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生物学の授業 蜜蜂

虫が苦手な人にはちょっと厳しいかもしれません。


 ポポフ博士は放っておくといつまでもランタンの話をしてしまうので、昼休憩のタイミングで乳母のクセニアさんが止めに来た。


 クセニアさんは一応まだ私の乳母なんだけど、乳母をやる前にやってた母の侍女と半々を時短勤務で、という感じになっている。

 4歳児なのに、乳母が常駐ではない、と。

 代わりというか、学院の授業が終わったアンドレイが合流してる。


「……私はこの世界の4歳児の扱いですか?」

「いえいえ、まさか」

「そんな訳ないっス」

 ……だろうとは思ってたけど。


 私の運搬のために、隠形を解いて、午後からやって来ました体を取っているセルゲイの

「そろそろ王蜂に覚えてもらった方が良いっス」

 という何処か疑問を感じる主張により、午後は王蜂の見学です。


「王蜂は蜜蜂の一種です。

 蜜蜂の中でも最大級の種ですね。

 蜜蜂も重要な共生生物ですよ」


 ……実は王蜂は窓から見てしまった事がある。

 少しでも心構えが出来て良かった。

 王城の中庭はもう、蜂の生息域であって、人間が居られる場所じゃないんじゃないかな。

 羽を除いた本体部分だけで、人間より明らかにデカい。。。


 ……そろそろ単位の事も考えなきゃいけないな。

 このサイズの蜂がいる、と言う事は、人間のサイズも前世と同じとは限らないと思う。

 前世から何か基準になるような物を持ち込めてるんじゃないから、どうやって比較するかから考えないと。

 

「蜂はサイズバリエーションの豊かな生物です」


 前世の蜂と同じ位のサイズから、この世界の成人と比較した感覚で体長2m強位の王蜂まで。

 

「蜜蜂は小さい順に、平民蜂、男爵蜂、貴族蜂、王蜂の4種類が知られています。

 蜂は概ね、体が大きいほど魔力量も豊富です」


 平民蜂または単に蜜蜂と呼ばれるのが、前世で虫と言われて納得できるサイズ、男爵蜂がもう人間の赤ん坊位、貴族蜂は王蜂よりも少し小さい位だと言う。


 蜜蜂の巣の大きさと、蜜を巣に蓄えるための表面張力や粘度の事を考えると、前世基準だと蜜蜂にこんなサイズバリエがあるのはおかしいんじゃないかと思うんだよね。


 前世だと、蜂の巣の一つ一つが細かいから、表面張力で蜜を溜めて置けるんだと思ってる。

 例えば、蜂の巣状の格子があってそこに蜂蜜を入れた時、一つの格子の大きさが5cmとかあったら、斜めにしただけで、蜂蜜は流れ出て行ってしまいそう。


 そう考えると、蜂がすごく大きいんじゃなくて、元々人類が小さかったと考える方が無難では? 


 この世界でやりたい実験を後でまとめてみよう。

 今は、「水滴の大きさを確認する」を脳内メモ。


「蜜蜂達は、私達の住居に隣接した場所に居住する事で、住居の安全性を高めています。

 その見返りとして、蜂蜜を分けてくれます。

 蜜蜂は私達よりも、共生生物に協力的と言えるでしょう」


 前世の蜜蜂は、昆虫ではあるが家畜の一種で、蜂蜜は人間が搾取していると言って良かったと思う。


 今世の蜜蜂達は強いので、人間が蜂蜜を根こそぎ取ろうとしてどうにかなる相手ではない。


 では、どうしているかと言うと、蜜蜂達が自身で作った住居に隣接して、人間が設置した巣箱がある。

 この巣箱は、引き出しの様に取り出し可能かつ再利用可能。王蜂の場合、サイズは引き出しどころではなく巨大。

 ここに溜まった蜂蜜をもらう。


 王城には王蜂の担当者が居る。


「蜂達は賢くて、人が作った巣箱に入れた分の蜂蜜は、元々宿代だと思ってるようなんです」


 ……この世界の蜂、賢過ぎでは?


「と言う事は、他の巣に入ってる蜂蜜よりも量が少なかったり、質が悪かったりはしないのでしょうか?」


「量はたっぷり入ってますよ。

 他の巣を見る方法が無いんで、質は正直分かりませんが、あまり変わらないと思ってます」


「私が以前、男爵蜂で調べた時は、1割ほど魔素が低いようでした」


「え!?どうやって調べたんですか?」


「巣の一部を無理やりもぎ取って調べたんです。

 全身を100か所位刺されて死にかけましたから、流石に王蜂相手では他の方法が必要ですね。

 隠形のレベルが高い方に依頼を出していますが、まだ応えていただけていなくて」

 

「「「……」」」


 ドン引きだよ。このマッドサイエンティストが。

 殺されかけたのに、まだ蜂が平気とか。

 セルゲイの顔が引き攣ってるわ。


 そして何より、ちょっとだけなら気持ちが分かる自分が怖い。

 知識欲を満たせる満足感>命の危険に対する恐怖、みたいね。


「……蜂毒にあたらなくて良かったですね」

 話題を変えたかったんだけど、思い切りチョイスミス。


 毒、という言葉が分からなくてなかなか通じなかったし。


「ほう!蜂に!毒が!

 しかも一度刺すと死んでしまうとは!

 異世界の生態系が、思いのほかこちらと似ている事も興味深いですが、そのような違いがある事も興味深い!もっと詳しく!」


 ポポフ博士という炎に油を注いでしまったよ。。。


 この世界の蜂に毒は無いんだって。

 前世の蜂は一度針を何かに刺すと死んでしまったけど、こっちの世界の蜂は何度でも刺せる。

 

 王蜂を見てると納得出来る。

 前世の蜂は、針を相手の体に残したり、毒で攻撃力を上げてたんだろう。

 でも、こっちの世界の蜂は針が大きくて丈夫だ。

 あれで何度も刺された方がダメージがデカい。


 王蜂に限らず、こっちの世界の蜂は、一匹一匹が大きくて丈夫にできていている。

 その代わりなのか、群れの個体数は前世の蜂よりも大分少ない。


 日中は、ほとんどの蜂が蜜の採取に出かけている。

 新しく巣を作っている時でも無ければ、あまり巣を増設しないようだ。

 王蜂クラスになると、人間ではとても踏み込めないような危険な地域まで出かけているらしい。

 その間、巣にはわずかな蜂しか残らない。


 人間がそのわずかな蜂を襲って、蜂蜜を強奪する事も出来なくはないが、共生関係を崩してしまう。

 戻ってきた蜂に逆襲される事を考えると、全く割に合わない。


 中庭が使えない不自由さよりも、毎日確実に蜂蜜が手に入って、王城の防衛力が強化されている共生関係のメリットが大きい。


 今日はこれから、蜂蜜をもらうとの事で、見学。 


「担当者は基本的に替えません。

 新人を入れる場合や、代行で誰かを入れる場合は、一人ずつにしています。

 その場合も、いつもの担当が蜂の前にわざと連れて行くんですよ」


「私達が個々の蜜蜂を認識できないのに対して、蜂達は私達を個別認識しているようなのです」


 人間が蜂蜜をもらう時、前世では、水や煙を使って蜂を大人しくさせてからだったが、こちらでは蜜蜂が賢いので、いつもの時間にいつもの人間がいつも通りの手順で、という風にしておけば、襲われる事も無い。

 引き出し状の巣箱を取り出し、蜂が加工した巣の部分を壊さない様、蜂蜜を掬い取って別の容器に移す。そして引き出し巣箱を戻す。

 これらの作業を、明らかに監視している風の働き蜂がいる。

 

 ……蜂、賢過ぎでは?

 

「巣に近付きすぎなければ襲われる事もないっスけど、姫様は、出来れば女王蜂に覚えてもらった方が良いっス」


 蜂蜜をもらう作業が終了したところでそんな事を言い出し、素早く私を、蜂の巣の近くに置き去るセルゲイ。


「大きな声は出しちゃダメっス」


 あああああ!怖い!怖い!

 頭の大きさだけでも今の私よりもデカい蜂の巣の傍に捨てていかれた!


 口に手をあて、必死に悲鳴を押し殺すが、どうすんだコレ。


 巣の反対側に必死ににじり寄ろうとするが、ヒッ、後ろからスゴイ羽音が!

 振り返ると働き蜂のさらに倍くらいありそうなさらにデカい蜂が!


 器用な飛行技術で、頭部を私に近付け、覗き込むようにしてくる女王蜂。

 眼前に迫る巨大な複眼、そして昆虫独特の口。

 泣き叫んだり、漏らさなかった私を、誰か褒めてほしい。



 ……結果から言うと、無事でした。


「女王蜂にも覚えてもらったんで、一安心っスね」

 

 直系王族は、魔力量と属性で予想がつくので、王蜂に襲われる事は基本的に無いとの事。

 ただ、女王蜂に直接覚えてもらわないと、城主つまり国王になるには問題があるらしい。

 ……じゃあ、私は別に無理に覚えてもらわなくても良かったんじゃね?


「ローヤルゼリーも召し上がれたようで、ようございました」


 酸っぱくて美味しくなかったし。 

 どうやってもらったかは、もう思い出したくない。




読んで下さってありがとうございます。


ローヤルゼリーは女王蜂からもらうものでは無いですが、

そんなに詳しく書くこともないかなと思って省略しています。

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