冒険者とは
昨日は、早朝思わず結構働いた気がするが、午後は母の所で、姉と一緒に割とのんびり出来た。
「本日は、王城内を見学いたしましょうか」
前の休日に少し見回らせてもらったが、あくまで休日の王城でしかない。
「大規模な夜会が開かれる予定があります。
準備している文官達を見回りましょう」
「そんな忙しそうな時に行って、迷惑じゃないの?」
「逆に疲れてるんで、治癒魔術を使ってあげると喜ばれるっス」
「疲労って、治癒魔術で治せないって言ってなかった?」
「「……」」
「?」
***
「あ、ありがとうございますぅ、ううっ、これでまた頑張れますぅ」
「気休め程度だから、重症度の高い人はちゃんと治療してもらってね」
肩こり、眼精疲労、腰痛などの軽症患者に魔術を使ってます。
最初は、ヒールを唱えてたんだけど、あまり効果が無いので、遠赤外線をあててみたりしている。
目は怖いから、温めながらのヒールだけど。
「肩をお願いします」
「……ハイ。
時々、回したりすると予防になるよ。
曾祖父様のラジオ体操もやってみて」
「グレゴリー様の体操に、そんな効果があったんですねぇ。やってみます」
「私は目をお願いします」
「ヒール。
時々休憩して、熱いおしぼりで温めると良いよ。
火傷しないようにね」
「私は腰を」
「……ハイ。
時々立って、こう、伸ばすと良いよ。
座りっぱなしが良くないからね」
『前世の知識』にあった腰痛に効くストレッチというかポーズを見せる。
「「らんた~ん」」
ランタン達が横で、私のポーズを真似している。腰もないのに反り返って、何してんの。
「ランタン、映像出してくれる?」
「らんたん!」
いそいそと映写してくれるランタン。助かる。
「姿勢が違うと逆に痛める事もあるし、無理は厳禁。ラジオ体操も良いよ」
ついでに双子には、歌にリラックス効果をのせて歌ってもらっている。
「あの、殿下。
私の腕にもかけてもらって良いでしょうか?
朝から上手く動かなくて……」
「それは、ちゃんと治療に行ってね」
この世界の高度な治療魔法は、五神教のほぼ独占技術らしい。
一応、王城にも神官ではない医官がいるが、数が少ないし、神殿と提携みたいになっているのがどの国でも普通だそう。
前世の病院と同じように、ちゃんと良心的に運営されているが、治療してもらうには対価が必要。
忙しいと我慢できる症状の治療を後回しにしてしまうのは、前世と一緒かな。
文官達に被害者続出でブラック労働っぽいが、ちゃんと交代勤務だし、休みもある。
ただ、
「コピー機もプリンターも無い世界って、辛いなぁ」
部数の少ない書類は全部、手書き。
「アレクサンドラ様!
ガラスペン、ありがとうございましたー!」
「あ、うん。どういたしまして」
普及早い。
そんな事より、
「活版印刷、もっと使えないの?」
曾祖父様主導で導入された活版技術が既にあるんだけど。
「活字を組むのが大変で、部数が多くないとちょっと……」
「機密情報もありますから、活字を組める人材も限られますしね」
「いつも忙しいなら、人手も増やせるんですが、いつもはこうではないので……」
どうにかできないのかなぁ。
「さっき姫様が言ってたのって、作れないんスか?
コピーキー?でしたっけ」
「コピー機とプリンター、ね。
Lv7でもダメかも」
「Lv7でもって、キツイですね」
「今だと、タイプライターが限界かな。
……先史文明って、どうしてたんだろう?」
「生きるのに必要な技術以外は、廃棄されたようですから」
「コピー機だけでも、遺跡から発掘されないかな?
ダメ元で、冒険者に依頼出したり出来ない?」
半ば冗談だったんだけど、返ってきたリアクションは、ちょっと違っていて、
「冒険者に依頼?どういう事っスか?」
「……冒険者ギルドとか、存在しない?」
「商業ギルドなどは、ありますが……」
「……こっちの世界で、冒険者ってどんな人達?」
「……どうでしょう?」
「ポポフ博士とかだと思うっス」
「ああ、そうですね」
「……ポポフ博士?」
「探求心を満たすために、身の危険も顧みない、みたいな」
……前世のリアルの方の冒険者だ、それ。
***
「10歳未満の王族の巡回です」
「あ、アレクサンドラ様。
ボールペンは、もう少しお待ち下さい。
形は出来たのですが、インクとの相性で、実用化まではまだ今一つ……」
「それは、大丈夫。
もし出来たら、文官の人達に先に使ってもらって。
今日は、他の話があって……」
前回と違って、アイデアを出した後だったから、普通に迎え入れてもらった。
前回は、ほぼ全員が暇、という最悪のタイミングだったようだ。
「書類複製機、ですか。
確かに、あったら便利そうですね」
「ドッペルゲンガーの素材を依頼に出しましょう」
ドッペルゲンガーの素材が、コピー機になるかどうかはともかくとして、前世の二次元的な意味の冒険者に当たる職業は、いくつかに分かれて存在していた。
迷宮探索者:前世二次元で言うところのダンジョンである迷宮専門の冒険者。
出自問わず。国を跨いだギルドもあるので、迷宮限定である以外は最も冒険者っぽいイメージ。
傭兵:各地方の自警団。
戦時下では文字通り傭兵だったようだが、今では名前だけが残っており、行動範囲が狭く、地方のフィールド専門の冒険者、といったところ。基本的に、各地方の農村部の家を継げなかった若者で構成されている。国や各貴族家の軍の下部組織のようになっている面もある。
修道士:五神教の修道院の人達。
魔獣を倒して素材収集したり、迷宮潜ったり、スタンピード対応したり、民間などからの依頼に応えたり。やってる内容は、一番冒険者っぽい。五神教に出家する必要がある。
後は、国の軍にも魔獣対応専門の部署があるそうだ。
魔道具製作第3課には、ボールペン製作を続けてもらいつつ、コピー機の事を考えもらいつつ、先ずはタイプライターに取り掛かってもらう事にした。
前回と引き続き、魔法的要素無いけど、引き受けてもらえたからいいや。
読んで下さってありがとうございます。




