双子に憑かれる
休み明けの秩序の日は、社会常識を学ぶ日。
今のところ、乳母のクセニアさんが担当。
「王妃様から伺っておりますよ。
王都の孤児院に参りましょうね」
悩むまでもなく予定入ってた。
この国の孤児院は、教会管理、王家管理、その他の管理、となっていて、今日行くのはもちろん、王家の孤児院。
「教会の孤児院は、孤児の将来が神官に決まってしまうのだけが、心配ですね」
「王家と教会の孤児院なら、子供の安否は特に問題ないっス」
「……他の孤児院は?」
なんか4歳児が聞くには、不穏なものを感じますが。
「ヤロスラフ殿下の影響で、女児の扱いに問題がありまして……」
「男児のその後も悲惨っス」
「ヤロスラフ殿下?」
「姫様の叔父のニホンからの転生者っスよ」
「今は、貴人牢に入っておられますね」
……同郷転生者の尻拭いイベント来そう。えー。
「……その他の孤児院に、今日は行けますか?」
「難しいですねぇ」
「姫様がなんかいい建前とかを考えて欲しいっス」
えらいムチャ振り来た。
「……とりあえず、王家管理の孤児院見てからで」
「そうっスね」
王家管理の孤児院は、普通でした。
前世で孤児院なんて見た事ないけど、幼稚園と小学校みたいな感じ。
乳児用だけは、病院の新生児が居るところみたいだったけど。
ただ、
「……結構、多いね」
子供の数が予想よりも多い。
規模も大きめの学校や病院位だ。
「出来るだけ、ここに集めてるんスよ。
子供の為にも一緒に育った方が、色々良いんで」
「近隣領や、可能ならば辺境領の子供もこちらに移しているんです。
王都の方が安全ですから」
こっちの生存環境が前世とは、比べ物にならない位、厳しい。
日本と比べてるからではあるけど。
「血縁のある子などは、積極的に引き取ってもらっていますけれどもね」
親戚の夫婦などはもちろん、近所の人にも引き取ってもらうようになっている。
前世と特に違うのは、引き取る、手放す、を頻繁に行っている事だ。
自分の子に乳幼児がいる間は、他人の乳児を引き取るが、その子が離乳したら、また手放す。
自身の最低限の事が出来る以上の子のみを引き取り、そこから成人まで面倒を見る。
ある種、孤児院の個人経営に近いだろうか。
引き取る子の年齢枠が極端に狭い孤児院、という感じ。
ドライなようだが、子供は各家庭だけの、というよりも、社会全体の子供、という意識が強い気がする。
各自のライフスタイルに合わせて、出来る限り子供を引き取った結果、のような。
もちろん、血の近い子を我が子のように引き取るケースも珍しくない。
「親のいない子を出来るだけ出さないように頑張って下さいっス」
「が、頑張ります」
働いている人や孤児に、片っ端から治癒魔術をかけつつ見学。
相変わらずショボいせいか、魔力はまだ余裕。
ちょっとは交流もという事で、小学校低学年位の子達のところに行く。
「お、王女殿下に、ごあいさつ申し上げます」
「「「ごあいさつ、もうしあげます」」」
「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ~。
王女様は皆さんを、取って食べたりしませんからね~」
セルゲイの猫の被り方に、ちょっと引いてるけどね。
歌のお兄さんみたいだ。いつもと全然違う。
「いつもやってる鉄琴演奏とか、皆さんに披露されてはどうですか?王女様」
「皆が知らない曲だけど良いの?」
「大丈夫です」
一生懸命拍手とかしなきゃみたいな雰囲気が漂ってるが、それでもその方が気楽ならばという事で、2曲ばかり披露する。
穏便かつ早めに立ち去ってあげたい。
「♪~」
演奏を始めると、合わせて歌う子達が居て、いい感じ、と思っていたんだけど。
「「アレク~サンドラ~様~♪わたし~た~ち~♪ずっと~あな~たに~ついて~いく~♪」」
「……この子達は?」
演奏が終わったら、歌ってくれてた7歳くらいの女の子二人に、両側から抱き着かれました。
思った以上に貼り付いてくるし。
「王妃様の仰っていた子達です」
「世にも珍しい『神の歌声』スキル持ちの双子っス」
『神の歌声』
天稟スキルの1種。
どんな歌でも歌いこなせる。
歌にのせて、バフやデバフも出来る。
歌っている間は、防御はほぼ無敵、攻撃力もそこそこ。
歌ってないと激弱。
歌に必要なスキルは、取得促進効果あり。
歌に無関係なスキルは、生きていくのに必要最低限しか取得できない。
「スキルのエッジが効き過ぎでは?」
歌の届く範囲が広く、全軍にバフがかけられるので、スキル持ちを国が抱えてると良さそうだが、本人は生きるのが大変そう。
双子だから珍しいとかではなく、歴史的にこれまで数人しか記録が無いようなレア度らしい。
なのに二卵性双生児。
背が高めで少し声低めの緑髪のミュージカと、背が低めで声高めの赤茶髪のピエスニャ。
「エッジ?
ああ、そういう。
そうっスね。歌う以外の生き方は出来ないっス」
「誰か王侯貴族のお抱えになるのが良いのですけど。
王妃様が、音楽に理解があって信頼できる貴族の方々を紹介してきたんですが、本人達が嫌がってしまって」
「珍しい曲を知ってる人に引き取られたいって言ってたんで、姫様が適任っス」
「「アレク~サンドラ~様~♪わたし~た~ち~♪ずっと~あなた~から~はなれ~ない~♪」」
物理的にホントに離れないの、止めて。
その後の二人、ミュージカとピエスニャの扱い。
アレクサンドラ付宮廷道化師見習い。
「宮廷道化師?、音楽関係ではなく?」
「仕えてる主から衣食住の面倒は見てもらえるけど、仕事しなくて良くて、代わりに給金が出ないんスよ」
「まだ子供ですから、お給金が発生する役につけるよりは」
「なるほど」
「普通は国王にしか付かない役職スけどね」
「え?」
不穏。
読んで下さってありがとうございます。
誤字報告、助かります。
検索するとエッジは「効く」とでましたので、そのままにします。




