王城のメイド視点 3歳の王女様
「らんた~ん」
「あら、ありがとう」
朝番のために、まだ薄暗い中で起き出して支度をしようとしたところで、1体のランタンが照らしてくれました。
王城は憑いているランタンが多くて助かります。
私はポリーナ。この王城に勤めるメイドです。
私の父は伯爵ですが、第4夫人の母が平民なので、私も平民。
この国は、魔力量の豊富な者を確保するためという理由で、王侯貴族は一夫多妻制ですが、子供の身分は母のものを継ぎます。
各家の継承権は、正夫人の子しか持ちません。
このような制度になったのは、歴史的には比較的最近、ヤロスラフ殿下が始めたと聞いています。
父からは、成人にあたって、貴族家当主の第4夫人と王城のメイドが紹介できると言われたので、メイドを選びました。
メイドは侍女と違って、平民がなるものですが、王城に勤めるとなると、私の様に貴族の後見が必要です。
王城のメイドは待遇が良く、満足して働いています。
支度をして、メイド長の元に向かいます。
「ポリーナは、今日はアレクサンドラ様のお部屋に付いて」
「かしこまりました」
王女アレクサンドラ様は、まだ3歳。
アレクサンドラ様のお部屋でのお仕事は、基本は待機。
乳母のクセニア様から指示があれば従います。
お掃除は大変ですが、連絡が行き届いていて、皆で連携して行います。
クセニア様がアレクサンドラ様を正妃様のところにお連れする機会に、クセニア様のお嬢様を侍女に連れ出していただいて、僅かな時間に人海戦術で部屋を掃除します。
私は今まで、この人海戦術要員になった事はあっても、部屋付きを担当したことはありません。
待機が基本と聞いていても、ちょっと緊張しますね。
「■■■■■■■■■■■■……」
「「「らんた~ん」」」
……アレクサンドラ様は手のかからない大人しい王女様、と聞いていたのですが、少し聞いていた事と違いますね。
いえ、手がかからないご様子なのは、確かにそうなのですが。
聞いたことの無い言葉をランタンに聞かせているように見えるアレクサンドラ様。
光属性の王族の方にランタンが憑いているのは普通の事ですが、憑いているランタンの数が多いです。
それに明るい時間にランタンが顕現しているのも珍しいです。
灯り灯っていないランタンを私は初めてみました。
アレクサンドラ様は時折、こちらを不思議そうにご覧になっています。
幼いので、何かしている時に見ているのは分かるのですが、単に見ているというよりは観察しているような感じがします。
それに、私の事は何もしていなくても見ているようです。
何故そんなに不思議そうなのでしょう。
私は、髪や目の色も、顔立ちも普通です。
生まれつき魔力量の豊富な王族や高位貴族であれば、髪と目の色が同じですが、下位貴族や平民であれば、髪と目の色が違ってもおかしくないですし、私の組み合わせはよくある色合いです。
薄紅色の髪と緑色の目、実際にメイド仲間に同じ色合いの方がいますし。
お仕事はほとんどないのに、なんだか気疲れする1日でした。
「あ、か、さ、た、な……」
聞いたことがない発声練習らしい言葉は、何だか耳に残る響きでした。
読んで下さってありがとうございます。
主人公視点では説明が足りなさそうなところなど、他者視点を入れてみる事にしました。




