第四十一話「気がついたら異世界に漂流してた」
「こ、ここはどこだ……?」
俺とユイは何故か全く知らない森の中にいた。
第十層のボスを倒し、転移ゲートを利用して地上に戻ろうとしたら、ここに飛ばされたのだ。
「何なんでしょうね、ここ? 少なくともロス周辺じゃなさそうですが……」
ユイもそう首を傾げていた。
「ともかく情報が少ない。エレナとアリエスもどこに居るか分からないし、少し歩き回ってみるしかないよな」
そして俺たちはさっそくその森の中を探索し始めた。
鬱蒼としていて、日の光もあまり届いてきていない。
地面は苔むしているし、木の根も地面から出てきていて、駆けると転けてしまいそうだ。
十数分ほど歩いていると、何やら戦っている音が聞こえてきた。
ということはまだダンジョン内なのだろうか?
俺たちは戦っている人たちから情報を得るべくそちらに駆けていってみると――。
魔物――ジャイアントオーク一匹と数人の探索者らしき人たちが戦っていた。
ジャイアントオークは確かCランクの魔物だったはず。
ということはここはまだダンジョンの浅瀬のほうなのだろうか?
探索者たち――といったが、それは女性二人のパーティーだった。
二人は必死の表情をしているが、かなり手こずっているっぽいな。
「――――・・――――・・・・!」
「・・・・――・・――――!」
何やら掛け声を出し合っているが、何言ってるか分からん。
全く聞いたことない言語だけど、どこかの民族か……?
「何を言っているか分かりませんね」
ユイも同じ事を思ったのかそう言った。
俺はそれに頷きながら言う。
「俺にもさっぱりだな。でも助けが必要そうだが……」
「そうですね。結構押されていますね」
やっぱりそうだよな。
探索者たちは魔物たちに押されているっぽいので、俺は助太刀すべく聞いてみた。
「君たち、助けが必要か!?」
「――・・・――――ッ!」
うん、やっぱり何を言っているか分からん。
だけどどうやら余裕なさそうだし、俺は適当に頷くと魔法を使った。
――竜魔法『竜の息吹』
竜の頭が俺の頭上に現れると、魔力を溜め始める。
しかし全力を出しすぎると彼女たちを巻き込みかねないので俺はほどほどで発射した。
ズガガガと木々を焼き払いながらジャイアントオークを一瞬で蒸発させた。
その様子を見ていたその探索者たちは目を見開きこちらを見てきた。
「・・・――――・・・――――!」
このままじゃあコミュニケーションがとれないな……。
ユイも首を傾げるばかりで、全く聞き取れていなさそうだ。
しかしユイはふと思いついたのか、こう言った。
「レンさん、『異世界言語習得』を取ってみませんか?」
「え? でもあれって異世界アベルでしか使えないスキルなんじゃ……?」
そう言いながら確かにここが異世界である可能性もあるかもしれないと思ってきた。
その探索者たちが身に纏っている鎧や武器は中世的なもので、現代的な要素がない。
「……仕方がない、一か八かで使ってみるか」
そして俺はスキルポイントを使って『異世界言語習得』を取ってみた。
すると――。
「貴方たちは何者なの……? いきなりドラゴンの頭が現れたような気がするけど」
おおっ! 言葉が分かるようになったぞ!
ってことは、やっぱりここは異世界ということになる。
……マジかよ。
気がついたら異世界に飛ばされていたということか。
「ええと、あれは魔法だよ。竜魔法ってヤツだ」
こちらの言葉が通じるか分からなかったが、とりあえず尋ねてきていた少女に言ってみた。
その少女は赤髪をポニーテールに纏め、白いスラリとした鎧を纏っている。
俺が言うと彼女はため息をついて言葉を零した。
「はあ……やっぱりそうなのね。ねえ、ルイン。竜魔法って知ってる?」
その少女はもう一人の少女にそう尋ねた。
もう一人の少女――三角帽子を被りローブを身に纏ったルインと呼ばれた少女は、首を縦に振って答える。
「知ってる。……けど、伝承でしか聞いたことがない」
「そうよね。おとぎ話くらいでしか私も聞いたことがなかったわ」
伝承? おとぎ話?
ってことはやっぱりここは異世界なんだろうな。
……どうしてこうなった。
ユイもどうやらパーティーを組んでいるおかげか、異世界の言葉が分かるようになったらしい。
俺の耳元で囁くように言ってきた。
「どうやら異世界に来てしまったみたいですね……」
「……そうだな。どうやったら地球に帰れるのだろうか?」
そう囁き合っていると、探索者――ではないのかもしれない少女たちが聞いてきた。
「貴方たちが何者か……は聞かないでおくけど、こんなところで何をしていたの? ここは《魔の森》と呼ばれる僻地だし、《暗黒迷宮》の近くよ。普通は来るものじゃないわ」
どうやら《暗黒迷宮》というのは地球と共通であるらしい。
しかしどう答えるか――。
彼女の問いにしばらく悩むが、結局いい案が出てこず俺は素直に答えた。
「ああ、気がついたらここに居たんだ。何でここにいるのかも分からん」
「なるほど……そういうことなのね。じゃあ貴方たちは《探し人》ってことね」
「探し人?」
俺がそう首を傾げると、それについてその少女は説明してくれるのだった。




