表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/75

移動は魔道車?


「アレクサンドラ殿下、やっと孤児院の手配が済みましたじゃ。

 時間がかかってしまって申し訳ありませんのう。

 回る場所が多いので、手分けしたいのですが、良いですかのう?」


 目にハレーションでも引き起こしそうな、鮮やかな赤髪のサンタウロフさんのお出ましです。

 ここ数日は、孤児院の手配の為という事で姿を見かけなかっただけに、慣れる間の無かった目への刺激が強い。

 ……白い服着用禁止令でも出そうか、迷う今日この頃。


「うん、もちろん」

 何と言うか、一も二も無いよね。 


「僕も祖父と頑張ります」

 アンドレイだ。

 言葉遣いの丁寧さは、一段階下げてもらった。


 若干目が慣れてきたのか、サンタウロフさんの孫を見る優しい瞳に、ほっこりする。


「うん、よろしく」


「いざとなったら、身を挺しても仕える方をお守りするのも、文官の仕事じゃよ」

「分かりました」


「それは、絶対止めて」

 先程の和やかな気持ちを返して欲しい。


「間違ってないっスけど」

 身を挺するのは俺達の仕事だから大丈夫っス、という何の慰めにならない言葉と共に、準備の最終手配に行こうとするセルゲイ。


「……バリヤーみたいな魔術とか魔法って無いの?」


「魔法だとありますけど、そんなに便利じゃないっスね。

 庇った俺らを殿下が治してくれるのが、一番じゃないスか?」


 部屋を出ていくセルゲイを見送る。

 ……やりたい事、一つ追加かなぁ。



「では、儂らはもう出発させてもらいますじゃ。

 殿下は、セルゲイ殿と出かけて下され」

「行って参ります、アレクサンドラ様」


「はい、行ってらっしゃい」

 

 先日、話し合った割にセルゲイの勤務状況は、正直あまり変わっていない。

 

「どうしたもんかな」


「……お待たせしました。

 王妃様に声をお掛けして、クセニアさんに来てもらう事になったっス。

 ……何渋い顔してんスか?」


「セルゲイが休まないなって思って」


「今は殿下付きの仕事しか入れてないんで、殿下次第っス」


「じゃあ、もっと休めるよね?」


「殿下の就寝時と座学の間しか休んでない理由を、察して頂きたいっスね」


「じゃあ、休めるよね?」


「……」


「……」


「そろそろ出かけませんか?」

 ……本日の護衛も精神力の強いオルガさんです。



 今回、移動は魔導車である。


「魔導車ってあんまり使われてないよね?」

 初めてちゃんと見る魔導車を前に、ちょっと顔が引き攣っていると思う。

 

 魔導車は、以前使った魔導鉄道の車窓から上の方がチラ見えしただけで、全体をちゃんと見るのは今回が初めてだ。


「グレゴリー様がコウツウ事故を心配されて、許可があまり下りないようになっているっス」


「……気持ち悪いからじゃなくて?」


「?」


 魔導鉄道の見た目が、前世と大きく違わなかったから、油断していた。


「車になんで足が生えてるの? 車輪は?」


 車と言ってるのに車輪が無いのは?という疑問は、翻訳上仕方ないものだとして、見た目が受け入れられない。

 クラシカルな馬車のようなデザインなのに、車体下部前後に人間の素足みたいな足が一対ずつあるのは、なかなかにシュール。足先だけならまだしも、太もも位まであるからね。服無しで。


「足と違って車輪だと不便じゃないスか」


 道中での話で、鉄道と異なり魔導車は人工ゴーレムの技術で出来ていると聞く。

 車輪じゃなくて足型なのは、ブレーキや悪路対策だと聞く。


 スピード重視の魔導車だと、シカや馬のような足の形だったりするらしい。

 鉄道と違って運べるものの量は少なくても、道の整備が最小で済むので、車は生物の足などを模倣しているのが普通。

 人間の足はなんと乗り心地重視らしい。ホントか、もっと良い形ないのか?

 

「グレゴリー様は、車両の安全性が高くないのにスピードが出るから危険、とおっしゃってたらしいっス」


 車体に前世程の技術が無いのに、魔力のせいでスピードは前世の車よりも出るらしいので、心配も尤もな気がする。


「姫様、本日はよろしくお願いいたします」


「こちらこそ、よろしく」


 出かける直前になってしまったが、元乳母クセニアさんと合流する。

 今日は、乳母が居た方が良いのだそうだ。

 母の近くで週一位では会っているので、久しぶりではない。


 魔道車に乗ってしまえば外観は見えないので、足は忘れる事にして孤児院へ向かう。 


「今日、セルゲイの格好が違うのって何でなの?」

 

 セルゲイの普段の格好は、黒地の服の上に黒い革製の防具。左右の太ももに2本ずつの短剣。

 顔は覆っていないが、ゲームのアサシンやシーフのイメージが近い。

 ラフな髪型といい、護衛騎士の防具が金属製であるのからすると、比較的軽めの格好だ。


 なのに、今日は黒い軍服っぽい格好に、髪も後ろに撫でつける様に整えてある。

 武器も長剣を左に下げているだけだ。

 頬を染めたメイドさんにチラ見されたり、部屋からの移動の際に振り返られたり、大変鬱陶s……私から話題を振る必要を感じなかった。


「……やっとっスか?

 やっぱ人に興味無いのかと思ってたっス」


「気付かない訳無いじゃん?

 そのうち説明されると思ってたら、ここまで来ちゃっただけ。

 それ、戦闘力とか防御力とか落ちてない? 大丈夫なの?」


「……今日は戦闘力よりも政治的な威圧とかが必要なんスよ。

 尤も、一番大事なのは、殿下の演技力っスけど」


「は?」


「サンタウロフ様達が向かったのは、比較的問題の少ない場所っス。

 今回をきっかけに、孤児院業務を王家や神殿に移管する事で話がついてる所っスね。

 殿下に向かってもらうのは、孤児を売り払う事で成り立ってる悪質な所っス。

 王位継承権第三位の王女を使ってまでの肝煎事業、というアピールが必要なんスよ」


「……私の身分が必要なのはいいとして、演技力が必要とは?」

 そんな悪質な所に4歳児向かわせるな、というツッコミは飲み込んで、水戸黄門の印籠の如き役割は受け入れる。


「色々隠そうとするでしょうから、怪しい箇所を見るために、殿下に純真な子供の好奇心を発揮して頂きたいっス」


「それは荷が重いな。

 純真な子供だった頃の記憶なんか残ってないよ」


「……俺が指示しますんで、出来るだけ棒読みにならない様に『○○が見たい』とか言って下さい」


「それ位なら、大丈夫かな? 分かった」


「……」



「王妃様から、お二人の仲が良さそうとはお聞きしていましたが……、この様な感じなのですね」


 ……どんな感じ?



読んで下さってありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ