最初の異世界転生者たち
「「アレク~サンドラ~様~♪おはよ~ございま~す~♪」」
「お、お早う」
自由時間に双子に新曲をねだられる、という新しい生活習慣が出来つつある。
そして、基本的に常に歌っている双子。
毎日がアカペラBGM付である。
今日は歴史の授業の日。
「アトラス先史文明以前の事は、もう色々失われてしまって分からない事が多いんです。
ただ、先史文明以前では、魔法はおろか魔術も無かったと考えられています」
無意識に使える範囲の身体強化しかしていなかっただろう、との事。
動植物も今よりずっと小さくて大人しかったと思われる。
「先史文明は、前期と後期に分かれます。
先史文明前期は、異世界ギーベリからの転生者がもたらした魔術が広まった時代です」
先史文明以前が確認出来ないので、確認出来る最古の異世界転生である。
地球と異なる、魔術の存在した異世界ギーベリからの転生。
「異世界ギーベリと呼んでいますが、世界の名なのか国の名なのか分かりません。
でも、おそらくは国の名なのでしょうね。
転生した人々は、全て平民以下の階級で、支配者階級が含まれていなかったのです。
ギーベリの滅びは突然だったようで、ギーベリからの転生者の前世は全て同日に亡くなっていると思われます。
ギーベリからの転生者は合計で200人ほど。
僅か2年の間に集中して転生が起こったという記録があります。
この2年の1年目を『魔術開始元年』と呼ぶ人もいます。
あ、アレクサンドラ様。
一般的な『魔術開始元年』は、この後、説明しますからね」
おっと、重要ワードっぽかったから、フライングでメモってしまった。
歴史の先生は、30代くらいの眼鏡の男の人。
前世と同じタイプの眼鏡があるんだ、という話題を、授業前にした。
イスタリスキ先生です。
この世界では、ある特定の時期・場所に、ある特定の異世界からの転生が多量発生する事が、度々ある。この現象が起こる点をホットスポットと呼ぶ。
ホットスポットでは、当然、新しい技術がもたらされやすい。
「ギーベリからの転生者は、魔術という恩恵を世界にもたらしましたが、彼らが生まれた国パストラダフは、彼らのせいで滅んでしまったのです」
パストラダフ王国は世襲の身分制度だったのだが、ギーベリは魔力量による身分制度だったのだ。
ギーベリでは、12歳の準成人までは親元に居るが、その後は魔力量に応じた階級で暮らしていたらしい。
「根本的な社会制度や考え方が全く異なる前世を持ち、転生前に他の制度を知らなかった彼らは、生まれ変わった世界にも生前の制度を求めて反乱を起こしました。
魔術という武力で一度は成功した反乱のため、パストラダフ王国は滅亡したのです。
反乱に成功し、一時は政権を取った彼らでしたが、前世に支配者階級の知識が無かった事が災いし、政権を維持する事は出来ませんでした。
自分勝手な政治を行い、彼らもまた反乱で滅びました。
その後しばらく、戦乱の時代が続きました。
ギーベリ転生者から数えて2世代ほど経って、アトラス魔術王国が興り、ようやく戦乱の時代に終わりが来たのです。
一般的には、このアトラス魔術王国の建国を『魔術開始元年』と呼ぶ事が多いです」
今日はここまでにしましょう、と穏やかに言って、去っていく先生。
ようやくマッドじゃない先生でした。
「……異世界転生者って要注意人物扱いなの?」
「ま、そんな事は……」
「そうっスよ」
「……」
読んで下さってありがとうございます。
次は番外編的な回を、出来れば、いつもの前のタイミングで入れたいと思っています。




