キャベツ狩り
「殿下、カプースタ狩りの手配が出来たっスよ」
「カプースタって何だっけ」
「オコノミヤキの材料の一つで、一番重要って殿下が言ってたヤツっス」
「キャベツか」
食べさせてもらって、実際に見せてもらった感想は、完全にキャベツだった。
もう、脳内変換キャベツでいい事にしよう。
「え? もしかして、またダイヤモンドカッターとか必要な案件?」
「イイエ。
今回ハ、見学デ」
「そんな危険なの?」
「……いや、体格が必要なんで、殿下にはまだ無理ってだけっス」
「じゃあ、大丈夫かな」
「…………」
今回も移動は魔道列車、王都内に畑があるそうだ。
まぁ、外で作るのは大変だよね。
「あれは、何?」
「キャベツを収穫してるんスよ」
「何かの球技じゃなくて?」
「ハハッ、まぁ、キャベツはボールと似てますからね」
遠景だと、ボールを何個も使う変則のドッジボールみたいだ。
おかしいのは、先ず、人間対植物だという事。
そして、
「あのキャベツ、どうやって戻ってんの?」
「勿論、魔術で」
キャベツは、実り方が前世とは全然違っていて、ひまわりの花の部分をキャベツに置き換えたみたいだ。
キャベツが上の方にある本体の草は、全体を前後に大きく揺らして、十分勢いがついた所で、キャベツを離す。投げると言ってもいいかもしれない。
すると、キャベツが勢い良く飛んで行く。
これを人間側は、ドッジボールのように受け止めたりしている。
ぶつかって攻撃になったりもしているが、ぶつかり終わって人間に捕まらなかったキャベツや、何処にも当たらなかったキャベツは、上空をふよふよと飛んで、本体に戻っていく。
「戻るとこってどうやって分かるの?」
最初にくっついていた本体を探して戻るのは大変そうだ。
「キャベツが成ってた部分には、違う茎でも戻れるんスよ」
なんて理不尽な植物だろうか。
それに、
「キャベツ、硬すぎじゃない?」
人間側は騎士なのに、それなりに苦戦している。
鎧が凹んでる様にも見えるんだよね。
「魔術っスよ。
身体強化みたいなのっスね。
大概の生き物は使いますよ」
「ねぇ、もしかしてキャベツって、平民には食べるの辛いんじゃないの?」
人間より強そうなんだけど。
「採れたての新鮮なヤツは、ちょっとそうらしいっスね。
トドメ刺して、しばらく置いておけば、平民でも大丈夫っスよ」
「トドメを刺す?」
「一個獲って来て見せてあげるっス。
あ、殿下は、ここでちゃんと大人しくしていて下さい」
振り返りながら何度も、大人しくしている様に言う、セルゲイ。
動かないよ。何、心配してんだ。
ドッジボールの競技場の様になった所まで行くと、軽快な動きでキャベツを取るセルゲイ。
サッカーの試合で、敵のエースストライカーと一対一になってしまったゴールキーパーのファインプレーみたいだ。
格好良いと言えなくもないかもしれない。
でも、取ったのキャベツだからなぁ。
「獲ってきましたよ」
持ってるのは、やっぱりどう見てもただのキャベツなんだよね。
「ここを刺すんスよ」
切り取られたキャベツの芯の部分を指さして教えてくれる。
「ここを、こうやって」
鋭そうな細身の短剣で、芯を突き刺す。
その瞬間、
「ギャアアア!!」
「え?」
「こんな感じっス」
「いや、待って、今の悲鳴、何?」
ここに来てから、人間の悲鳴がやけに多いなとは思ってたけど、ひょっとして。
「勿論、キャベツっスよ。
今ので死んだんで」
「……どうやって悲鳴上げてるの?」
「え? さぁ、考えた事も無かったっスね」
もしかして、この世界でマンドラゴラって、すごくオーソドックスな植物なのでは?
キャベツを収穫して、帰る。
「そう言えば、殿下に頼まれてた実験の結果もらってきましたよ。
貴人牢の囚人二人の、250秒カウント」
「見せて。どうだった?」
「結構、長めっスね。
もう、この世界に馴染んでるはずなんスけど、囚人生活で狂ったんスかね」
「二人とも、2~4割増し位なのか。
データ数が少なくて、ハッキリとは言えないけど、私のカウントが速かった可能性もあるよね」
前に、地球の1秒とこの世界の1秒を比べるために、私が前世の感覚で250秒をカウントして、この世界の250秒と比べる、という事をした。
結果は、私の250秒カウントとこの世界の250秒はかなり近かったので、前世と今世の1秒は近い、という予想をしたのだ。
しかし他に元日本人が二人居る、という事を知ってから、この二人にも同じ事をしてもらえば、もうちょっと客観性の高いデータが得られる、と思いついたのだ。
二人の250秒カウントの方が、私のカウントよりも正確ならば、地球の1秒の方がこの世界の1秒よりも長い、という事になる。
すると、この世界の1日の時間と1年の日数から、以前は1年の長さが前世と今世と同じ位、と思っていたのが、1年の長さも地球の方が長い、という事になる。
つまり、この世界の20歳は、地球の20歳よりも若い、みたいな事だ。
これらの仮定は、私のカウントが二人の囚人のカウントよりも、速い方に不正確だった場合の話になる。
「殿下、ちょっと、せっかちっぽいっスもんね」
「そう? こないだは、マイペースだって言ってたじゃない」
「考え方とかはそうっスよ。割と好きな様に生きてるじゃないスか。
でも、作業とかは速いっス。
殿下のカウントが速いんじゃないスか?」
「作業という程の作業をしてる気が無いし、4歳児にしては、とかじゃ無いの?」
多分、書き取りの練習とかだけなのでは?
「いや、王妃様の文官に混ざって手伝ってる時とかあるじゃないスか。
簡単な事しかやってないにしても、周りの大人よりもちょっと速い位のペースでこなしてますし、多分、貴人牢の二人と比べても計算も得意そうっスよ」
「ふーん。
つまり、こっちの1秒は、地球の1秒よりも3割位、短い可能性が高いってことか」
「……そういうところが、マイペースなんスよ」
読んで下さってありがとうございます。
お好み焼きの材料で一番重要というと粉かもしれませんが、
具として一番重要とか、どうにか説明しようとした結果、位の軽い感じで捉えて下さいな。




