表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/75

天狼のマーキング


「今日は焼肉に挑戦!」

 上がったテンションで軽くポーズを取ると、ランタン達も真似をしてくる。

 双子は、タチアナさんと音楽の勉強に行っていて不在。


「食べ物が絡むと全然違いますね……」

 それは、日本人の特性かな。


「今日は、準備も万端!」

 肉を出来るだけ薄く切ってもらい、金網を準備してもらった。

 前世の日本でこれを薄切り肉と言ったら感覚がおかしい、と思われるようなステーキ相当の厚みだけど、この間の肉塊の難易度とは全然違うはず。

 ついでにズルしようして炭を融通してもらおうとしたが、木炭自体が無いみたいだった。

 植物系の素材が手に入りにくいのは、思ったより大変かも。


「じゃあ、今日は屋上に行きますかね」


「屋上?」


「成功したら食べたいでしょう?

 訓練場だとあんまりっスから」


「ありがとう!」

 ピクニックとまでは行かないけど、それっぽい所にしてくれるらしいですよ。


 移動の途中で、日本ぽい国の事を聞く。

 東国と呼んでいるのがあるあるっぽいが、こちらの世界で交易ルートが無い国の普通の呼び方である。


「ちょくちょく国名が変わるんで、今の名前が分からないんスよね」

 代替わりと共に国の名を変える風習があるらしい。

 セルゲイも直接やり取りがある訳では無いので、やり取りに直接必要の無い情報は、確実性が無いと言って教えてくれない。

 曾祖父様の頃には結構ちゃんと交易していたそうだが、交易が絶えてから代替わりしているだけの年月が経ってしまっている。


「何で、交易が絶えたの?」


「元々交流が無かったのをグレゴリー様が交易にまで漕ぎ着けたものの、グレゴリー様がお亡くなりになってまた途絶えたって感じスね」


「あ~」

 曾祖父様の内政無双が、次世代まで続かなかった感じね。


「グレゴリー様の手記ってそんなに難しいんスか?」


「丁寧に書いてくれてる所は何とか読めるんだけどね」

 癖の強い所は、読める気がしません。



 屋上に着いて降ろしてもらう。

「広い」


「そうっスか?

 城の大きさに対して無難な広さだと思うんスけど」


「そういう意味じゃなくて、前世の経験的に……無難じゃない広さってあるの?」


「迷宮がそうっスね」


 空間魔法的な事か。

 ふと思いついて、マジックバッグについて聞いてみる。

 似たような物を作る技術があるらしいが、維持に魔力を消費するそうだ。

 魔石を使った電池式のイメージ。

 消費魔力量が高く、魔量切れを起こすと中身ごとダメになるので、あまり便利だと思われてないみたいな気がする。

「必要な人間は持ってるけど、皆が持ってるんでもなければ、憧れの道具って感じも無いっス」との事。


「ここ使って良いんで」

 東屋みたいになっている所を見せてもらう。


「取り外し可能になってる?」

 組み立て式とか言うべきか? そのせいか、東屋よりも貧相な感じがする。


「そうっス。

 ここが戦場になる場合もあれば、補給拠点になる場合もあるんで、臨機応変に使えるようになってるっス」


 魔獣が飛来して襲って来た場合に、人間が動きやすい様に平たい造りになっているんだとか。

 屋根状にした場合、魔獣は構わず降り立つが、人間が動きにくいとか、思ってたよりワイルドな理由だった。

 隅に建っている塔も、そういう理由で必要だと教わった。


「そんな訳で、王族の遠距離攻撃は重要っス。

 王妃様の攻撃は強力ですが、より効率的な攻撃手段があるなら、習得して下さい。

 御自身で使えるだけでなく、他の人間に伝達出来るなら、それも重要っス」


「なるほど」

 魔力の消費効率が重要なら、体感でもいいから比べてみたい、と言ったら、母の技を教えてもらえた。


「ショボい」

 的には当たった。


「姫様に攻撃の意志がほとんど感じられません。

 出力調整が、無駄に上手過ぎじゃないスか?」

 どうも、攻撃出力を最小限に絞る癖があるようだ。


 諦めて、当初の予定通り、肉を焼く事にする。 

 網を組み立ててもらった。


「肉、並べすぎじゃない?」


「人数分っスよ」

 護衛騎士とメイドさんも含めてるのね。


「そんなに一気には焼けなくない?」

 欲を言えば遠赤外線でじっくり焼きたい。


「目標って事で」

 仕方ないので、手前から始めてみる。


「最初は、可視光位で様子見するかな」

 紫外線より短波長にはしない所存。


「お、焼けてるじゃないですか」

 具体的な目標(食欲)があると違うよね。


「じゃ、毒味って事で」

 皿に移し、騎士の一人に渡すセルゲイ。

 東屋に移動し、上品に食べている騎士さん。


「王女が焼いた肉を食べる騎士か」

 何か違うものを感じる。


「どんどん焼いていって下さい」


「醬油は?」


「……次からって事で」

 忘れてたね?


 コツを掴んだので、赤外線レーザーでどんどん焼いていく。

 セルゲイが醬油を垂らしていってくれるので、食欲を刺激する匂いが辺りに漂う。

 グラウンドじゃなくて良かったよね。


 せっせと焼いていると、騎士が何事か叫び、メイドさんが走って行った。

「何事?」


「鈍いっス、姫様」


 セルゲイが指す方向を見ると、白いものが飛来してくるのが見えた。


「天狼っス。

 従属神獣の一種で、人を襲う事は基本的には無いんスけど、戦闘力が桁違いなんで、向こうが本気になったらこっちはどうにもならないっス」

 従属神獣は、神獣の一つ格下。いずれにしても、人間が敵う相手ではない。


「4歳にして、絶体絶命のピンチって事?」


「その落ち着きはどっから来るんスか?」

 実感が湧いてないだけだと思うよ。

 

 剣の柄に手を置いた騎士にセルゲイが注意をする。

 戦いになったら確実に負ける以上、平和的に去って行ってもらうしか、助かる見込みが無いらしい。

 メイドさんが走って行ったのは、知らせと、非戦闘員を逃がすためらしい。

 ……私の立場は?


「姫様が狙いな可能性が一番高いんスよ」

 なるほどつまり、相手が敵対する気ならば、

「もう詰んでるじゃん」


 天狼、もうそこに来てます。


 騎士達からは緊張が伝わってくるが、天狼からは敵対的なものは感じない。

 静かにこちらを見ている。


 大きさは、小さめの象くらいかな。

 輝かんばかりに真っ白で、フワフワしてそうな毛並み。モフりたい。

 前世の犬の感覚で見る限り、多分雌。

 優しそうな、上品そうな感じがする。青い瞳が奇麗だ。

 命の危険は、もう無いと思う。


 私の事をフンフンと嗅ぎに来る。

「狼の系統が子供を襲う事は無いっス」

 押し出された。セルゲイに。


 押し倒された。天狼に。

 鼻面を思い切り付けられる。


 私を散々嗅ぎまわって、気が済んだらしい天狼は、気に入った様子で焼いた肉を食べていたが、最後に私の顔をひと舐めして、飛び去って行った。


「え~」

 どさくさ紛れに多少モフれたが、食べた後の舌に舐められたのはちょっと。

 あと、肉食べられたし。


「概ね、姫様のせいだと思うっス」

「えー」


 セルゲイの説明によると、狼系の生き物は、親が居なくなってどうにもならなくなった生き物の子供を、種類によらず引き取って育てる習性があるそうだ。

 前世でもちょっと見聞きしたことがある。狼に育てられた少女の話とか。

 この世界の天狼は、話せはしないものの賢いので、孤児院の子供みたいな事情が理解できるようで、そういう存在を見つけるとマーキングして、定期的に様子を見に来たりするらしい。

 獲物を取ってきてくれた話は今でもそれなりに、扱いが酷い子を連れていってしまった話は過去に稀に聞かれたそうな。


「普通は辺境で起こる事で、王都では聞かないスけど」


 今回は、肉と醬油の匂いに惹かれてやって来たら、私が居たので、マーキングして行ったと。


「私、孤児(みなしご)だと思われたの?」


「数日に一度、母親に会うかどうかじゃ、匂いが残ってたりしないでしょうし」


 とりあえず、肉は食べ損ねました。





読んで下さってありがとうございます。


この世界では、

魔道具などを使用して調べる→毒見

実際に食べて見せる→毒味

にしようと思っています。


肉類は、当人の魔力量より下の魔素量の物でないと、食べるのがキツイので、

今回セルゲイが持ってきた物は、前に主人公を釣るために持ってきたギガントタウロスよりも、

ランクが落ちると思われます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ