蕎麦は巨大
料理長のいない隙を狙って、蕎麦?を見に行く。
「これっス」
「デカいよ」
大柄な成人男性が体育座りしているような形とサイズ感。
サイズ感以外は、蕎麦の実に似てるかもしれないが、だからこそ、自分達が蕎麦粒位の小人になってしまった様な感じがする。
一応、前世よりも今世の方が、人間のサイズが小さい予想はしてたけど、もしかしたら思った以上に小さいかもしれない。
「だから、そう言ったじゃないスか。
実り全部を収穫するなら貴族じゃないと無理っスけど、零れた実を拾うのは平民でも出来ますし、実一粒で家族全員数日食べられるっス」
そうだろうね。
「脱穀とかってどうしてるの?」
「皮を切り取るんスよ。
これはちょっと平民には難しいんスけどね」
見せてあげるっスと言って、脱穀?用の刀の様な包丁を取り出すセルゲイ。
斬鉄剣を振り回すような早業で、下部の皮以外を切り取って見せてくれた。
スゴイけど、
「……料理人の技なの、それ?」
「厨房には、専用の魔道具がございますよ。
平民だと、集落の共用設備になっていると思います。
セルゲイ様の技は、どちらかと言うと野営向きですね」
料理長ではない料理人に付き添ってもらっている。
「脱穀せずに持っていくと日持ちするんで、野営に蕎麦の実を持ってたりするっス」
「私も出来るようになった方がいいの?」
「そうっスね。将来的には、出来れば。
国王陛下とか上手っスよ」
「逆に王妃様は、苦手と伺っております」
料理人さんのセリフだが、セルゲイや護衛騎士の反応は「あっ」とか「ああ……」て感じ。
「……そうっスね。爆散させちゃったりするんで。
それより、オコノミヤキに使えるか試しましょう」
「そうだね」
今世の母がパワータイプで、器用さが低いらしい事は、触れない方向で。
事前にセルゲイにレシピを伝えていたから、根回ししてくれていたみたいで、そこそこ突然の訪問だったのに、割とスムーズに準備してもらえた。
ボア肉の薄切りとキャベツのざく切り、鉄板の準備に加えて、揚げ玉が用意してあった。
「料理人さん、ありがとうございます」
「あと、これも作ってもらっておいたっス」
ちょっとドヤ顔のセルゲイに渡されたのは、お好み焼き用のヘラだ。
フライ返しでも出来るけど、これを使っていた、と図を描いて見せたら手配してくれていた。
「わぁスゴイ。ありがとう」
「ヤマイモは、こちらが近いと思うのですが、どうでしょうか?」
見た目は前世と近い山芋が出てきたので、ちょっと切って食べさせてもらう。
二股に分かれたイモ部分を足替わりに使うせいか、前世より短くて硬いが、触感やネバネバ感は山芋に近い。
「ちょっと硬いけど近いから、すりおろしてみたい」
ここで、おろし金が料理長のコレクションにしかない、というアクシデント。
「後日断っておけば、別に怒られたりしません」
「……料理長を巻き込みたくなかったんスけどね」
「セルゲイって、何で料理長が苦手なの?」
面倒くさい性格だから苦手なのは分かるけど、接点が謎。
「俺の出身が珍しいのは、まぁ見れば分かるんで、料理長の知らないレシピをしつこく聞かれるんスけど、俺は料理は詳しくないんスよ」
突っ込む気が全く無いんで聞いていないが、セルゲイに似た顔立ちは、王城の中で他に見ない。
ほとんどの人が西欧風の顔立ちの中で、セルゲイだけアジア系って感じで、個人的には親しみやすい。
「何か一つ教えてあげれば良……、終わらないか」
むしろ一つ教えてしまったからこそ、食いつかれる未来しか想像出来ないな。
「殿下もそう思います? どうしようかな、俺。
というか、殿下は何で料理長とかポポフ博士とか、平気なんスか?」
そこまで平気でもないし、平気に見えてるとしたら多分、前世の自分が近いタイプだったからだと思うが、
「ノーコメント。
こだわりポイント以外は気にしないし、精神的に丈夫な方だから、適当に相手してればいいんじゃないの?」
コツさえ掴めば気を使う必要があまり無いので、気楽な相手ではある。
「何処がどう気に障るかが分からないから、困ってるんスけどね」
「見てれば分かるよ。
それより、焼いてみたい」
マッドサイエンティスト系の人間のこだわりは、ある程度の親近感を持って見てれば分かるのだ。
料理人さんにすりおろしてもらった山芋は問題無かったので、そのまま生地を作ってもらっている。
準備してもらったボア肉で焼いてみる。
蒸し焼きにするための、丸い覆いもあったので使わせてもらう。
作るのは、関西風。広島風の作り方は、全く知識に無かった。食べた事しかないと思われる。
「……粉に関しては、大丈夫そうかな?」
殻が入っていないせいか、蕎麦のクセは特に感じない。
まぁ、蕎麦かどうかも分からないんだけど。
「俺はいいと思うっス。
元と近いかはともかく、俺は好きっス」
「味は、かつお節が手に入ったのが大きいよね。
本当は、ソースとマヨネーズをかけるものなんだけど、どうしようかな」
とりあえず、今は出汁の味を強めにしたりして、そのままでも食べられる様にしている。
セルゲイ他、料理人や護衛さん達には美味しいと言ってもらった。
しかし、お好み焼きは、ソースとマヨネーズを食べる物(「で」ではなく「を」)というイメージがあって、私にはちょっと物足りない。
「ソースもですけど、山芋と揚げ玉を入れると、原価が高くなってしまうかもしれませんね」
山芋の代替品は、もっと別の発音だったが、もう脳内変換で山芋に決めた。
「山芋と揚げ玉は、無くても作れない訳じゃないけど、あった方が美味しいんだよね。
……値段設定と狙いの原価率決めて、生地の配合とかは専門家に任せた方が良い気がする。
ソースに関しても料理長の協力が必要だけど、設定決めるために、市場調査が必要だね」
「結局、料理長の手が必要なんスね。
王妃様に相談してみますよ」
「セルゲイが直接、料理長に会わなければいいんでしょ。
アンドレイとかにお使いしてもらえないの?」
「そうっスね。そうします」
読んで下さってありがとうございます。




