表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/75

ユニコーンは害獣


「おはようございます。

 本日は、楽しい楽しい生物学のお時間です」


 ……その言い回し流行ってんの?


「本日は王城の馬でございますよ」


「馬は珍しいのですか?」


 前回は、バロメッツとコカトリスで、つまらなそうにしてたのに。


「王城の馬は、八脚馬(スレイプニル)が主ですが、天馬と一角獣(ユニコーン)も飼育されています。

 楽しみですね」


 質問は微妙に無視されたので、移動中にセルゲイに聞いてみた。


「バロメッツは、王城以外でも国中で栽培されてて、珍しくないっス」

 想像しただけで、ちょっと……


「王侯貴族なら卵や肉目的で、コカトリスの飼育は一般的っス。

 平民が飼うのはちょっと大変スから、平民だと卵はアホ小鳥っスね。

 コカトリスは、迷宮や辺境でも見られるっス」


「アホ小鳥?」

 なに、その身も蓋も無い呼ばれ方の鳥は。

「スゴイ勢いで飛んでくるんで、結構危険な鳥なんスけど……まぁ、その内に見る事になるっス」

「?」


「スレイプニルもそんなに珍しくないっス。

 結構強いんスけど、大人しくて飼いやすいんスよ。

 王侯貴族の戦闘時の移動手段は、スレイプニルか天馬が多いっス。

 天馬も珍しくはないんスけど、気性が大人しくても、飛んで逃げられるんで、飼育は限られてるっス。

 ポポフ博士は、天馬と一角獣が見たいんだと思うっス」


一角獣ユニコーンが珍しいんだ?」


「……珍しくはないっス。

 害獣で、見つけ次第駆除するんで、ポポフ博士が出会う事があんまりなかったんだ思うっス」


「害獣?」


「この世界、人間は強い方じゃないんスけど、魔獣からすると食っても美味くないらしくて、食料として襲われる事は、意外と少ないんス。

 人間を食料として好んで襲う少ない例外が、一角獣と二角獣っス」


 嫌そうに話すセルゲイの話をまとめると、一角獣ユニコーンは清らかな乙女を好む、ただし、食料として、だ。

 そのため、集落を一角獣に襲われると、集落の滅亡に直結しやすい。

 犠牲者数が全体からするとあまり多くなかったとしても、次世代を産む層なので、集落の存続に致命的になってしまう。

 しかも、せっかく助かった娘さん達も、不名誉な目で見られたりしてしまい、集落を出て行ってしまったりする。

 単なる恐怖の対象のみならず、強い嫌悪感を抱かれている魔獣、それがこの世界の一角獣ユニコーン


 領地経営側は、見かけたら可能な限り全滅させるのが、基本の対処。

 王城で飼育されているのは、角の有用性から種の存続を図っているのと、王城で保護している分があるから、野生種は心置きなく全滅させて良い、という意味らしい。


「あんま、大っぴらには言えないスけど、二角獣は益獣扱いっス」


 二角獣(バイコーン)は、浮気な男を食料として好む。 

 二角獣の習性が知られている事で、平民の男の浮気抑止にもなるが、二角獣自体が山賊などの強姦魔を食い殺してくれる事が、大っぴらには言えないが有り難い、という事だ。

 尤も、この世界、強姦犯への刑罰は厳しいので、二角獣(バイコーン)に生きたまま食われた方がマシだったりもするらしい。


「一角獣は、見たくなくなってきたなぁ」


「……見た目だけは、白くてキレイっスよ」


 一角獣は、サラッと見学してきた。

 遠景だと、ファンタジーのイメージ通り。

 近景だと、歯が鋭そうでした。



八脚馬(スレイプニル)なのに、八本足じゃないんだ」


「アレクサンドラ様。

 脊椎動物の手足の数は、合計4本でございますよ」


 ……魔法があって物理法則が無視されるファンタジー世界の住人に、前世の常識を説かれる、か。 


「スレイプニルの足先は、前後に分かれているのです。

 それで、あたかも八本足のように見える、というので八脚馬(スレイプニル)と呼ばれるのですね。

 足先の分かれていない馬が平地を走るのに特化しているのに対し、スレイプニルは足場の悪い場所でも走ることが出来ます」


 ……果たして、それは馬なのか。

 とりあえず黙っておく。

 スレイプニルは、というか、この世界の馬は大体、草食よりの雑食だそうだ。


「肉食や草食など、食べ物に選り好みを出来るのは、強い生物の特権ですね」

 一般論としては、そうらしい。

 一角獣と二角獣は、肉食よりの雑食であるが、それなりに強いので、討伐は王侯貴族の役目。



 天馬の放牧場は、上まで網で囲われていた。

 前世の動物園などで、中に入って見られるタイプの鳥舎のように上の網の位置はかなり高い。

 騎獣として使うために飛べなくする訳にもいかず、さりとて囲っておかなければ逃げてしまう、ということでこのような囲い方になっている。

 囲われている平面範囲もそれなりに広い。

 飼育が限られているのも納得。


「天馬の翼ってどうなってるの?」

 足4本+翼2枚=6になっちゃう。

 

「翼は毛で出来ているのですよ」

「?」


「王女殿下。

 この天馬は特に大人しいですから、どうぞ、こちらへ。

 この辺りなら大丈夫です。

 そっと触ってあげて下さい」


 厩舎?の係の人に、天馬の翼を触らせてもらう。

 なお、ポポフ博士は近づくと天馬が興奮してしまったので、遠ざけられている。

 後でちょっと恨まれそうで嫌だ。

 

「鳥の羽とは違うんだ」

 毛で出来ている、というのは分かった。

 最も丈夫でないといけない翼の骨に当たるような部分は、毛とは言い難い丈夫さがあり、曲げてもすぐ戻るようなしなやかさがある。

 しかし、本体から生えてる毛なので、翼のような構造にはなっていない。

 コレ、役に立つの?


「そうです。

 丈夫で長い毛で出来ていて、風属性の魔術で飛ぶ際にバランスを取るのに利用されている、と考えられています。

 天馬や天狼などの4本足の翼持ちは、鳥系の魔物と違って、翼を切り落としても落ちてきません」

 

 魔術で翼状に固めた上で、効率的に飛ぶために利用されているが、主に魔術で飛んでいるので、翼を無くすことが落下につながらない。

 しかも毛なので再生も簡単に出来たりする。

 4本足で飛べる魔物の脅威度は高い。


「翼竜や鳥系の魔物も、翼を切っただけで直ぐに落ちる訳じゃないスけどね」


 前世と違って、飛行する生き物は、飛行に魔術を使っているのが普通。

 翼を失った鳥が生き延びるのは困難だが、それはその場の事では無いので、襲来された際の有効打にはなりにくい。


「飛ぶ生き物の脅威度が高すぎじゃない?」


「だから、人類は生域にしか居られないんスよ」


『生域』とは、人類の生息可能領域および交易可能ルートの事である。

 魔素濃度が低いので、生存に魔素が多く必要な脅威度の高い生物はあまりやって来ない。


「あれ?

 ワイバーンとかあんまりやって来ないなら、バロメッツもっと栽培できるんじゃない?」


「エサが多い事が分かったら、やって来るっス」


 あくまで、メリットが薄いからあんまりやって来ないのであって、来られない訳では無い、と。


 改めて、人類はこの世界の王者では無い、といった感じがした。



読んで下さってありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ