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孤児の行く末、皮算用


「アレクサンドラ様、引き取った子供達の件、こちらにまとめました。

 祖父、あっ、サンタウロフが確認済みです」


 アンドレイが、ちょっと上気した頬で書類を差し出してくる。

 側近というより側近候補位だったアンドレイだが、最近はサンタウロフさんに教わりながら仕事をしている。仕事中は、祖父であっても同僚を呼び捨てしなくてはいけないらしい。

 サンタウロフさんも嬉しそうなので、14歳で働いてる件については、触れない事にした。私も4歳だし。


「ありがとう」

 サンタウロフさん達に任せておいた男の子達のほとんどは、予定通り王家の孤児院に入っている様だ。

 神殿関係の職を希望した子とその弟が3組、神殿の孤児院に引き取られている。

 

 気になる点としては、

「男の子なのに、孤児院から返却要請がある子が、7人か。

 理由や事情が書いてないけど」


「アンドレイに説明できない事情っス」

 サンタウロフさんが、アンドレイの耳を塞ぎ、セルゲイが代りに出て来た。

 14歳のアンドレイと4歳の私に対する待遇の差は、一体なんだろうか。気にしたら負けな気もする。


「……つまり、見た目の良い子なんだね。

 一旦、こっちで引き取るかな。

 適性があるなら、他に出仕者を募る事も出来るだろうし」


「何させるつもりなんスか?」


「え? 言ってなかったっけ?

 歌ったり踊ったり、劇をしたり、だよ」


 アイドルグループとか、宝塚っぽいものを考えている。

 表舞台に立てる子は少なくても、成り立てば裏方の仕事もあるだろうし。

 父母には話してあったので、セルゲイも知ってると思っていた。


「パレードの後もですかのう?」

 アンドレイの耳から手を離して、サンタウロフさんが聞いてくる。

 話に一時的に加われなかったアンドレイは、ちょっと戸惑っている。


「屋台だけじゃないんスか?」

 サンタウロフさんとセルゲイ両方から言われたなら、私の説明不足だな。


「女の子だけの歌劇団を立ち上げようと思っている。

 王都に新しく手配してもらった場所は、歌劇団に入る女の子用の寮と練習場だね。

 先ずはパレードに向けた練習を皆にしてもらって、適性の高い子には、残って芸を磨いてもらう。

 屋台だけじゃ、孤児の進路が賄いきれないでしょう。

 常日頃は歌劇を披露してもらいつつ、パレードの時には加わってもらえば、援助も出来るし、本人達の将来の幅も広がるだろうし」


「どれ位のレベルを目指すんスか?

 稼げるくらいとなると、出来るヤツは限られてるでしょうし、選択肢が広がるって程ではないんじゃないスか?」


 この世界でも芸事で稼ぐのはそれなりの才能を要するので、セルゲイの指摘も尤もだ。

 しかし、少なくともこの国では、多人数グループのアイドルは無かった。

 行進すら無いのだから、マスゲーム要素の売り方は割と新鮮味があるという予想だ。


「人数集めて動きを揃えるだけでも、それなりに見栄えはするよ。

 パレード終わった後は、選別する必要が出てきちゃうだろうけど、軌道に乗れば裏方の仕事もあるから、ある程度の数の就職先は出来るんじゃないかな?

 軌道に乗らなかったら、脱法孤児院の摘発の理由になって、正規の場所に移動するまでの一時避難場になっただけでもいいじゃない」


 最も大きく雇用を生むのは新規の事業を立ち上げる事、という記述が前世の知識にある。当然と言えば当然な様な、言われてみてなるほどという様な感じだ。


「劇の方はどうするのですかのう?

 少女だけでは、演目が限られますじゃ」


「将来的には男性の役も成長した女の子にやってもらうつもりだけど、今は歌って踊ってが中心だね」


 劇団はこの世界にもあるけど、男性だけや女性だけのパターンは無いみたいだ。日本には白拍子や歌舞伎など性別の違う役を熟す文化が昔からあったけど、前世でも世界的には珍しかった。


「……殿下の中で歌うのと踊るのはセットなんスか?」

 歌いながら踊るのも、この世界では一般的ではない。尤も、前世でも口パクが公然の秘密的な感じだったし、無理もない。録音・再生技術を検討するのもいいかもしれない。


「最初から両方熟すのは難しいから、音楽を担当する子と踊る子に分けてもいいかな。

 双子の『女神の歌声』にも活躍してもらえばいいし」

 大体、あの双子の歌も私のBGMになってるだけってのが勿体ないんだよ。


「殿下と離れるのを双子が嫌がりそうっス」


「寝泊まりはこっちでいいから、少しは働いてくれ」

 エッジの効いたスキルのせいもあるんだろうけど、あの二人、自由過ぎるんだよ。


「子供達の為に、様々な事を考えておられる事はわかりましたじゃ。

 儂も協力しますので、もっと詳しく教えて頂けますかのう?」


「僕もお願いします」


「勿論。よろしくね」


 己のコミュニケーション不足を反省しつつ、サンタウロフさんとアンドレイに説明していく。


 パレードの期間は、王都中の孤児に協力してもらう。


 と言っても流石に幼過ぎると問題があるので、5歳以上。

 私と一緒にパレードに参加してもらうのは、5~7歳位の子供達だ。

 音楽に合わせて行進してもらう。

 出来るだけ数を揃える事で見栄えもするし、交代要員の確保も可能になる。


 幼い子を選ぶのは、私の歳に合わせているからだ。

 もっと年嵩の子を選ぶと、大人でも構わない事になってしまう。

 

 体格の良い子や8歳以上の子は、パレード参加要員の世話と屋台をやってもらう。

 兄弟姉妹と一緒に参加してもらうためだが、分けるのが面倒なので、全員参加、という体。

 子供の面倒や料理が苦手な子、見た目や運動神経が良い子には、出し物に出てもらう。


 私達のパレードは、年齢的に昼間のイベントになる。

 夜の浅い時間にもイベントを行いたいので、年嵩の子達にはマスゲームをやってもらいたい。

 適性の高い子や希望者を選別して、歌劇団に入れようと思っている。

 神殿の孤児はなかなか引き取ってこれないだろうが、王家の孤児院は子供の就職先に苦慮している様だったので、問題無いだろう。


 神殿と王家による正規の孤児院を巻き込むのは、選択の幅を増やしてあげたいためもある。

 前世的感覚からどうしても、子供の頃から宗教や進路が決められているのに違和感がある。

 少しでも他の生活を見て欲しい。

 その上で、元のままを選ぶなら別に構わないと思う。

 どうせ変わらないだろうから、自己満足だ。

 だから、この辺りの事は言わない。


「という訳で、集めた子供には、先ず行進を覚えてもらうかな」


「かしこまりました」



読んで下さってありがとうございます。

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