この世界の支配者
ちょっとだけ予告詐欺。
「うっわぁ……」
感嘆の溜息しか出ない。
眼下に広がるのは、濃密で輝くような、地平線まで続く一面の緑。
それぞれを見分ける事も出来ない程の上空から見て尚、匂い立つようなその生命力。
この惑星の支配者は、人類なんかではなく、この見渡す限りの植物なんだ、と体に染み入るように実感する。
「振り落とされますよ」
「え? え! ちょっと!
ッギャアアアーーーーー!!!」
しみじみと浸っていると、後ろに乗っているセルゲイの支え手に力が入ったと思ったら、急にスピードを上げられた。
私達を乗せて飛んでいるティランに。
***
時を遡る事、しばし。
最近、午後の恒例になったセルゲイ先生の戦闘指南。
ティランのターゲットにならないように、双子は避難してます。
「相変わらず、無駄に出力調整が上手過ぎっス」
「えー。ちゃんと的、壊れたのに」
当てるだけじゃなくて、攻撃力を確認するために、壊す前提の訓練用的を使っての訓練。
「壊れるかどうかギリギリの加減っス。
なんでそんな所だけ、異様に器用なんスか?」
レーザー使ってるから、貫通して意図してない所に届くのが、怖いんだよね。
「例えとして悪いかもっスけど、ヤロスラフ殿下みたいに魔術で遊んでみたりしてもいいんスよ。
意味不明な言葉を叫びながら、魔力を込めてみたりとか」
「え~、うーん」
今世の体に合わせて若返ってるとはいえ、そこまで精神年齢若くないと思うんだよね。
「「らんた~ん」」
ランタン? それなら、
「ガリウムナイトライド!」
指先から青い閃光が迸る!
「「らんた~ん!」」
灯りを青くして、はしゃぐランタン達。
「一応お聞きしますが、どのような魔術で?」
「青い光が出る!」
ガリウムナイトライドは、青色LEDの材料です。
「……残念ながら、時間切れっス。
ま、魔力の消費が抑えられてたのは良かったって事で」
置いてあった小さな鞄を身につけ、自身の装備を確認しだすセルゲイ。
「……ァォオーン」
「ドップラー効果?」
近づきつつある遠吠え。
小象ほどの巨体を空から疾駆させながら、微かな着地音でそのままこちらに走り寄って来るティラン。
「え?」
若干勢いを殺しつつも走りながら、私の襟首を咥えたかと思うと、私をその背に放る。
「え!?」
セルゲイがほぼ同時に飛び乗って来て支えてくれたので、どうにか態勢を立て直せた。
「ち、ちょっと!」
そのまま加速するティラン。
セルゲイが覆いかぶさるようにして支えてくれるから、どうにか乗ってられるスピード。
「ぐっ」
飛行機の離陸よろしくかかるG。
というか、飛びあがっているので、まさに離陸のGだった……
私達を乗せたティランは、一気に上空まで加速すると、ようやく風に乗って穏やかな飛行を始めた。
風属性魔術で、自身と私達を包み込んでいるので、酸素の薄さや風圧はほとんど感じない。
しかし、スピード自体はかなり出ているらしく、気付けば王都は抜けた後、王国に点在する都市や集落をいくつも過ぎ、とうとう魔境の上空まで来てしまった。
そこで見たのが、地球ならアマゾンにしか残ってないと思うような、濃密な緑地帯だった。
セルゲイによると、ほとんどの魔境はそんな感じらしい。
そしてそこから、突然再加速されて、現在、
「ワイバーン!?」
「そうっスね。
一頭しかいないんで、はぐれワイバーンっス」
今度こそ、絶体絶命のピンチ。
読んで下さってありがとうございます。
次こそクライマックス、ワイバーン戦です。




