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締めすぎて瀕死

主人公視点に戻るにあたって、時間も少し戻っています。


「いや~、思ったより難航してるよね~」


 私と一緒にパレードに参加する予定のちみっこ達の様子を、離れた所から見ている。

 初回は私が音頭を取ったが、毎回王女自らが出かけるのは良くないらしい。


 しっかし、子供の動き、揃わねー。

 年齢的に幼稚園位とは言え、こんなもんだっけ? 前世じゃ、小学校位で組体操までやってなかったか?


「やった事どころか、見聞きした事も無いんだからしょうがないっス。

 殿下の誕生日はまだ先だから、大丈夫っスよ……多分」


「慰めるつもりがあるなら、せめて言い切ってくれる?

 最悪『小さな子が一生懸命やってる』だけで乗り切る気だから、別に焦ってはいないし」


「よ、良かったです。

 まだ御年4歳のアレクサンドラ様に働いて頂いていて恐縮なのですが、5~6歳はまだ何か仕事する様な歳ではありませんので」

 孤児を思いやるアンドレイに、地味に止めを刺される。


「……今、言うのもアレっスけど、年上組にも手加減して上げて欲しいっス」

 躊躇しつつも、死体に鞭打つセルゲイ。


「……分かってるよ」


 セルゲイ達が孤児を庇うような事を言っているのには訳がある。



 時を遡って、歌劇団用に集めた年嵩の女の子達に、改めて王女として会う事になった時の事だ。

 脱法孤児院出身の子達の健康状態も問題無くなってきて、正規の孤児院組と合流済みである。

 子供達が同じ屋根の下で暮らすようになって1ヶ月。互いの顔と名を覚え、人間関係のトラブルが芽吹き出している。

 

「何かと気の毒な目にあって来たんだし、今はまだ、優しい言葉を掛けてあげるところだよね?」

 孤児達の所に出ていく前に、様子を覗き見た私の感想だ。

 全員に誂えた揃いの練習着に身を包み、王女との面会の為に整列させられた少女達は緊張で少しばかり顔色が悪かった。


「アレクサンドラ殿下、最初が肝心ですじゃ」

「最初は、ビシッと言っといた方がいいんじゃないスかね」

「身分が高い者への弁えを覚えなければ、孤児達の為にもなりません」

 

 しかし、サンタウロフさん、セルゲイ、アンドレイに畳み掛ける様に言われてしまったので、変更を余儀なくされる。


「仕方ないな」

 

 今世も前世と同様、善人しか居ない様な理想郷ではない。

 私の手元には、孤児を任せていたクセニアさんの情報から、サンタウロフさんが指示を出し、セルゲイが完璧にまとめ上げた孤児のリストがある。

 残念ながら、困ったちゃんがいらっしゃるのだ。

 まぁ、まだ予備軍なので、今の内に締めておけば問題無いだろう。


「そろそろ行きましょう、殿下」


 私が姿勢を正すと、セルゲイがわざとらしい恭しさで、中を覗き見るために薄く開けていた扉を大きく開放する。

 第三王女たる私の来訪が会場に告げられた。

 作り上げた穏やかな表情、ゆっくりと進み出る。


「アレクサンドラ第三王女殿下のお言葉だ。

 心して聞く様に」

 付き添って来たセルゲイが、壇の脇に位置を取る。


 壇上中央に辿り着くと、全ての子供達の顔を確認する様に見渡した。

 おもむろに口を開く。


「皆さんが属する事になった歌劇団は、親を亡くした女の子達の将来の選択肢を広げるために、王家が行う事業です。

 舞台で踊るだけでなく、衣装や道具類の管理、関連商品の販売など、多岐にわたる勤め先が用意できます。

 事業が安定すれば、将来の孤児院出身者の生活の大いなる助けになる事でしょう。

 歌劇団に成功をもたらした皆さんの名声も、未来永劫、輝いていくに違いありません。

 功績の高い方には、特別なご褒美も考えています。

 全ては、ここに居る貴女方、歌劇団初期メンバーの皆さん次第です」


 一呼吸置き、全体を再び見回す。

 少女達の顔色に赤みが戻り、夢見る様な表情の子が出て来た。

 言葉を続ける。


「けれど、失敗したならば、全てが無くなります。

 勿論、責任は王女たる私が取ります。

 とは言え、極端に努力を怠る……、不正を働こうとする……、明らかに他人の足を引っ張ろうとする……、これらの行動は王位継承権第三位の私に対する裏切りとして、厳正に対処する所存です」


 セルゲイの報告書に有った行動を述べるに合わせて、該当する子供と目を合わせていく。

 人数が少ないからこそ出来る技だな。


「向き不向きもあるでしょう。

 けれど、努力を惜しまない限り、私は皆さんの味方です。

 全てを希望通りには出来ないでしょうが、皆さんの資質と気持ちに沿った進路を用意したいと思っています。

 頑張りましょうね!」 


 語り終わって今一度、子供達の顔を見ると、皆揃って青白くなっていた。

 ……あれ?


「アレクサンドラ殿下のお言葉は以上である。

 胸に刻み込む様に」


 再び付き添われて退出するが、セルゲイ、顔引き攣ってないか。



「アレクサンドラ殿下、少々やり過ぎですのう」

 扉が閉じるなり、サンタウロフさんに言われる。


「え? でも、『最初が肝心』って……」

 だから、優しくするつもりだったのを変更したんだよ?


「そうなのですが、10歳位ですとまだ目溢しされる年頃ですから」

 アンドレイが言いにくそうにしている。


「煽った俺達も悪いんスけど、それはそれとして、殿下、スペックおかしくないスか?

 事前情報だけで、ほぼ初対面の200人位からその場で20人弱をピックアップ出来るって予想外過ぎるんスけど」


「それはそんな事ないよ。

 報告書に写真みたいなのがついてたから、覚えただけじゃない」

 この世界にもこんな技術あったんだと思って、つい見てしまっただけだ。


「……もっと殿下の為人を知らねばなりませんなぁ」


 サンタウロフさんの言葉に、セルゲイもアンドレイも頷いているが、何故?

 こっちの10歳を前世の何歳位に扱ったらいいのか、掴み切れなかったのは、私のせいではなくないか?




読んで下さってありがとうございます。


雪なのに危うく3時間位残業のところを、30分で帰らせてもらったけど、

つまり、その分今日やらないといけないって事……。


週一更新位はキープしたいと思ってます。

よろしくお願いします。

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