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孤児とお好み焼き


「えっと、りょーりにんさん、これ位でいいですか?」


「そうだな。ひっくり返してごらん」


 協力してくれている王城勤務の料理人に見守られながら、お好み焼きを焼いている子供を、ちょっと離れた所から、さらに見守っている。


 本日、孤児達とお好み焼きパーティーを開催している。

 小さい子達は食べるだけだけど、大きい子達には自分で焼いてもらってるから、実質、屋台の訓練ですな。適性の高い子をピックアップして、屋台を任せる所存。


「て言うか、あの子の『料理人』の発音、おかしくね? もう13歳位だよね?」

 退屈なせいか、独り言っぽい発言が出てしまう。


「普段使わない言葉だから、しょうがないっス。

 さっきまでオコノミヤキ焼いてて、子供達にドン引きされたの、もう忘れたんスか?」

 相槌を打つと見せかけて、釘を刺すセルゲイ。

 王城に残ったサンタウロフさんと別れて、ついて来てくれたアンドレイも、後ろで頷いている。


 最初のお好み焼きは、屋台で培った技を使って、料理人達と一緒に私が焼いた。

 元脱法孤児院からの子に加えて、王家と神殿が預かっていた子達から、5~6歳位のパレード組と、13~14歳が中心の最も年嵩の女子を合わせて約260人分である。

 1/4枚分ずつ配るとは言え、料理人2人に協力してもらっても、22枚位がノルマになってしまう。5枚ずつ焼いたとはいえ、大変だった。


 年上組にはお代わりを自分達で焼いてもらうと言っておいたので、特に熱心な子達を中心に、料理人達や私の様子を見に来ていた。

「ひっくり返す時がちょっと難しい位で、後は簡単だから大丈夫。形が崩れても、火が通ってれば食べられるからね」

 最初に声をかけた時点では、イイ感じのリアクションだったと思う。


 しかし、5枚連続でひっくり返した時点で、子供達の表情が曇り始める。再度「失敗しても大丈夫」と声をかけるも、反応イマイチ。アンドレイに「皆さんには、一度に一枚ずつ焼いてもらいますから」と言ってもらって大丈夫かと思いきや、それほどでもない。

 セルゲイの「殿下は特殊なんで、見た目通りの子供と思わない様に」という、私に対する配慮に欠けたフォローが腹立たしいが、子供の表情に明るさが戻ったので我慢。 


 ところが、焼いている間に足りなくなりそうな生地を作り足し始めたら、泣き出す子が現れてしまった。

「卵は両手で同時に割らなくていいから! 多少失敗しても大丈夫だから!」


「……殿下、全員分を一通り焼き終わったら、ちょっと下がりませんか? その見た目で、王城の料理人よりも手際が良いと、周りへのプレッシャーが酷いっス」


 孤児に手ずから料理を振舞っているのに、酷い言われ様である。しかも、自分でもちょっとそうかな、と思ってしまう辺り、救いが無かった。


 という訳で、今は離れて見ているのであるが、

「……もしかして、私、見に来ない方が良かったかな?」

 来た意味を問い直すべきか、迷う。


「アレクサンドラ様がいらっしゃらないのは、それはそれで、扱いが小さい事になりますから……」

 アンドレイに言い淀まれたが、来た意味はあったという事にしておこう。


「まぁ、もう済んだ事っスから。……そうっスね、次からは、卵を両手で割るのだけは止めておいた方がいいっスかね」


「いや、他にも、ひっくり返す時の手捌きが……」

「そもそも、あの小ささで屋台が切り盛り出来ていたのが……」


 せっかくセルゲイが穏便に纏めようとしてくれたので、護衛達の囁き声は聞かなかった事にしようと思う。


「あー、でも、こんな事を言うと性差別的かもしれないが、女の子だと、こういう時に協力的で良いよね」

 

 年長組には、お好み焼きも焼いてもらっているが、交代で小さい子達の面倒も見てもらっている。

 特に面倒見の良い子には、将来、歌劇団の裏方で働いてもらうかな思っている。要はこれも適正調査である。

 前世的感覚からすると、今のところ、少数を除いて誰を選んでも良さそうだ。割と率先して、幼児の世話を焼いてくれている。


「まぁ、ある程度の年の女の子だったら、弟妹とか近所の子供の面倒見るのは、仕事みたいなもんっス。

 男でも、ちゃんとしてるヤツはやりますよ」


「逆に言うと、ちゃんとしてないヤツはやらないんだ?」


「……そうっスね。小さい子の世話を嫌がって逃げるヤツは、男だとある程度、居るっス」


「「へぇ~」」

 セルゲイの話を聞いていたら、アンドレイと返しの声がダブった。


「あっ、自分達や貴族階級ですと、子供の面倒は、乳母や使用人の仕事ですから」

 アンドレイを振り返ると、この様に言われた。セルゲイの説明は、平民達の話って事ね。


「あっ、あのっ、アレクサンドラ様!」

 ダラダラと話してたら、緊張の面持ちで近付いてきた子が一人居たのを見逃していた様だ。


「どうしたの?」

 だからって、どうもしないけどね。


「こっ、これ! かつお節、使ってますよね!」


「あ、貴女。やっぱ、転生者だったんだ。セルゲイ、確保、お願い」


 今回、わざわざ出向いた最大の目的。

 一番引き取りにくい、神殿管理の孤児院で見つかった転生者らしき子供の確認と確保である。


「殿下、まだ無理っス」

 神殿の方には、スキル判定から転生者と思われた子を引き取りたい、という申し入れを済ませてある。

 そして、神殿側から既に断られている。ただし、本人が強く希望した場合のみ、交渉可能との事。


「貴女、名前は? 日本からの転生者だって名乗り出ないと、味噌や醤油は融通できないけど」

 従って、日本人を釣るためのエサは準備済みである。


「ナナカです! 転生者です! 米と味噌と醤油を下さい!!」


「……この子、己の欲望に忠実過ぎじゃないスかね」


「……仕方ないんだよ」

 セルゲイの目から光が消えているが、私の目も同様になっていると思われる。





読んで下さってありがとうございます。


4月末位まで、更新お休みします。すみません。

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