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醬油につられる


「じゃあ、『前世の知識』から魔術で出来そうな事をやっていってみましょう」

 午後は、無駄に勤勉なセルゲイ先生の魔術の時間です。


 なんと、「レーザー」が使えた人は、日本からの転生者にもあんまりいなかったらしいよ。


 アンドレイ曰く、

「ヤロスラフ殿下が度々詠唱されていたけれど、実現しなかったと聞き及んでおります」

 との事。

 ヤロスラフ殿下は、私の治療の実験台になってくれてる人だね。

 私の叔父でもある。あまり知りたくはなかった。これからもお世話になる予定。

 前世は高校くらいまでしか生きてられなかったらしく、レーザーの原理を知らなかったと思われる。


 同位相が分かってるかどうかが決め手な気がする。 

 ただ、母に見せてもらった力押しの熱光線の破壊力が凄かったんで、必要かどうかは疑問。


 何かあっても大丈夫なように訓練場に出て来てるから見える、先日に母が壊した壁を直してる人達の一人になりたい気持ちで一杯です。

「姫様の魔術Lvだと、土属性じゃないと無理っス」と言われたけど、そういう事じゃないんだよ。

 ちなみに、壊れた壁はもともと前世の感覚で1m位の厚みがあって、貫通まではしていなかったので、余裕がある分そこそこゆっくり直してるそうだ。


「姫様?」

「何も浮かばないでーす」


「……じゃあ、攻撃じゃなくて良いっス。

 何か思い浮かぶ事、無いっスか?」


 ……生活魔法みたいなこととか、うーん。

「電子レンジ的な?」


「よく分からないけど、やってみて下さい」

 

 水を加熱したいと言ったら、器が用意された。

 水は自分で用意、という事らしい。

「スパルタ」

「何を言っているのか分からないっス」

 この世界にそんな場所無いからね。


「マイクロ波」

「……失敗っスね」


 マイクロ波の領域は広いから、水分子を温めるピンポイントの波長が分からない。。。

 え~と。

「これならどうだ!?」

「あ、温かくなってますよ」


 直接、水分子を動かしまくってやったぜ。

「……光で出来る事の範疇じゃなかった気がする」


「姫様は結構器用ですし、Lv以上に魔術を使えるタイプだと思うっス。

 まぁ、Lv+1位なら出来ても不思議ではないっス」

 ちょっと不安な顔をしてしまったらしく、珍しくフォローが入った。


「姫様、生き物を傷つけるのが怖いですか?」

 珍しく真面目な顔をしたセルゲイが、膝をついて、私の顔を覗き込んでくる。

 距離を取ろうとしたが、手を取られてしまっている。


「……それは怖いよ、もちろん。

 前世の感覚だと生き物を傷つけるような経験は、日常に無かったんだし」


「生き物を傷つけるのが怖いのは、この世界でも必要な気持ちです。

 姫様は間違っていません。

 けれど、この世界は、姫様の前世と違うんです」


 思わず俯いてしまう。

 この世界で生まれて、何度も教わってきたから、分かっている。

 前世だって、肉を食べたりしていた。

 生き物を傷つける経験が無かったのは、代わりに誰かがやってくれていただけだ。


「多分、今、姫様が考えている事、俺が言おうとした事とちょっと違うと思うっス」


「え?」


「ちょっとここに、さっきの魔術使ってみて下さいっス」


「ここって……」

 セルゲイの腕なんだけど。


「『アナライズ』、もう忘れたんスか?」


「あ、そうか」

 立ち上がったセルゲイが差し出す腕に、水分子を動かすイメージをして魔術を放とうとする。


「全然、何ともならない!」

 魔術の失敗がおかしくて、思わず笑ってしまう。


「この世界の生き物は丈夫なんで、姫様がちょっと暴れたくらいで傷つかないっス。

 護衛も居ますし」


「うん。

 うん?

『護衛も居ますし』?」


「王侯貴族の護衛は、本人を守ると同時に、本人から周囲を守るために居ます」


「ア、ハイ」

 へー、ソーナンダー、大変ナ、オ仕事デスネー。

 この世界の王族は、地球と扱われ方が違う気がする。


「さ、心配事が一つ減ったところで、こちらをどうぞ!」

 心配事が無くなったとは言わないセルゲイ。

 ひょっとして、気づいているんだろうか。

 言われないうちは、私も気付かない振りをする。


「肉?」

 セルゲイが差し出してきたのは、前世の肉屋でも売っていそうなキレイな赤身の肉塊だった。

 セルゲイにしては珍しくカバンを持ってるなと思っていたが、意外な物が入ってた。


「タウロスの肉っス。中でも、一番美味しい部分」

 この辺りっスねと言って、背中を撫でられた。


「分かりやすいけど、あんまり美味しそうな感じしない」


「まぁ、人間は食料としてはそんなに優秀じゃないんで」

 前世でもそうだった知識がある。

 人間は、骨と皮と脂肪ばっかりで、肉として食べられるところがほとんどない、と。

 ……食べられないのは良い事なのに、何故か切ない。


「姫様にやる気を出してもらうために、こんな物を用意してみましたっス」

 今度は小瓶を取り出すセルゲイ。


「ショーユです」


「ウソ?!」

 今世の食卓に出てきた事無かったから、無いんだと思ってたよ。


「東からの貴重な輸入品です」

 異世界あるある「日本に似た国がある」かな?

 だと良いけど、でも


「東って、確かに大きな島があったけど、かなり離れてなかった?」

 イギリス位かな?という大きさの島があったけど、大西洋くらい離れてたと思う。

 デフォルメの地図では繋がりが無かったから、国があると思ってなかった。


「一応、あの海は生域なんスよ。

 ただ、航海技術がうちの国に無いんス」

 航海技術は、向こうにしかないそうだ。

 

「という事は、交易をしてもらえれば、醬油や味噌が手に入る……!」


「ストップ、ストップ。

 先ずは、魔術の練習から。

 上手くいったら、これは差し上げますから」


「分かった!

 ……肉で何すんの?」


「肉を焼いてみて下さい。レーザーで」


 そういう事か。……すると

「赤外線一択だな」

 γ線で肉が焼けても、食べたくない。


 奮闘する事しばし、

「……そろそろ、止めましょうか。

 肉が腐りそうっス」


「最初から肉塊は、難易度が高いよ」

 温かくなっただけでした。


 次は薄切り肉を所望。


 ちなみに、醬油はちゃんと醬油だった。




読んで下さってありがとうございます。


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