題行動を起こす事は無いんだろうが、視線の暴力というものもある。
多感な子供のメンタルの健康には望ましくない気がする。
「んもぉ。アレクサンドラ王女殿下ったら、いけずぅ。あたくしの好みは、陰のある男よぉ。
お子ちゃまをそういう目で見る事はありません」
ちょっとふざけた様子だったターニツさんだったが、最後のセリフは真剣な様子だ。
「ターニツ様が、セルゲイさん以外に言い寄っているのは見聞きした事がありません。カゲキダンの子供もほとんどが女児ですし、大丈夫では?」
「身分の問題もありますでの。ターニツ殿と孤児達だけになる事もありませんですじゃ」
迷っている私を見たアンドレイとサンタウロフさんが、援護をしてくる。
「……振り付けを見てから決めたらどうっスか?」
ストレス源を増やしてばかりのセルゲイにダメを押される。
「……分かった」
父母と、セルゲイ、サンタウロフさんのフィルターを通ってるんだから、多分、お願いする事になるんだろうな。
「良かったぁ。タチアナ嬢の音楽を聴いて、もう出来てるのがあるのよぉ」
仕方ないので、ターニツさんを連れて、孤児達の居る劇場に向かう。
「ああ、確かに、手頃な動きだよね。サンタウロフ達が推薦するだけあるな」
ターニツさんの提案は、踊り慣れていない子供でも比較的覚えやすく、動きが揃っていると映える振り付けだ。
「そうっスか? 俺は、殿下がランタン達に強請られてる映像の方が、好きっス」
「だってあれは一応プロのダンスなんだし、子供達は今日習ったばかりだから、全然揃ってないじゃない。比べたらダメでしょ」
アイドルはプロのダンサーには劣るかもしれないが、練習は結構大変なんじゃないかと思ってる。
「殿下、あの映像って「マアッ! 何ですの? 殿下の映像とは!?」……」
セルゲイとの会話にターニツさんが割り込んできた。
ランタン達にお願いして、私達が良く見ているミュージックビデオを写してもらう。
「マアアッ! 凄いですわぁ! もっと見せて下さいませ!」
「あ、アレクサンドラ様。どうして今まで、これを見せて頂けなかったのでしょうか?」
子供達もわちゃわちゃしていたが、興奮マックスのターニツさん、血涙流さんばかりのタチアナ嬢の反応が酷い。
「……タチアナに見せた事って無かったっけ?」
そっとセルゲイに尋ねる。ランタン達が映像を強請る機会は多かったから、その全てにタチアナが居合わせなかったとは考えにくい。
「踊ってる映像は無かったのかもしれないっス」
それは失敗だったな。
「もっと! もっと見せて下さいませ!」
「酷いです、アレクサンドラ様」
ランタンを捕まえて強請るターニツさんと私に詰め寄るタチアナ嬢。……カオス。
「「「らんたん……」」」」
「あっ、ランタンが居なくなった」
私の周りからランタンが完全に居なくなったのなんて、初めてなんじゃないだろうか。
「逃げたんだと思うっス」
カオスだ……。
読んで下さってありがとうございます。
やっと落ち着いてきたので、ボチボチと書いていきたいと思います。
とは言え、先日の連休も入りは日曜まで働き、明けは土曜まで働いていたので、
歯医者の予約を取る時に、受付の人に気の毒なものを見る目で見られた気がします。




