孤児を数える
脱法孤児院巡りは、手分けして1日で終了。
逃さない為とは言え、そこそこハードスケジュールだった。サンタウロフさんも私を子供だと思っていない事が判明した気がする。
成果として、乳飲み子から14歳までの子供、約150人をゲット。
準成人年齢は18歳だが、5という数字を神聖視しているこの世界だと15歳も節目の年で、事情のある子供だと見習い的な事を始める歳らしい。
つまり、15歳以上の子供は今回は助けられなかった。
そっちは、父王が動いてくれる予定なのでお任せする。
女の子91人は、予め王都に準備した屋敷で寝泊まりしている。
当面の責任者は、元乳母さんにお任せだ。母の侍女としての仕事、という事になっている。
私の手元には、子供達に関する報告書が上がってきている。同じ物が父母にも渡っている。
「女の子の方が商品価値が高いのに、扱いが悪いケース多いなぁ」
「殿下、聞こえが悪いっス」
報告書を持って来てくれたセルゲイが苦笑している。
「聞かれたらマズイ相手には言わないよ。
それより、何で女の子の栄養状態がこんなに悪いの?
働かせようと思ってたのに、直ぐには無理なんだけど」
年嵩の女の子には、幼い子の面倒を見てもらったり、パレード中の屋台をしてもらったり、元の孤児院に戻さない為の理由があった方が良い。
強権を発動する事も出来なくは無いが、最終手段だ。
出来れば、父の正式な手配までの時間を稼ぎたい。
「だから、言い方が悪いんスよ。
……多分、逃げ出さない様に弱らせておいてあるのと、ヤロスラフ殿下達のせいっスね」
「貴人牢のアホ共が何か?」
十年位前にやらかした元JKと元DKの尻拭いが多くてうんざりだよ。
同じヤツばっかり治してても経験にならないから、最近は治癒魔術の題材としてもイマイチなんだ。
「諸々ありまして、女性の社会的地位が著しく下がっております」
本日の護衛担当が無の表情でスッと一歩進み出て、またスッと下がった。
「……定期的に、護衛の訓練で的にしてやったら?」
「いいっスね。治癒の訓練と並行してやりましょう」
護衛達の目がめっちゃ輝いてる。
直接的に知ってる年代じゃないと思うんだけど、何があったか聞くと長そうなんで聞けない。
話題を変えよう。
「男の子の状態が比較的良いのって、二つ目の理由のせいなの?」
「それもあるっスね。
あと、男は10歳過ぎると、体格次第で追い出されるっス」
「体格次第で?」
「孤児院は、15過ぎた子供の面倒は見なくていいスから。
体格良くて15だと思った、という体で追い出すんスよ。
そのためにある程度食べさせておくんス」
「男の子だからって、問答無用で捨てたりはしないんだ」
「そこまでやってくれたら、取り締まれるっス」
「つまり、今残ってる所はそれだけ狡猾なんだね」
それぞれのやり口にもよるけど、人数多めの所は表向き孤児院を謳っているせいか、子供の男女比は割と差が無かった。
偶然出会った娼婦さんの育った様な、環境が劣悪で女の子しか引き取らない所は、規模を小さくして誤魔化してきたらしい。
今回、小規模な所をピックアップするのが、事前準備として最も大変だったと思う。父王手配のサンタウロフさんのお仕事でした。
「そうっスね。
女だけ取り返して男は引き取り拒否を狙うんじゃないスかね」
「どっちにしろ戻さないよ。
私が引き取るつもりなのは女の子だけだけど、男の子も適正見て振り分けてもらうつもりだし」
考えている事は男でもアリな事なんだけど、私が行っているという事を前面に出すなら、女の子だけの方が良い。外聞の問題だ。将来に渡って取り組むつもりなので、私自身は女の子までしか手を伸ばす気は無い。
「……適正見るのに、最初に料理長に会わせたのは酷いんじゃないスかね?」
「男でも、私の所で引き取るのは料理出来る子だけだから、料理長がダメなら無理」
私の手を離す前に、料理長フィルターを乗り越えられる逸材だけピックアップしておこうと思ったのだ。一応、10歳以上の子に限定している。
結果、13歳と14歳の2人ゲット。料理長の養子になっている。
1人も居なくてもおかしくないと思っていたから、意外な収穫だ。
せっかく2人なので、助け合ったり競い合ったりして成長して行って欲しい。
「子供の元気が無くなってて、サンタウロフ様が困ってたんスけど……」
「常軌を逸した料理マニアに遭った位で、心折れたりしないでしょう?
何かされた訳でも無いんだし」
多分、ちょっと驚いただけだ、きっと。
男の子達は、サンタウロフさんにお任せしている。
10歳未満の子は、基本的に王家の孤児院へ。10歳以上の子は、希望と適正によって振り分ける。
せいぜい神殿の孤児院を希望する位かなと思う。
神殿関係の方が就職先が分かりやすいからね。
因みに、名目の一つにした転生者の発見にはまだ至っていない。
酷い方の環境に同郷が居なくて良かった事にしておこう。
転生者の確認は、王家と神殿の孤児院それぞれでも行ってもらっている。
神殿の女の子でそれっぽい子が見つかったらしいが、王家の孤児院では見つかっていない。残念だ。
出来れば引き取りたいのだが、神殿はあまり人を手放さない。間違った対応ではないから、非難も出来ない。会ってみてから考えるつもりだ。
逆に、『女神の歌声』スキル持ちの双子、ミュージカとピエスニャが神殿の孤児院に居たら、引き取ってこれなかっただろう。ラッキーだった、のか? そういう事にしておこう。
「引き取って来た子供達が肥えてきたら、他の孤児院の子とも合わせて、芸を仕込んでいかなきゃね」
「だから、外聞が悪いって言ってるんス」
意外と融通の利かないセルゲイが面白くて、ちょっとからかってしまった。
読んで下さってありがとうございます。




